[上野・国立西洋美術館]
2016年7月17日、トルコで開催されていたユネスコの世界遺産委員会で、
日本の国立西洋美術館を含む7カ国17資産で構成されるル・コルビュジエの建築作品が、
世界文化遺産に登録されることが正式に決定しました。
実際は前日の16日に審議されるはずだったのですが、
トルコで突如として起こったクーデター未遂事件で中止、
翌17日に再開され、決定に至りました。
2009年と2011年の過去2回の審議で登録が見送られ、
今回三度目の正直でようやくの登録。
長い道のりだったんだなあ。
東京23区で初、大陸間をまたいだ遺産としても初の登録。
そして国内20件目の世界遺産登録となります。
大原美術館に行ってきました。
岡山県倉敷市、美しい白壁の伝統的建造物が立ち並ぶ美観地区の中にあります。
大原美術館は日本ではじめて西洋美術を展示する美術館として1930年(昭和5年)に開館しました。
倉敷の実業家・大原孫三郎が画家・児島虎次郎に依頼して収集したコレクションが、
この美術館の作品群のベースとなっています。
同じように西洋美術を展示する美術館としては東京上野の国立西洋美術館がありますが、
こちらは実業家・松方幸次郎が収集した松方コレクションをベースに1959年(昭和34年)に開館。
国立西洋美術館は近代建築の巨匠ル・コルビュジエによる統一感あるモダニズム建築であるのに対し、
大原美術館は本館はギリシャ風、分館はモダニズム、工芸館は倉敷の伝統建造物風、と
割とカオス。
自分はどちらかといえば、国立西洋美術館のように明確なコンセプトの元、
統一感あるデザインのほうが好きですが、大原美術館のようなカオス感も悪くない。
やっぱりいろいろあるから世の中面白いのかな。
この本をAmazonで買う
カーサ・ブルータスが選ぶ「いつかは行きたい!世界の名建築100選」。
...建築好きならば間違いなく興味が喚起されるテーマですよね。
数多ある建築群から限られた状況でどれだけ多くの名建築に巡り会えるか。
それは事前に知識として名建築を知っておくことにほかならない。
東京の会社を辞めて美大に行くことを決めたときから、
多くの情報をリサーチし、実際に訪れてもいるけれど、
次から次へと名建築は現れる。
まあ、それは幸せなことなんだろうけども。
自分の場合はどれだけ多くの名建築を訪れることができるか、ではなく、
死ぬまでに自分で思う究極の建築を一つ作るのが最終的なゴールではあるけども、
そのためにはやはりリサーチし続けなければならない。
この本をAmazonで買う
今年最後の読書レビュー。
ル・コルビュジエの「ユルバニスム」。
毎回難解な文章に苦しめられながらも、何度も手を伸ばしてしまう。
それだけコルビュジエの建築が魅力的だということなのだけど、
日本にはコルビュジエの建築は国立西洋美術館しかなく、
イメージと言葉からしか彼の建築を知る手だてがない。
そしてやっぱり言葉からではコルビュジエの建築哲学はピンと来ない。
「ユルバニスム」とはいわゆる「都市計画」ということなのだけど、
僕はいまだに都市計画そのものがピンと来ない。
建築家としてのコルビュジエには大いにインスパイアされるのだけど、
都市計画家としてはよく分からない。
唯一実現した、チャンディガールにしても、
建物個々は魅力的ではあるけれど、
都市としてははたしてどうだったのか。
そもそも、成功した都市計画などあるのだろうか。
パリ、ロンドン、ベルリン、ニューヨーク、そして東京...
それぞれの都市には個性があり、それなりの魅力があって、
それなりの光と闇を抱えている。
自然が人智の及ばない神の操作があるように、
都市にもそういう部分があるのではないだろうか。
完全な都市などない。
人智による完全な操作が可能な都市が実現したとして、
はたしてそういう都市に魅力はあるのだろうか。
Amazonで買う
夏休みの間に借りてた本、なんとか返却期限ぎりぎりで読み終えることができました。
最後の一冊はS.ギーディオンの「建築、その変遷」。
建築史家、ギーディオンの遺著で、日本語版は1978年出版。
すでにAmazonでは新書では買えなくなってます。
実はギーディオンの本、その主著「空間、時間、建築」に一度チャレンジして挫折。
今回も450ページにわたる分厚さで、読み切れるかどうか心配だったのだけど、
意外にも建築関係の本にしてはめずらしく読みやすく、
通勤の電車の中ですらすらと読み進めることができました。
...内容をちゃんと理解しているかどうかは疑問だけど。
そのタイトルの通り、建築の歴史を淡々と語ったものかと思いきや、
最初にギリシャを少し語った後、古代ローマの建築について延々と語る。
そして中世をすっ飛ばし、ルネサンス、バロックをかすめて一気に現代へ。
ル・コルビジェを語って終わる。
ぶっちゃけ変遷、というより古代ローマ建築と現代建築の「関係」を語ったもの、
と言った方が正確かもしれない。
かつての古代ローマ時代。
そこには現代にも勝るとも劣らない高度な文明が栄えていた。
建築も然り。
それが古代ローマの滅亡と共に文明は原始的なものに戻り、
以降再びその高度文明の域に戻るまでおよそ1800年もの時を要した。
しかしその悠久的な時の流れこそ、
本来の人間的スケールでの進化だと、僕には思えるのだが。
この本をAmazonで買う
図書館で見つけたル・コルビュジエの著書。
「建築をめざして」とは別の本なのだろうか。
「建築をめざして」を読んだのがけっこう前なので、今となってはよく分からない。
「ソーニエ」とはなんなのか。
これも本書を読む限りではよく分からなかった。
相変わらず難解な文章だけれど、
一文の長さが短く、1ページに掲載される文章量も比較的少ないことで
コルビュジエの文章にしては読みやすかったかな。
建築へ。
巨匠が人々に建築が向かうべき本質的な「道」を導く。
今にしてみれば極論過ぎる部分も少なくない。
それでもこの本の内容は古びない。
今以てなお、学ぶところが多い本ではないだろうか。
僕が辿るべき「建築道」とはどんなものなのだろう。
この本をAmazonで買う
バイト仲間が貸してくれた雑誌で知ったフィリップ・ジョンソン著作集。
さっそく図書館で探して読んでみました。
コルビュジエやライトに比べれば若干読みやすいです。
そして掲載されている写真もモノクロだけど、とても美しい。
しかしやや厚めで大きいこの本を満員電車の中で読むのは骨が折れた...
