「神秘主義」と一致するもの

クリムト&シーレ 〜世紀末ウィーン〜

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[グスタフ・クリムト「接吻」1907-1908年](画像は大塚国際美術館の陶板画)

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[エゴン・シーレ「死と乙女」1915年](画像は大塚国際美術館の陶板画)


「文学と美術」の授業。

中村先生お得意の神秘主義、宿命の女(ファム・ファタル)、アンドロギュヌス
などのシリーズが終わり、その次のテーマが19世紀末のウィーン。


多民族国家によるオーストリア=ハンガリー二重帝国が成立するも、
初代皇帝フランツ=ヨーゼフⅠ世一代の短命政権に終わり、
皇太子の心中、皇帝の甥の暗殺による第一次世界大戦勃発...
と不安定な世情を反映して「死」「エロス」といったテーマが
世紀末ウィーンの芸術を支配する。


その代表格がウィーン分離派(ゼツェッション)を起こしたグスタフ・クリムト。
そしてクリムトに見出されたエゴン・シーレ。


エロスにおける芸術と娯楽の境界はどこにあるのだろう。


アントニオ・ガウディ【鳥居徳敏】

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最もお気に入りの建築家のSD選書をまだ読んでなかった。
卒業制作のラストスパート前に読む本として、
これほどふさわしい本もない。


アントニオ・ガウディ。

最も独創的でありながら、最も多くの人に受け入れられている建築家。
好き嫌いはあるだろうけど、
建築に詳しくない人でも彼の名前を知らない人間はいないだろう。

逆に現代建築の普及に最も貢献したと言われる20世紀の三大建築家、
コルビュジエ、ライト、ミースの名前は、
建築にそれほど興味がない人にはなじみがないかもしれない。
この差は一体なんなのだろう。


コルビュジエ、ライト、ミースは世界各地にたくさんの名建築を残した。
一方ガウディと言えば、スペイン、それもそのほとんどが
バルセロナを中心としたわずか25点ほどの建築群。
そしてその中のただ一つの作品が彼を世界で一番有名な建築家たらしめている。


神の建築家。
神に愛された建築家。


それがガウディをガウディたらしめている。


ダ・ヴィンチ・コード【ダン・ブラウン】

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今さらだけど、再読。


中村先生の授業で神秘主義を習い、
ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」を読み、
先生のお薦めの一冊として、
ダン・ブラウンのフリーメイソンを扱った最新作「ロスト・シンボル」を
読もうとするもまだ新しいが故に古本市場にも安く出回らず。

代わりに「ダ・ヴィンチ・コード」単行本版が目に止まる。
かつてのベストセラーも今や一冊100円。
...時の流れとは恐ろしいもんだ。

さらにセールで一冊90円になってたので上中下巻まとめ買い。
前に一度読んでいることもあり、一気に読み終える。
(犯人が誰だったか、すっかり忘れてたけど)

しかし「薔薇の名前」に比べたらなんと読みやすいことか。
これでもか、と詰め込まれた叡智の数々も、
「薔薇の名前」と比べてしまうとなんとも薄っぺらく思えてしまう。


この世で一番大切なものはなんだろう。

真実?

...だとしたら真実ってなんだ?

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神秘主義、といえばはずせない一冊...らしい。

例によって中村先生のオススメです。


しかし例によって難解。そして謎だらけ。

発行当時は執筆者の名を伏せて匿名出版される。
著者がアンドレーエであることは彼の没後120年後に明らかになるのだけど、
くしくも「化学の結婚」の主人公、クリスティアン・ローゼンクロイツも、
死後120年後に、公開されるであろうとされている。
はたしてこれは単なる偶然なのか、仕組まれたできすぎの話なのか。

本書は表題の「化学の結婚」(1616)のほか、


  「薔薇十字の名声」(1614)
  「薔薇十字の信条告白」(1615)
  「全世界の普遍的か総体的改革」(1614)


の全四編が収められていますが、前者三編は薔薇十字の三大基本文書とされている。

しかし発刊当時は匿名出版だったため、
アンドレーエの単独執筆なのか、誰かとの共同執筆なのか、
それさえも諸説あるとか。


薔薇十字という秘密結社の存在自体が秘密のベールに包まれた、
正体のはっきりしない存在であるがゆえに謎が謎を呼ぶ。

巻末にはかなりのボリュームの解説があるけれど、
そのボリュームの大きさゆえに余計混乱してしまう。


薔薇十字とは何なのか?
「パラケルスス」(薔薇:魔術)とルター(十字:宗教)の統一なのか?
その統一が「化学の結婚」なのか?
統一に必要な材料が「哲学の石」「黄金の石」なのか?
だとしたらそれらの具体的な正体は何なのか?

