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建築という枠組み

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友達に誘われて、「3331 Arts Chiyoda」という
学校を改装したギャラリーに講演を聞きに行ってきました。

京都精華大学の卒業制作展示の一環で行われる連続講演、
「デザイン教育の現場から」の初日に行われたもの。
テーマは「建築という枠組み」、
講師は同大学で教鞭をふるう二人の建築家、永山祐子氏+片木孝治氏。


永山祐子さんは今をときめく新進気鋭の若手建築家、
一方、片木孝治さんは建築設計の次のステップとして、
農山村地域をアートで活性化するプロジェクトをメインに活動されています。
これも一種の「都市計画」なのだろうか。


建築と社会。
今、まさに僕が必死に考えている方向性につながるタイムリーな講演会。
でも、「若手」を簡単に信用せず、ソフト優先指向を嫌う自分の性格では、
たぶん一人で行くことは決してなかっただろう。


誘ってくれた友達に感謝。


建築、その変遷【S.ギーディオン】

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夏休みの間に借りてた本、なんとか返却期限ぎりぎりで読み終えることができました。


最後の一冊はS.ギーディオンの「建築、その変遷」。
建築史家、ギーディオンの遺著で、日本語版は1978年出版。
すでにAmazonでは新書では買えなくなってます。

実はギーディオンの本、その主著「空間、時間、建築」に一度チャレンジして挫折。
今回も450ページにわたる分厚さで、読み切れるかどうか心配だったのだけど、
意外にも建築関係の本にしてはめずらしく読みやすく、
通勤の電車の中ですらすらと読み進めることができました。
...内容をちゃんと理解しているかどうかは疑問だけど。


そのタイトルの通り、建築の歴史を淡々と語ったものかと思いきや、
最初にギリシャを少し語った後、古代ローマの建築について延々と語る。
そして中世をすっ飛ばし、ルネサンス、バロックをかすめて一気に現代へ。
ル・コルビジェを語って終わる。

ぶっちゃけ変遷、というより古代ローマ建築と現代建築の「関係」を語ったもの、
と言った方が正確かもしれない。


かつての古代ローマ時代。
そこには現代にも勝るとも劣らない高度な文明が栄えていた。
建築も然り。

それが古代ローマの滅亡と共に文明は原始的なものに戻り、
以降再びその高度文明の域に戻るまでおよそ1800年もの時を要した。


しかしその悠久的な時の流れこそ、
本来の人間的スケールでの進化だと、僕には思えるのだが。


東京の未来を考える2010

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藤本壮介展に行ってきました。
....一週間前に。


石上純也同様、独特の雰囲気がある。

たぶんは彼らはこれからの建築を担う、新世代の筆頭格なのだろう。

...それは分かる。


しかし彼らの作品や、彼らの展示の仕方は落ち着きがない。

落ち着きのない建築に魅力はあるだろうか。


彼らを批判したいのではない。

たぶん、かつての偉大な建築家たちも若くして頭角を現した頃は、
こんな感じだったのかもしれない。


建築の評価には時間がかかる。
そのスケールが故に。

それが正しい評価のされ方なのだ。


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過去にミースに関する本を2冊読みました。


  ・評伝ミース・ファン・デル・ローエ
  ・ミース・ファン・デル・ローエ 真理を求めて


再びミースについて考える、という意味で本書は最適かな、と思って読んだのですが。

いまだに1つもミース建築を実際に訪れたことがないからか、
...さっぱり分からない。

ニューヨークに旅行したとき、シーグラムビルを見逃したことが返す返すも悔やまれる。


それにしても。

"Less is More"をテーマに極限までムダを削ぎ落としたシンプルな立方体の空間に、
どうして周囲はこうも複雑な解釈をしようとするのか、不思議でならないのだけど、
ある意味そういう状況が本当の意味での"Less is More"なのかな。

写真を見るだけでもその美しさは半端ではない。
実物を見たときの感動はいかばかりか。
(...あるいはグラフィックの魔術で、実際はそれほどでもないかもしれないけど)


しかし彼の模倣品である20世紀都市はなんと醜いことか。

そして思うのである。


  「立方体は人間にとって最適な空間を与える本質的なフレームではない」


ミースだからこそ、立方体の空間を美の極みへ高められたのだ、と。


住宅見学会

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大学の先生が設計した住宅の見学会に行ってきました。


...実は新築住宅を見学するのは2軒目。

最初の1軒目をすぐにレビューしなかったのは思うところがありまして。

まだ住人も住んでなく、家具など余分な成分が一切ないまっさらな状態。
建築そのものを直接的に体験できるまたとない機会...

