課題で個人美術館を設計する、ということで。
いろいろ個人美術館をリサーチしているわけですが。
等々力駅から徒歩2分。
自宅から歩いて15分。
...こんな近くにこんな素敵な美術館があったなんて。
等々力は村井正誠記念美術館に行ってきました。
設計は隈研吾氏。
毎週金曜日と日曜日だけ開館し、
さらにはじめての観覧の際は2週間前までに往復はがきで、
観覧申し込みをしておく必要があります。
2回目以降は電話連絡でOK。
開館時間は11:00-13:00か、14:00-16:00の2時間単位。
美術館利用方法の詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
村井氏の作品だけでなく、愛用品や宝物なども展示されていて、
作品を展示する美術館、というよりは
村井正誠そのものを展示する美術館、といったところでしょうか。
展示だけでなく、氏の生前の絵画指導法を体験するワークショップなども
開催されているそうです。
規模からして2時間も居るかな、と思ったのですが、
この時間帯に僕たち以外の観覧者がいないこともあって、
館長さん自らが懇切丁寧に案内、解説をしてくれて、
あっという間に2時間が過ぎてしまいました。
隈研吾ってやっぱ凄いんだね。
とても気持ちのいい空間でした。
写真撮影OKなのもウレシイ。
ファサード。
格子状のファサードは隈さんの作風なんですかね。
一見モダンに見えますが、格子に木材を使っているので、
柔らかくて暖かい感じも与えます。
ファサード前はちょっとした庭園になっていて、これまたステキ。
中央通路を挟んで両側が浅い人工池が配されていて、
水面に建物が映る様もまたイイ。
格子状のファサードよりもさらに一際目を惹くのが水上に置かれた古いクラウン。
これも隈さんのアイデアなのだそうです。
エントランスドアの薄い庇。
...美しい。
中に入って...
ファサード上部の格子状に対し、下部は広いガラス壁面になっていて、
程良く自然光が中に入ってきます。
レストエリア。
...お守り?
1階は吹き抜けになっています。
奥側の天井からトップライトが入ってくるようになっていて、
これがまた白の壁面を映えさせる。
この美術館は村井氏がアトリエとして使っていた旧居を取り囲むようにして、
建てられているのだとか。
そのアトリエの入口。
アトリエの中は、ギャラリーというより村井氏の宝物置き場、といった感じ。
所狭しと氏が集めてきた宝物が置かれていました。
真ん中の黒い人形はダリ作だそうです。
左側には今は懐かしいダイヤル式のCRTテレビ、
ソニーの年代物のハンディTVが。
右側にある木彫りの仏は円空仏?
階段状の引き出し箪笥の上の双子(?)の犬の置物。
骨董品もすごい数。
ロフト形式の2階。
村井氏の奥方の小川孝子さんの作品が展示してあります。
良いアイデアが出てきそうなデスク。
大工さんの手作りなのだとか。
天上のスポットライト。
日本ではあまり見ない規格外品みたいです。
階段もこれまた美しいんだな。
再び外に出て...
サイドビュー。
実はこのサイドが道路に面していて、ファサードは外からは見えないようになってます。
建物の裏側も気さくに見させてくれました。
さすがに建物裏側には格子はありませんでした。
ファサード裏側。
面白い形のつくばい。
サイドビューの裏側。
ちょっとした竹林があって、筍もとれるのだとか。
旧居の瓦をコンクリで固めた塀。
これまたイイ味出てますよね...
外の庭園は事細かに手入れをするのではなく、
ある程度自然のなすがままにまかせているのだとか。
鳥が新しいタネを運んでくるのか、
時折予想外の植物が庭に生えてくることもあるそうです。
歳月の経過と共に良い味が出て来る。
毎年新しい発見を自然がもたらしてくれる。
これが本来の建築と自然の正しい関係ではないだろうか。
自然を排除して建築だけを緻密に管理するやり方では、
新しいうちはキレイだけど、時の経過と共にその美しさは色褪せてくる。
この美術館はそれを教えてくれる。
池の水も正直そんなにキレイじゃないけれど、
池の中のクラウンも朽ちてゆくがままに放置されているけれど、
どこか気持ちのいい空気が流れている。
...多少虫が多いのが難点だけど、それもまあ本来は自然な姿なのだろう。
親切な館長さんに加えて、大学の先生も同行してくれたので、
とても良い勉強になりました。
これで良いインスピレーションが生まれ...ればいいんだけどね。
住宅は完成してしまうと部外者は中は入れないし、
公共建築は中に入ることはできても、
関係者に話を聞くことはやはり難しい。
その意味では、この美術館はクライアント本人から隈氏の建築について
話を聞くことのできる貴重な建築といえます。
建築関係者も、そうでない人も、ぜひぜひオススメしたい美術館です。
等々力にお寄りの際は気軽に...というわけにもいきませんが、
ぜひとも一度訪れてみてください!
【information】オフィシャルサイト
※2016年は作品整理のため休館、だそうです。...残念。