あまりにも寓意的で、謎かけのように問いかけるから、
いかようにも解釈できる。


真実は一つでも、その解釈は無限にある。
だから同じ宗教でも宗派が生まれる。
宗教では満足できないから、秘密結社やフリーメイソンなどが登場する。


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[Tabula Smargdina(エメラルド版)](出典:Macrocosm


中村先生の授業で神秘主義を学んでます。

神秘主義はこれまでも授業の合間の余談で何度も登場していたけれど、
本格的に学ぶのはここにきてはじめてかも。

神秘主義と言えば、登場するのが「錬金術」と「アンドロギュヌス(両性具有)」。
...こう書くとどこか怪しい雰囲気を醸し出してしまうけど、
神秘主義はオカルトを代表する思想ではない。
何事も盲信しすぎることでオカルト的になるのであり、
神秘主義も正しく冷静に見つめる限りは真理を知るための哲学となる。


神秘主義を代表する伝説の錬金術師。
それが「ヘルメス・トリスメギストス」。
直訳すると「「3倍偉大なヘルメス」「三重に偉大なヘルメス」。
ヘルメスはあのギリシャ神話に登場するゼウスとマイアの間に生まれた守護神。

そのヘルメス・トリスメギストスが記した錬金術の奥義が、
「Tabula Smargdina(エメラルド板)」。

これは偽りのない真実、確実にしてこの上なく神聖なことである。

唯一なるものの奇蹟を成し遂げるにあたっては、

下にあるものは上にあるもののごとく、上にあるものは下にあるものがごとし。

万物が一者から、一者の冥想によって生まれるがごとく、

万物はこの唯一なるものから適応によって生じる。

...ここまでノートをとったところで次のスライドへ。
相変わらずのマシンガントークをしながら。

ネットで検索してみる。
良さげなサイトを発見。

  Macrocosm

そこから続きを引用。

「太陽」」はその父にして「月」はその母、

風はそを己が胎内に宿し、「大地」はその乳母。

万象の「テレーム」(テレスマ=意志)はそこにあり。

その力は「大地」の上に限りなし。

汝は「大地」と「火」を、精妙なるものと粗大なるものを、ゆっくりと巧みに分離すべし。

そは「大地」より「天」へのぼり、たちまちまたくだり、

まされるものと劣れるものの力を取り集む。

かくて汝は全世界の栄光を我がものとし、ゆえに暗きものはすべて汝より離れ去らん。

そは万物のうち最強のもの。何となれば、

そはあらゆる精妙なるものに打ち勝ち、あらゆる固体に滲透せん。

かくて世界は創造されたるなり。

かくのごときが、ここに指摘されし驚くべき適応の源なり。

かくてわれは、「世界智」の三部分を有するがゆえに、

ヘルメス・トリスメギストスと呼ばれたり。

「太陽」の働きにつきてわが述べしことに、欠けたるところなし。

エメラルド版についてはさまざまな文献があるみたいです。
上記はその中でも比較的著名なセルジュ・ユタンの『錬金術』のもの。

かのアイザック・ニュートンもエメラルド版について述べているとか。


優れた科学は優れた思想から。
...そういうことだろうか。


薔薇の名前【ウンベルト・エーコ】

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中村先生の授業において、
象徴主義・神秘主義を習う過程で紹介された本。

イタリアの記号学哲学者、ウンベルト・エーコによる小説。

舞台は教皇と皇帝の二極体制下で権力と欲望が渦巻く中世イタリア。
世界中のあらゆる書物が収められた異形の文書館を持つベネディクト会修道院で
ヨハネの黙示録に沿って次々と起こる奇怪な殺人事件。
その事件を解決すべく派遣されたフランチェスコ会修道僧バスカヴィルのウィリアムと
その弟子、ベネディクト会見習い修道士メルクのアドソのコンビが事件に立ち向かう。
物語は年老いたアドソが当時を回想する形で語られてゆく。

二人のコンビが難事件を解決してゆく、と書くと、
あたかも名探偵ホームズとその助手ワトソンによる、
推理小説のごときイメージを浮かべてしまうけど、
ただの推理小説なら、上下巻で800ページにもわたる大作である必要もない。