...のはずなのですが。


いまだにリアリティが湧かない。

たぶん自分の中の建築の感覚がまだまだ、ってことなんだろうな。

負ける建築【隈研吾】

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隈研吾氏の「負ける建築」を"やっと"読んだ。


まだ建築に興味を持つ前の頃から、
安藤忠雄と隈研吾の名前は知っていた。
それほどこの二人の建築家の名前は社会の中でブランド化していた。

しかし今の自分は「ブランド」に対しては懐疑的。
この本の存在はけっこう前から知ってたけれど、なかなか手を出さずにいた。
「負ける建築」というネガティブなタイトルも好きになれなかった。


前回の個人美術館の課題で等々力の村井正誠紀念美術館を見学して、
隈氏の建築に触れる機会を得た。
そしてその空間の素晴らしさに魅了された。

そして現在乃木坂のギャラリー「間」で開催されている隈氏の個展
「有機的」を意識した氏の建築にさらに惹かれていった。
氏の建築思想をもっと知りたいと思った。


タイトルからエゴ丸出しの主観的な本かな、と思ったら、
全くの逆で、主観を殺し、あくまで客観的な語り口調。
自分の建築作品についてはほとんど語られていない。
その客観性が逆に自分の言説が絶対正義だという傲慢に写らなくもない。

そして建築家特有の文章の難解さ。
東大院卒のインテリだけに知性溢れる文章なんだけど、
決して読者には優しくない。
そしてこの本はすべての建築を志す者に夢を与える本ではない。
建築の現実の厳しさを説き、それでも君は建築を志すか?と読者に問う。
まさに子供を谷底に蹴落とす獅子のようなスタンス。


この本には賛同できる点が多い反面、疑問に思う点も多々。

いずれにせよ、この本は多くのことを考えさせられる。
その意味においてこの本は間違いなく良書といえる。

建築を志す人にぜひとも読んでもらいたい。
そして読んでどう思うか。
その声を聞いてみたい。


構造デザイン講義【内藤廣】

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内藤廣さんが東京大学で3年間行った構造デザインの講義をまとめた一冊。

構造デザインの入門書のバイブルと言っても過言でないくらい秀逸。
工学系の建築科、土木科の学生に向けての講義なので、
美大学生には多少分かりにくいところもなきにしもあらずですが、
少なくともこれまで読んだ構造デザインの本の中では一番分かりやすく、
構造デザインの意義、使命などを明確に伝えてくれるものだった。

マリオ・サルバドリの「建築構造のはなし」もすごく良いのですが、
現在活躍中の建築家による生の声は同じ時間軸であるだけに分かりやすい。


いわゆるアカデミズムによる知識のための知識ではなく、
建築家自身の経験による「生きた知識」なので、より説得力がある。
講義ではあえて「・・・という感じ」という主観的な表現を使い、
その後に「あなたにとってはどういう感じなの?」と学生に考えさせる。
デザインにとって必要なのは知識を詰め込むことではなく、
自ら「考える」ことによって感性を磨いていくことなのだ。


デザインこそは、土木であろうと建築であろうと、また他の工学分野にしても、すべてのエンジニアが持つべき能力だ。デザインマインドなくして社会は語れない。工学が社会と向き合うこと止めない限り、エンジニアにとって、デザインは必須の教養であり、必要不可欠の武器なのだと思う。デザインこそは、技術の周辺にあるのではなく、コアにあるべきものだと考えている。講義にはそういう信念を持って臨んだ。だから「構造デザイン」なのだ。若者達の頭のどこかにこのことを植えつけておけば、いずれそれは彼らが実社会の中で各々のやり方で活かしてくれるはずだ。そういうことを勝手に想像しながら講義をした。


本を読むだけでも、構造デザインの価値をこれだけ感じるのだから、
実際の講義はさらに有意義なものだったと思います。

受けてみたかったなあ...


