遊子川地区社会教育セミナー

shakyoseminar00.jpg


日曜日は遊子川地区の社会教育セミナー。

住民、勤務者、出身者など、遊子川地域関係者を対象に、講演を行い、
意見交換を行なうセミナー。

このセミナーで微力ながらお話させていただくことになりました。
タイトルはさんざん考えた挙句、ごくありきたりに、


  「遊子川地域における地域活性化とは?」


でも、我ながら良いタイトルだったと思う。
とくに最後の「?」にこだわりがあるのです。


僕は遊子川で唯一、「地域づくり」というお仕事で月給をもらう身です。

だから遊子川の地域づくりは僕に任せろ。

...というわけではありません。

地域づくりは地域のみんなでするものです。
僕もその地域の一員ではありますが、地域経験、という意味では
地域の中では一番の若輩者です。
そんな頼りない人間に地域づくりを任せられるはずがありません。
では、そんな若輩者の役割はなんなのか。
なぜ、地域おこし協力隊は都会の人間を採用するのか。


新しく何かを作ったり、失ってしまったものを復活させようとするとき、
その対象に真っ向から向き合う必要があります。
それは単にその対象のそばに居ればいいというものではない。
どんなにその対象の近くに居たとしても、その対象が心の中になければ。
その対象の中に「魅力」を感じていなければ。

でも、どんなに魅力的なものであっても、
その環境にどっぷり浸かりきっていると、その魅力は霞んで見えなくなってしまう。
慣れとは恐ろしいもので、人間に必要な環境適応能力である一方で、
進化の妨げとなってしまうものでもある。

対象の魅力を見出すには、あるいは再認識するには、
慣れきった環境から少し離れて、客観的に対象を眺める必要があります。
いわゆる「外の目線」「斬新な視点」。
つまり、それが地域の若輩者、地域おこし協力隊の存在理由なのです。


もう一度言います。
地域づくりは地域のみんなでするものです。
どんな地域づくりをすればいいか、みんなで考えるべきです。
僕の役割はその考える「きっかけ」を与えることにあると思うのです。
僕も僕の考える地域づくりを提案しますが、それはあくまで提案の一つであって、
すべてではありません。

地域のことをみんなで考えよう。
その意味を込めてタイトルの最後に「?」をつけました。
この「?」が有るのと無いのとではまったく意味が違ってきます。
ない場合、それは僕が考える地域づくりを地域のみなさんに押し付けることになります。
土地のことをろくに知らない人間の提案など、まだ信用に足るものではないですし、
それはまったく僕の意図するところではありません。

「?」をつけることで、遊子川における地域活性化をみんなで考えよう、
という投げかけをしたいのです。

この講演が地域ぐるみで地域づくりを考えるきっかけになってくれれば幸いです。


レポートとしてまとめる都合上、実際に話した内容とは若干異なる部分、
追加した部分があります。


講演のアジェンダ。

shakyoseminar01.jpg

遊子川にきてもうすぐ一年になります。
地域のみんなには顔と名前は少なからず覚えてもらったように思いますが、
「集落応援隊(地域おこし協力隊)って実際なにやってるの?」
...という声も少なからずあるということでまずは集落応援隊の職務、役割説明。

次いで、地域づくり組織、遊子川もりあげ隊での自分の役割紹介。

そして遊子川での最初の一年を過ごして、自分なりに感じたことの報告。

最後に次年度の取り組みである木工普及活動の紹介。

以上四点について話しました。


まず最初は「集落応援隊とは」。

shakyoseminar03.jpg

集落応援隊とは西予市独自の役職名であり、その実態は「地域おこし協力隊」です。
それは総務省の地方支援制度により、地方自治体に採用された特別公務員。
その職務は採用自治体で決定することになっています。
西予市の場合は、校区単位で結成される地域づくり組織と連携して地域づくり活動に従事、
とありますが、具体的な活動プランについては隊員の自主性に任されています。