この物語は、キリスト教の世界観を描いたものであり、
さらにその奥深くには宗教VS哲学、あるいは宗教VS科学の対決が描かれている。


宗教だけで世界は成り立たず、
さりとて科学だけでも世界は成り立たない。

目に見えるものと、目に見えないもの。
世界はこの2つで成り立っており、どちらか一方だけで成り立つものでもない。


星の巡礼【パウロ・コエーリョ】

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春休みに入って早一週間。

毎回休みにはいると最初の一週間は放心したようになるのだけど、
今回はとくにその放心具合がひどかった。

忙しい割にはやりたくもない作業の積み重ねで、
良い終わり方ができなかったこともある。
いわば逃げ切った感で一杯で後味の悪さだけが残ってしまう、みたいな。


この本も春休み前の忙しくなる前になんとか読み終わっていたのだけど、
ようやくレビューする気になりました。

パウロ・コエーリョの処女作。

キリスト教三大聖地の一つ、サンティアゴ・コンポステーラへの道である「星の道」
への巡礼を通して人間が本当に辿るべき「道」と持つべき武器「剣」を発見する。


自分の道を知り、その道を歩んでいくための「剣」を持つことで、
人は本当に「良い人生」を送れる。


負ける建築【隈研吾】

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隈研吾氏の「負ける建築」を"やっと"読んだ。


まだ建築に興味を持つ前の頃から、
安藤忠雄と隈研吾の名前は知っていた。
それほどこの二人の建築家の名前は社会の中でブランド化していた。

しかし今の自分は「ブランド」に対しては懐疑的。
この本の存在はけっこう前から知ってたけれど、なかなか手を出さずにいた。
「負ける建築」というネガティブなタイトルも好きになれなかった。


前回の個人美術館の課題で等々力の村井正誠紀念美術館を見学して、
隈氏の建築に触れる機会を得た。
そしてその空間の素晴らしさに魅了された。

そして現在乃木坂のギャラリー「間」で開催されている隈氏の個展
「有機的」を意識した氏の建築にさらに惹かれていった。
氏の建築思想をもっと知りたいと思った。


タイトルからエゴ丸出しの主観的な本かな、と思ったら、
全くの逆で、主観を殺し、あくまで客観的な語り口調。
自分の建築作品についてはほとんど語られていない。
その客観性が逆に自分の言説が絶対正義だという傲慢に写らなくもない。

そして建築家特有の文章の難解さ。
東大院卒のインテリだけに知性溢れる文章なんだけど、
決して読者には優しくない。
そしてこの本はすべての建築を志す者に夢を与える本ではない。
建築の現実の厳しさを説き、それでも君は建築を志すか?と読者に問う。
まさに子供を谷底に蹴落とす獅子のようなスタンス。


この本には賛同できる点が多い反面、疑問に思う点も多々。

いずれにせよ、この本は多くのことを考えさせられる。
その意味においてこの本は間違いなく良書といえる。

建築を志す人にぜひとも読んでもらいたい。
そして読んでどう思うか。
その声を聞いてみたい。


失われた薔薇【セルダル・オズカン】

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中村先生の授業で紹介された本。
神秘主義を説明する本として紹介されてました。

この本と並行して「ソフィーの世界」を読んでいたのですが、
ちょうど「失われた薔薇」を読み終わった直後に
ギリシャの三賢人(ソクラテス、プラトン、アリストテレス)の後登場した
新プラトン主義のプロティノスによる神秘主義の部分を読んだのです。

なんたるセレンディピティ!
おかげで神秘主義が少し理解できた気がします。


美しく才気溢れるセレブな女性ダイアナは周囲の称賛を受けながらも
どこか満たされない日々を送る。
自信のなさと堅実な道の選択から本当は小説家になりたいのに、
法律家の道を選ぼうとしていた。

そんな中、彼女の最大の理解者である母が亡くなってしまう。
死に際に母が娘に残した言葉は彼女をさらなる悲しみへと突き落とす。

なんとダイアナには双子の妹メアリがいて、
幼い頃に死んだはずの父の元で育っている。
母の病気を知った父はメアリに母に連絡先を教え、
メアリは母へ4通の手紙を出す。
どうやらメアリは幸せではないようだ。
心配した母はダイアナにメアリを探すように、という遺言を残して逝った。

ダイアナは最初はそんな母親の遺言を無視していたが、
やがてメアリが立ち寄ったと思われるイスタンブールを訪れる決心をする。
そこでダイアナを待ち受けていたものは...


この本はあくまである母娘の物語であって、神秘主義の解説本ではありません。
本文中に「神秘主義」の文字は一切出てこないし、
「ソフィーの世界」を併読していなければ、この本を読んだだけでは
神秘主義を意識することはないでしょう。

それでもこの本を読み終わると、なにか満たされた気になる。
それは僕だけじゃない。

世界30カ国で翻訳されて世界中で読まれていることを考えれば、
神秘主義は今の世界に必要な「考え方」だと言えます。


人は一生自分のエゴから抜け出ることはできない。
しかしそのエゴを殺さなければ、人は誰とも分かち合えない。

エゴを殺すことで人は真に自由になれる。
人は神になれる。神と一体化する。