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2008年11月10日

磯崎新の建築談義 #10【ショーの製塩工場[18世紀]】

建築デザイン/ 読書


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磯崎新の建築談議。
今回は第10巻のショーの製塩工場。
別称として「アルケ・スナン」とも呼ばれますが、
これはかつてのアルクとスナン、2つの村の名前を繋いだもの。
「ショー」とはこの製塩工場のそばにある「ショーの森」からきています。
世界遺産にも登録されています。

設計者はクロード=ニコラ・ルドゥー。
様式としては新古典主義ですが、新古典主義を代表する建築家、というよりは
エチエンヌ=ルイ・ブレー、ジャン=ジャック・ルクーらと共に、
「ヴィジョナリー・アーキテクト(Visionary Architect)」もしくは「ビジオネール」、
つまり実現しなかった建築(ドローイングや設計図)で有名な人たち、
としてのほうが馴染みが深いと思います。
この3人はエミール・カウフマンの『三人の革命的建築家 ブレ、ルドゥー、ルクー』
によって近代建築の先駆的な存在として評価されるようになったとか。


建築の機能というものは、実際に建てなければ実現できないもの。
しかし建築の哲学というものは実際に建てること以外にも術はある。
ルドゥーは、ビジョナリー・アーキテクトはそれを教えてくれる。



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ルドゥーは著作『芸術・習俗・法制との関係から考察された建築』にて
理想都市とその中の建築物を紹介しています。


[ルー河監督官の館]

実際の建物にはこの絵のモチーフの装飾が取り付けられています。

しかしなぜか当の監督官の館にはないそうです...


[モーペルチュイの畑番の家]



[桶職人の工房]

これはどうやら実際に建ってるみたいですね。


[桶職人の工房の実現作品?]


ちなみにブレーはニュートン記念堂、王立図書館再建案が有名です。

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[ニュートン記念堂](出典:Wikipedia)


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[王立図書館再建案](出典:Wikipedia)


磯崎氏はこのヴィジョナリー・アーキテクトを独自に「革命様式」と呼んでいます。
革命時期に現れる様式だから。

ルドゥーはフランス革命前まではルイ15世の愛妾、デュ・バリュー夫人の庇護により
王室お抱えの建築家として実際の建築を作っていました。
アルケ・スナンもその仕事の一環でもあります。

しかしフランス革命後は王政関係者だったため、
実際の建築を作る機会を失うどころか、
ギロチンで首をはねられる寸前にまでなる。
すんでの所でその危機を脱し、
以後はドローイングやテキストでしか建築を語れない余生を過ごす。

ルドゥー自身にしてみれば、後悔の残る人生だったかもしれない。
でも後世に生きる僕の目からすれば、この晩年のドローイングやテキストが
あるからこそ、ルドゥーを偉大たらしめているのだと思うのです。

確かに実際に建てられたショーの製塩工場は
今見てもその存在感が失われないほど強いものではあるけれど、
晩年のドローイングがあることでよりルドゥーという人物像が際立つ気がする。

大切なのは実際に建つかどうか、ということではないんですね。
いや、大切なんだけど実際に建てることだけが大切なのではない。
住みやすさとか、耐久性だとか、そういう建築の機能はもちろん大切だ。
しかしその建築はなぜあるのか、その建築でなにを表現しようとしてるのか、
そういった建築の哲学とでいうべきものも機能性と同じくらい大切なのではないか?
...ルドゥーを見てるとそんな気がします。
明快な哲学が人々を魅了する。

哲学を無視したり、軽視したりされた建物はたとえ実際に建っても、
どんなに豪勢な外観や空間を持っていたとしても、
優れた建築にはなり得ないのだろう。

本当に大切なものはやはり「見えないところ」に現れるものなんですね。


しかしショーの製塩工場はどうしてこうも存在感を感じるのだろう。
ゴシックやバロックのように絢爛な装飾はほとんど見られない。
あるのは幾何学図形。

装飾よりも幾何学図形のほうが存在としての力があるということなのか?

秩序なく構成されているように見える我々人間も
分子レベルで突き詰めればそこは幾何学で構成される世界。
その元初への回帰志向が人間にはあるのだろうか。
だから人間は幾何学に反応するのだろうか。


さて、次はクライスラービルだ。


【Information】公式サイト



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