集落応援隊の具体的な活動内容は以下の四つ。

shakyoseminar04.jpg

まずは地域づくり組織「遊子川もりあげ隊」への活動参加。
ついで地域行事の要である遊子川公民館にデスクを置いて、公民館活動の支援。
さらに地域内の各種行事への参加及び取材・記録。
そして地域づくり要員として地域づくりスキルの学習。


まずは遊子川もりあげ隊への活動参加。

shakyoseminar06.jpg

五つの部会すべてに役員として参加し、会合及び活動に参加。
参加のパターンとしては二種類。
自分の強み「デザイン」を活かしたものと、ガッツリ作業系。

自分の強みを活かしたものとしては...


もりあげ隊のロゴデザイン。

shakyoseminar07.jpg

遊子川の美しい山と川と雲をイメージ。


目安箱の設置

shakyoseminar08.jpg

住民の意見・要望を吸い上げるために地区内二箇所に設置。


専用封筒の作成

shakyoseminar09.jpg

もりあげ隊からの諸連絡に使用。


スタッフウェアの制作

shakyoseminar10.jpg

もりあげ隊の活動のアピール。


もりあげ隊の会報(創刊号第2号)の制作。

shakyoseminar11.jpg

もりあげ隊の活動内容の周知。


遊子川アピールポスターの作成。

shakyoseminar12.jpg

地域のアピール。


遊子川カレンダーの制作。

shakyoseminar13.jpg

同じく地域のアピール。


もりあげ隊のホームページ制作。

shakyoseminar14.jpg

もりあげ隊の活動内容の周知を充実させるものとして制作。


続いて遊子川での一年間(行事編)。

遊子川に来て最初の仕事、鯉のぼり上げ

shakyoseminar16.jpg

強面のオッチャンたちに囲まれてビビりまくってたなあ。
今は、それなりに打ち解けてきましたが。


小学校での水生生物調査

shakyoseminar17.jpg

川の水に生息する虫を調べることで、川のキレイさを測る。
子どもたちに誇れる故郷を認識してもらう。
これも立派な地域づくりではないでしょうか。


天満神社夏越祭

shakyoseminar18.jpg

何気なく伝承されてゆく文化。
しかし人口の減少によりこれらの祭事の維持してゆくことが困難になっている状況。
これらの文化の良さを伝えていくことが地域再生の出発点となる。


愛護班キャンプ

shakyoseminar19.jpg

四国中央市での紙すき体験、キャンプ体験。
成長期に良い経験をたくさんしておくこと。
それは必ず人生の貯金になる。


誓願寺楽念仏

shakyoseminar20.jpg

独特の太鼓の音色に乗って唱えられる念仏。
長年の文化に馴染んでいると、独特であることを地域の人は忘れてしまう。
独特の良さを持つものを良い、と言うこと。
それも地域おこし協力隊の大切な仕事です。


遊子川地区盆踊り大会

shakyoseminar21.jpg

昔ながらの盆踊り。
それを地域みんなで毎年盛り上げていくことは、古くから行われてきた地域づくりである。
当然、伝承してゆくべき文化でもある。


遊子川地区合同大運動会

shakyoseminar22.jpg

全部で10人しかいない子どもたちのために地域ぐるみで盛り上げる運動会。
都会の運動会にはない、地域の結束力がある。
今の日本に必要な結束力がここにある。


城川オリンピック

shakyoseminar23.jpg

町ぐるみでの運動会。
遊びに全力をつくすこと。真面目に練習を重ねること。地道に繰り返すこと。
楽しく生きるコツがここにある。


天満神社秋祭り(七鹿踊り)