FLUX STRUCTURE【佐々木睦朗】

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この本もなんとか夏休み終了前に読み終えました~

構造の大家、佐々木睦朗氏の著書。

お名前は前からちょくちょく耳にしていたのですが、
今回はじめて著書を読みました。

建築家独特の文章の難しさ、というよりは科学者、理論家独特の文章の難しさ。
それでもまあ建築家の文章よりはすっきりしてて比較的読みやすかったかな。

八王子での「構造力学」の先生が佐々木氏の下で仕事をしていたこともあって、
その仕事、作品についてもいくつか予備知識はありました。

せんだいメディアテーク金沢21世紀美術館、フィレンツェ新駅など。


建築と都市―デザインおぼえがき【丹下健三】

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夏休みも終わりぎりぎり。

丹下氏の「建築と都市」をやっと読み終えました。


人間と建築」と対になる本で、
「人間と建築」がヒューマン・スケールで建築を語るものだとすれば、
「建築と都市」はスーパー・ヒューマン・スケール、もしくは
マス・ヒューマン・スケールで建築を語るもの。

原初の頃においては歩幅が行動範囲の規範となっていたものが、
電気エネルギーをコントロールする術を覚えたことで
人間は数関数的にその行動限界を拡大した。

遠くへ移動する術は覚えたけれど、
原初以来の生活感覚はなかなかすぐには対応できない。
スーパー・ヒューマン・スケールでの適正な感覚の欠如が
現在の都市の問題となっている...


拙い読解力で分析すると、
丹下氏が指摘する都市問題の原因とはこのようなものではないかと。


そして「東京1960」からおよそ50年。

増える一方の凶悪犯罪、心を病む人たち、失われる自然。


...都市ってたいして進化していない気がするのは僕だけだろうか。


建築の詩人、カルロ・スカルパ

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自分が今、建築的に一番興味がある国はスペイン。

ガウディトロハキャンデラ、...そしてカラトラバ

スペインには魅力的な建築家が多い。


しかし。

ブルネレスキ、ネルヴィ、ピアノ、...そしてスカルパ。

イタリアもなかなか。


今回はスカルパに注目。
最近知ったばかりでまだ彼の建築をよく知らないけど。

今回はキャンデラの作品集も手がけた齋藤裕氏によるTOTO出版の作品集と、
a+uの1985年10月臨時増刊号として刊行された作品集の2冊を借りた。


「建築の詩人」とはどういうことなのだろう...


人間と建築―デザインおぼえがき【丹下健三】

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この本は丹下氏が1950年代から60年代にかけてメディアに発表してきた内容を
整理し直してまとめたものです。

整理し直したとはいえ、バラバラに散らばっている言葉を集めて本にした、
という形式上全体としてはやはりまとまりがなく、散文的になっています。

さらに288ページにわたる本文中にほとんど図解はなく、
巻末に白黒写真が14枚掲載されているのみ。

そして「建築家が書く文章は難解である」という傾向に従って
けして優しくはない文章。


読むのはやっぱり大変だったけど、
それでもなお文中の所々、断片的に本質が潜んでいる。

初版1970年。
本書執筆の時点ではまだ代々木体育館や東京カテドラルのような
有機的な建築は紹介されておらず、
まだ氏の建築の最終段階には到っていないようです。

しかし40年の月日が流れてなお、
色褪せることがない建築の本質には到達していた。
そしてその後形として結実した。


本質は時間を超えて存在し続ける。
言葉だけでなく、形でもそういう本質を自分も残していきたいと切に願う。


エドゥアルド・トロハの構造デザイン

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キャンデラに続いて現代建築構造の源流を探求します。

この構造家の本は大学の先生に教えてもらいました。

エドゥアルド・トロハ。
1899年、キャンデラと同じくマドリード生まれ。
世代的にはキャンデラの一回りほど先輩にあたります。

父親と3人の兄たちは優れた数学者やエンジニアで、
そんな環境下でごく自然に兄たちと同じエンジニアの道を進む。
スペイン国内で順調に成功していきます。
途中スペイン内戦が勃発しますが、体制的にはフランコ側にいたため、
その後も順調にスペイン国内で成功していきます。