著作集、とありますが、
実際はデイヴィッド・ホイットニーによりジョンソンの数々の
雑誌のレビューや講演記録などをオムニバス形式で編纂されたもの。
日本版の本のデザインは田中一光。
1975年の初版はグレーのブック・カバー、
1994年の再版版は白のブック・カバーとなっているようです。
1932年、当時のMoMAの館長アルフリッド・バーにより
1922年以後に急速に広まった新しい建築様式は
「インターナショナル・スタイル」と命名され、
ラッセル・ヒッチコックとフィリップ・ジョンソンにより
「インターナショナル・スタイル:1922年以後の建築」
というタイトルで近代建築国際展が開催された。
しかしその半世紀後。
自ら提唱したその様式に反旗を翻し、ポストモダンへの展開を見せる。
彼が建築に馳せる想いは何だったのか。
そのヒントがこの本にはあると思います。
この本をAmazonで買う
過去にミースに関する本を2冊読みました。
・評伝ミース・ファン・デル・ローエ
・ミース・ファン・デル・ローエ 真理を求めて
再びミースについて考える、という意味で本書は最適かな、と思って読んだのですが。
いまだに1つもミース建築を実際に訪れたことがないからか、
...さっぱり分からない。
ニューヨークに旅行したとき、シーグラムビルを見逃したことが返す返すも悔やまれる。
それにしても。
"Less is More"をテーマに極限までムダを削ぎ落としたシンプルな立方体の空間に、
どうして周囲はこうも複雑な解釈をしようとするのか、不思議でならないのだけど、
ある意味そういう状況が本当の意味での"Less is More"なのかな。
写真を見るだけでもその美しさは半端ではない。
実物を見たときの感動はいかばかりか。
(...あるいはグラフィックの魔術で、実際はそれほどでもないかもしれないけど)
しかし彼の模倣品である20世紀都市はなんと醜いことか。
そして思うのである。
「立方体は人間にとって最適な空間を与える本質的なフレームではない」
ミースだからこそ、立方体の空間を美の極みへ高められたのだ、と。
TokyoArtBeatで見つけました。
大成建設のギャラリー、「ギャルリー・タイセイ」。
主にル・コルビュジエの作品を展示していて、
ちょうど企画展「ル・コルビュジエの建築」第1部が開催中、ということで
日曜日にでも行こうかな、と思ったら日曜は休館日ということで、
土曜日の授業前に急いで行ってきました。
横浜は関内駅から歩いて8分。
こぢんまりとしてますが、白を基調としたシンプルですっきりした空間。
土曜日だというのに、誰も来館者がいなくて、
来館者どころか、スタッフも一人もいなくて、
ほぼ貸し切り状態でした。
ビルの入口に警備員はいるものの、大丈夫なのかな、こんなんで。
撮影不可の案内もないようなので、
思う存分撮影してきました~
この本をAmazonで買う
ルイス・バラガン展2度目の訪問。
前回からおよそ3ヶ月ぶり。
ワタリウム美術館の展示は期間中は何度でも入場できるフリーパスポート制なので、
もっと行きたかったのだけど、気づけば会期終了近づいてやっと2回目。
来週から大学の授業がはじまることを考えれば、たぶん今回が最後。
でもまあ、内容的には2回で十分かな。
「私の家は、私の心の避難場所でした」
...という言葉にあるように、バラガン邸は静謐にあってこそその魅力を発揮する。
どんなに良いディレクションをしても、
展示空間という目的上、一番重要な条件である静謐さを実現するのは難しい。
特に今回は休日に行ったということもあって、来場者が多め。
せっかくの空間もこう人が多くては興ざめ。
...というわけで前回同様、DVD映像をじっくり鑑賞。
前回は未完成だった図録もちゃんと発売されていて、
1,500円(税抜き)という値段の割には充実した内容だったので、
厳しい懐事情ながらも思わず購入。
全体の半分以上がバラガン自邸の解説。
さらにバラガン建築MAPつき。
展覧会で上映されていたDVDつきで4,000円だったのだけど、
さすがにそれはあきらめて図録のみ購入。
芸術は静的であるべきではないだろうか。
...最近よくそう思う。