shakyoseminar24.jpg

奥州伊達家より伝承されたという鹿踊り。
城川町各地で盛んなこの踊り、遊子川では七つの鹿が踊ります。
東京から来た身にはやはり独特な祭事であります。


ふるさと探訪

shakyoseminar25.jpg

今年は柳沢地区の白岩城跡を訪問。
この企画のために、荒れ放題だった白岩城とそこに至る道を整備。
故郷を誇るために、故郷をキレイにする。
立派な地域づくりですね。


遊子川小祭り

shakyoseminar26.jpg

普段お世話になっている地域のみんなを小学生達がご招待。
感謝の心を育む。つくづくこの地域の教育のレベルの高さを感じます。
少ないから、多いから、で教育のレベルが決まるのではない。
少ないから、多いから、で地域のレベルが決まるのではない。


ふれあい三世代交流

shakyoseminar28.jpg

ミニ門松づくり。
材料の確保から加工、盛り付けまで、一連の流れを三世代一緒に行なう。
先の世代から後の世代へ伝えるべくして伝えられる伝承。
これも古くから行われてきた地域づくり。


竹馬交流

shakyoseminar29.jpg

城川オリンピックの放送を見た人からの問い合わせ。
竹馬の作り方マニュアルと竹馬の現物を寄贈。
地域づくりは地域の中だけで行われるのではなく、周囲との交流によっても育まれる。
地域は地域だけで成り立つものではなく、周囲との関係で成り立ってゆく。


学習発表会

shakyoseminar30.jpg

普段頼りなげな子どもたちがしっかり台詞を覚えて、堂々の演技。
やはり教育レベルの高さを感じずにはいられない。
少数だからこそできることがある。


愛護班スキー教室

shakyoseminar31.jpg

四国に来るまでは、四国に雪が降ることを知りませんでした。
四国でスキーが出来るとは思いませんでした。
子どもたちの吸収の早さに脱帽。


遊子川小防犯教室

shakyoseminar32.jpg

不審者が学校に来たときの対応を警察官から学ぶ。
不審者役で協力しましたが、役とはいえ、子どもたちに拒否されるのは悲しい。
その後、日本一の警察犬の模範演技で子どもたちの心がそちらに奪われてしまい、さらに悲しい。
まあ、いいんです、少しはお役に立てた、...はずですから。


ここまで話して、時間を確認すると、終了予定時刻まで残り5分。
...ヤバイ、のんびり話しすぎた。
以後をマキで話す。


続いて、遊子川での一年間(風景編)。


雨包山

shakyoseminar34.jpg

遊子川の誇る霊峰。
ヤマアジサイにツルアジサイ、美しい木々。
美しい自然がここにはある。


樽滝。

shakyoseminar35.jpg

雨包山のメインスポット。
夏の元気な緑もよし、秋の艶やかな紅葉もよし、冬の落水が凍る様もよし。
マイナスイオン出まくりのスポットです。


桂木

shakyoseminar36.jpg

雨包山山頂に向かう道からちょっと奥に入ったところにある古い巨木。
こういう大木を見るたびに、巨木に神を見る人の気持ちが分かる気がするのです。
森林ならぬ「神林」。


おんばん滝

shakyoseminar37.jpg

遊子川の中央を県道と共に流れる野井川。
その野井川の県道からはなれた場所にあることもあって、地域の隠れスポット。
そんなに大きくはないけれど、なかなか良い滝。


野井川。

shakyoseminar38.jpg

遊子川の大動脈...というほど大きな川でもないですが。
川の所々に見られる巨岩が目を引きます。
その昔、神さまが雨包山から投げつけた、という伝説があるそうです。


オオイチョウ

shakyoseminar39.jpg

公民館の前にある巨木。
オオイチョウは都会でもたくさん見たけれど、やはりこの辺のモノはひと味も二味も違う。
神が宿っているんだな、きっと。


段畑・棚田。

shakyoseminar40.jpg

渓谷地形ゆえに美しい段畑・棚田があちらこちらで見られます。
宇和島の遊子ほどではないにしても(...とはセミナーでは言えなかったけどw)、
厳しい自然に寄り添う人間のたくましさが美しく表現されていると思うのです。