キャンデラがスペイン内戦で反体制側にいたため、
メキシコに亡命せざるを得なかったのとは対称的です。

コンクリート技術を追求する自らの研究所、トロハ研究所を設立し、
その後その活動は国際的に世界をまたにかけたものになり、
IASS(国際シェル構造学会)というシェル構造の世界的な研究機関を設立し、
自らその初代会長に就任する。

社会的な地位という点ではキャンデラよりはずっと成功しているのかもしれない。
実際その実績は素晴らしく、彼の残した功績は偉大だ。
スペイン内戦時にはフランコ側にいたとはいえ、優れた人格者でもあったのだと思う。
本書の巻末にトロハ研究所の所員たちに向けた遺言書が紹介されているのですが、
そこにはトロハの所員に対する愛であふれていた。


しかし日本では、トロハよりはキャンデラのほうが有名な気がします。
Wikipedia日本語版にはキャンデラの項目はあるけれど、トロハはない。
ネットで検索してもキャンデラの作品のほうが多く引っかかることからも
どうやらこの傾向は日本だけじゃないみたいです。

それは単なるスター性の問題だろうか。
単なる時代背景による技術の差なのだろうか。


技術に固執するか。
それとも感性に固執するか。

...僕はキャンデラとトロハ、両方とも好きです。


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八王子の「構造力学2」の小西先生から紹介された本。

archiforum(アーキフォーラム)という1997年から大阪で1年ごとに
開催されている講演会シリーズの2006-2007年の講演記録で、
現在最前線で活躍する若手構造家8人と4人の建築家が
自身の活動実績を紹介しながら技術や建築に対する思いを語ったもの。

小西先生自身、この講演者の中の一人です。
授業でも紹介された石上純也氏と組んで作った薄いテーブル、
薄い構造体の「FK house」、RCとコンテナで作られた倉庫、
木造なのに内部に11mの大開口のある「BEAM」、
1階と2階で平面が45度ねじれている「TWIST」などが
紹介されていて、復習するには良い感じでまとめられています。

とは言っても、たぶんすでに建築の仕事に携わっている人を対象にしているのか、
構造を勉強しはじめた学生にはいささか難しい内容で、
現状では小西先生以外の部分は半分程度しか理解できなかった気がします。
小西先生の授業で全部解説してくれないかな...


それでも現在最前線で活躍する先輩たちの熱き想いは伝わってきた気がする。
12人12様の建築の面白さ、構造の面白さに刺激を受けた。

恋する建築【中村拓志】

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コルビュジエといい、ライトといい、カーンといい、
はたまたコールハースやセシル・バルモンドといい、
どうして建築家が書く本ってあんなにわけが分からないんだろ...

と、愚痴をこぼしてたら同級生が紹介してくれた本。


中村拓志(ひろし)という新進気鋭の若手建築家が書いた本。
隈研吾事務所出身なんですね。


もちろん僕はこのときまで中村拓志氏を知りませんでした。


informal【セシル・バルモンド】

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セシル・バルモンドの名著。

400ページにわたる分厚い本で字も小さいのですが、
オールカラーでスケッチや写真が多く、
意外にあっという間に読み終えました。

しかし内容はさっぱり理解できない。
なんかべつの次元の話を聞いているみたいで。

それでも彼の言葉は僕を惹きつける。
構造の魅力が、構造の秘密がそこにはある気がした。


「私の家」白書【清家清】

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去年1年間、八王子キャンパスで構造デザインの授業を受けました。
そのときの先生が清家清さんの教え子で、
授業で氏の作品を紹介されたのが氏を知るきっかけとなりました。

そのときは彼の建築についてはあまりピンと来なかったのですが、
同級生がこの本を別の先生から薦められた、
というのを聞いて僕も読んでみることにしました。


戦後の荒廃した日本。
否応なしにアメリカ文化が日本に押し寄せ、古き良き日本が失われてゆく。
そんな中、西洋の合理主義を取り入れつつ、
かつての日本文化を取り戻そうとした建築家。


それが清家清という建築家だった。


建築をめざして【ル・コルビュジエ】

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20世紀の建築家の三大巨匠の一人、ル・コルビュジエの名著。