茶堂

shakyoseminar41.jpg

その昔、お遍路さんを接待する場所として建てられたお堂。
方丈のシンプルなその佇まいは茶室に通じるものがある気がします。
やはり独特の文化に感じます。


神社・仏閣。

shakyoseminar42.jpg

凝った彫刻、屋根付橋など、
何気ない寺社仏閣にも、高い文化を感じます。
田舎だから文化が低い、というわけではないと思う。


雪景色

shakyoseminar43.jpg

四季の移り変わりが感じられることの幸せ。
その当たり前の幸せでさえ、都会では感じられなくなってきている。
同時に自然で生きることの厳しさも再認識させられることにもなりますが、
それが本当に生きる、ということなんだと。


そして最後に自分なりの遊子川地域活性化の提案、「地域木材有効活用事業」の紹介。

kenpi_presen00.jpg


国土の7割が森林なのに、木材自給率は3割にも満たない、という矛盾。

kenpi_presen07.jpg


地域内に打ち捨てられた、間伐材、支障竹。

kenpi_presen08.jpg

現在は価値がない、とされているものに価値を与えるところからスタート。


活動のステップ。

kenpi_presen09.jpg

まずは作り、イベントを起こし、地域内に展示し、経済的な展開を目指す。


個人単独で行うのではなく、もりあげ隊を中心として地域ぐるみで取り組む。

kenpi_presen10.jpg

行政との連携により地域内の各団体とスムーズな連携を目指す。


木工のイメージ。美大での作品を紹介。

kenpi_presen11.jpg

埋れている価値を見える形で、分かりやすくアピール。


通常木工職人など、専門家単独でする事業を、分業して行なうことによる斬新さ。

kenpi_presen12.jpg

多視点からの取り組みによりこれまでにない木工の形が期待される。


事業実現のために必要な環境整備。

shakyoseminar52.jpg

誰もが集える木工所の整備、道具の準備、材料の確保、技術研修、活動のアピール。


事業実現のための工夫点。

shakyoseminar53.jpg

行政との連携、もりあげ隊主導による地域ぐるみでの取り組み、既存資産活用による低コスト。


現在の状況。

shakyoseminar56.jpg

木工所の利用許可申請、間伐材の収集、乾燥、木工先進地の視察、木工参考図書購入など。


木工所をアピールするためのロゴデザインの提唱

shakyoseminar57.jpg


最後に念押し。

shakyoseminar58.jpg


会場である遊子川公民館入口には、参加を呼びかける貼り紙。

syakyoseminar_poster.jpg


朝7:30に会場集合、椅子・テーブルを並べて会場準備。

syakyoseminar_hall1.jpg


スタート直前。60名ほどの人が集まりました。

syakyoseminar_hall2.jpg


配布資料準備も万端。

syakyoseminar_paper.jpg


同じ城川町での地域づくりを先ゆく川津南地区のやっちみる会からも
講演をいただきました。

syakyoseminar_yacchimirukai.jpg

的確な説明、聴き手の心をつかむ感情表現、規定通りの発表の時間配分。
さすがの先進地の貫禄。


一方、自分はというと。
正直、講演前は50分という持ち時間を余らせずに話すことができるかな、と心配してました。
が、いざ蓋を開けてみると、時間が足らなくて後半マキで話さなければならないくらいでした。

それだけこの一年間で得たものの「濃密さ」を実感しました。

時間はややオーバーしたというクレームはあったものの、
総じて皆さんからは「良かったよ」と言ってもらえて嬉しかった。
とくに遊子川での一年間の報告が好評だったのが自分としては意外でした。
自分で思う以上に地域の良さの再認識効果があったように感じました。

遊子川での最初の一年の活動報告と次年度の活動予定を報告する良い機会になりました。

来年度も頑張ります!