...しかし僕にとってはコルビュジエの文章は難解なこと、この上ない。
モデュロール」「輝く都市」を読む限りは。
彼の描く絵と同じくらい不可解に感じます。

一方で彼のいわんとすることもなんとなく分かる気もする。
建築を考えていく上で大切なもの、必要不可欠な要素を与えてくれる気もする。

それは彼が実際に建てる建築が、
言葉以上に語りかけてくるからではないでしょうか。


錯乱のニューヨーク」でコルビュジエが出てきて、
コルビュジエについて再考してみたいと思い、
代表作でありながら未読だった本書を読みました。


コルビュジエ、ミース、ライト。
この3人が巨匠たらんとするところは、
建築の機能を飛躍的に拡大すると同時に、
建築に偉大な哲学を取り入れたことではないでしょうか。


錯乱のニューヨーク【レム・コールハース】

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ル・コルビュジエの著書群に匹敵するほどの建築家の必読書らしい...
...ということで読みました。

しかしル・コルビジェの本と同じく、いやそれ以上に読みにくかった...
ハリウッドでのシナリオライター、という前歴から
もうちょっとドラマチックなものかと思ったのですが、
頭の中はすでに建築家モードだったようです。

この本は1978年、まだコールハースが建築家としては
まだ著名な作品もなく、無名の頃に出版されたのですが、
出版から2年後の1980年には売り切れたとか。
その後本業の建築に専念するということから1994年までの14年間
絶版が続いた後、ようやく再版となったとか。


摩天楼犇めく世界に冠たる大都市、ニューヨーク。
世界広し、といえどもここまで見事な摩天楼が密集する街はそうない。
それはただ強度ある岩盤地盤に恵まれたから、だけなのだろうか。
あるいはニューヨーク独自の様式がそこにはあったのか。


「マンハッタニズム」


コールハースがそう呼ぶニューヨークの独自様式とは、
はたしてどんなものだったのか。

その様式を理解することでこれからの建築の未来が見えてくるのだろうか。


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(出典:Wikipedia)


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磯崎新の建築談議シリーズ。
今回は最終巻、第12巻のクライスラー・ビル。
20世紀を代表する建物としてこのビルを取り上げてます。

20世紀といえば3巨匠(ライト、ミース、コルビュジエ)をはじめとして、
アアルト、ニーマイヤー、丹下健三、安藤忠雄など
モダニズムやポストモダンの巨匠などが候補として考えられると思うのですが、
建物がNYを象徴するものとはいえ、なぜウィリアム・ヴァン・アレンという
クライスラー・ビル以外これといった作品のない建築家の作品が
ピックアップされたのか?

しかも様式はモダニズムでもポストモダンでもなく、アール・デコ。

まあ磯崎氏独特のアイロニーも込められているのでしょうが、
20世紀の建築の1つの転換点としてピックアップし、
20世紀の建築全体の方向性を俯瞰しようとするものでもあるみたいです。


建築の持つ機能とは、含有する内部空間においてのみ存在するのか?
あるいは他に機能が存在するとすれば、
それらの機能よりも内部空間の機能が最優先されるべき機能なのか?


20世紀の建築は外部と内部のせめぎ合い。
...そんなところでしょうか。


磯崎新の建築談義 #10【ショーの製塩工場[18世紀]】

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磯崎新の建築談議。
今回は第10巻のショーの製塩工場。
別称として「アルケ・スナン」とも呼ばれますが、
これはかつてのアルクとスナン、2つの村の名前を繋いだもの。
「ショー」とはこの製塩工場のそばにある「ショーの森」からきています。
世界遺産にも登録されています。

設計者はクロード=ニコラ・ルドゥー。
様式としては新古典主義ですが、新古典主義を代表する建築家、というよりは
エチエンヌ=ルイ・ブレー、ジャン=ジャック・ルクーらと共に、
「ヴィジョナリー・アーキテクト(Visionary Architect)」もしくは「ビジオネール」、
つまり実現しなかった建築(ドローイングや設計図)で有名な人たち、
としてのほうが馴染みが深いと思います。
この3人はエミール・カウフマンの『三人の革命的建築家 ブレ、ルドゥー、ルクー』
によって近代建築の先駆的な存在として評価されるようになったとか。


建築の機能というものは、実際に建てなければ実現できないもの。
しかし建築の哲学というものは実際に建てること以外にも術はある。
ルドゥーは、ビジョナリー・アーキテクトはそれを教えてくれる。