[希望号の難破(1824)](画像は大塚国際美術館の陶板画)
早いもので今週末は共通教育科目の前期末テスト。
西洋美術史Ⅱはルネサンス直後のマニエリスムにはじまり、
バロック、ロココ、新古典主義を経て、
フランス、ドイツ、イギリスの
3つの国のロマン主義を学んだところで終了。
ロココの軽薄さへの反動から登場した、
重厚でどっしりとした安定感のある新古典主義。
その新古典主義を継承しながらも、
心の奥底の感情表現が萌芽しはじめるのがロマン主義。
それはやがてバルビゾン派の登場に影響を与え、
クールベの写実主義を経て、印象派へと至る。
ロマン主義の代表的画家として
フランスではジェリコ、ドラクロワ、
ドイツではフリードリヒ、ルンゲ、
イギリスではコンスタブル、ターナーを学んだわけだけど、
自分のお気に入りはドイツのカスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(Caspar David Friedrich)。
自然の絶対的な静寂の中に神秘が宿る。
静寂でありながら光と影を明示的に使うことで
自然の厳しさ、躍動感を感じさせる。
真のダイナミズムとは、静寂の中の一瞬にあるのではないだろうか。
同級生がくれた本。
出版・社会思想社、初版1965年。
もらった本は1998年の第19刷版。
かなりのロングセラーだったようですが、現在はほぼ絶版状態。
古い本だけど、かなり濃い。
1年生のときにデザイン史の授業を受けたけれど、
この本はそれを補って余りある。
自分がクラシカルに固執するのは単に懐古主義だからではない。
別に過去を知らずとも、新しいものは作れるのかもしれない。
新しい、ということはただそれだけで価値がある。
しかし、ややもすればその価値だけに依存しがちでもある。
そして、新しさを失ったとき、その価値も消えてしまうのである。
新しいものが新しいものでなくなったとき、
それが生き残ってゆくには、新しいだけでない、ずっと残っていく価値、
「本質」が芽生えていなければならないのである。
今を生きる自分が過去のものと出会うとき、
その過去は本質を備えているが故に生き残った良質なものたちである。
だから人はクラシカルを学ぶべきである。
故きを温めて新しきを知れ。
[ブロンツィーノ『愛の寓意』]※画像は大塚国際美術館の陶板画。
久々の美術ネタ。
履修登録が終わり、共通教育科目が授業スタート。
結局、中村先生の「文学と芸術」「西洋美術史Ⅱ」を履修。
これで上野毛キャンパスでの中村先生の授業5コマをすべて履修。
先週のガイダンスを聞く限り、同じ内容がなきにしもあらず、だけど、
新しいネタもまだまだありそうな気がしたし、なによりも...
...けっこう忘れてる。
こうなったら徹底的にルネサンス以降のクラシックをたたき込むのも悪くない、
ということで履修することにしました。
西洋かぶれ、というわけでもないのだけど、
ことアートに関しては圧倒的に西洋のほうが好きかも。
現代アートよりはクラシックなものが好きだけど、
古ければ古いほどいい、というものでもなくて、
芸術が王侯貴族だけのものだった頃のはあんまり好きじゃなく、
ルネサンス以降が好き。
中村先生が担当するパートがこの頃だというのも、
先生の授業が好きな理由の一つでもある。
中村先生の授業を整理すると。
【1年生: 社会と芸術】
ゴヤ、ピカソ、ダリ、ロルカなど主にスペイン芸術を中心に
その時代の社会背景と芸術との関係を学ぶ。
【2年生: 特講Ⅲ】
構図や色彩、文字との関連など、絵画技法がテーマ。
【3年生: 特講Ⅰ】
エミール・ゾラ、オスカー・ワイルド、ボードレール、ロートレアモン、フローベールなど、
フランス文学を中心に学ぶ。
【4年生: 西洋美術史Ⅱ】
ルネサンス以降の絵画の歴史を学ぶ
【4年生: 文学と芸術】
象徴主義を中心とした授業。
授業のテーマなどについては、あくまで僕が感じたイメージであって、
正確なものではありません。年によって内容も微妙に異なるだろうし。
詳細についてはシラバスを参照してください。
...といいながら僕はシラバスを参照にしたことはほとんどないけど。
日曜美術館でバロック芸術特集をしてました。
「歪んだ真珠」を意味する近世の文化様式。
ルネサンスの完全なる調和に退屈した人々は円の中でうごめき、やがて拡散していく。
そして...真珠は歪んだ。
バロックを知るにはその前のルネサンスと比較すると分かりやすい。
...ということでラファエロとカラバッジョ、ミケランジェロとベルニーニを比較。
秩序と渾沌。
静と動。
シンプルさと複雑さ。
質素と豪奢。
生とは波動だ。
だから時代はいつだって繰り返す。
文化はいつだって繰り返す。
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内藤廣さんが東京大学で3年間行った構造デザインの講義をまとめた一冊。
構造デザインの入門書のバイブルと言っても過言でないくらい秀逸。
工学系の建築科、土木科の学生に向けての講義なので、
美大学生には多少分かりにくいところもなきにしもあらずですが、
少なくともこれまで読んだ構造デザインの本の中では一番分かりやすく、
構造デザインの意義、使命などを明確に伝えてくれるものだった。
マリオ・サルバドリの「建築構造のはなし」もすごく良いのですが、
現在活躍中の建築家による生の声は同じ時間軸であるだけに分かりやすい。
いわゆるアカデミズムによる知識のための知識ではなく、
建築家自身の経験による「生きた知識」なので、より説得力がある。
講義ではあえて「・・・という感じ」という主観的な表現を使い、
その後に「あなたにとってはどういう感じなの?」と学生に考えさせる。
デザインにとって必要なのは知識を詰め込むことではなく、
自ら「考える」ことによって感性を磨いていくことなのだ。
デザインこそは、土木であろうと建築であろうと、また他の工学分野にしても、すべてのエンジニアが持つべき能力だ。デザインマインドなくして社会は語れない。工学が社会と向き合うこと止めない限り、エンジニアにとって、デザインは必須の教養であり、必要不可欠の武器なのだと思う。デザインこそは、技術の周辺にあるのではなく、コアにあるべきものだと考えている。講義にはそういう信念を持って臨んだ。だから「構造デザイン」なのだ。若者達の頭のどこかにこのことを植えつけておけば、いずれそれは彼らが実社会の中で各々のやり方で活かしてくれるはずだ。そういうことを勝手に想像しながら講義をした。
本を読むだけでも、構造デザインの価値をこれだけ感じるのだから、
実際の講義はさらに有意義なものだったと思います。
受けてみたかったなあ...
[ジョン・ダン肖像画](出典:Wikipedia)
前期試験が終わり、一応夏休みに入りました。
しかしまだレポートが残っていたり、ゼミの撤収作業が残っていたりと
まだ気が落ち着けません。
前期のテストは中村先生の「特講Ⅰ」のみ。
結果は...たぶん完璧。
録音した講義内容を聞き返しながらテスト勉強。
ノート持ち込みOKなので、暗記する必要はないのだけど、
限られた時間内でしっかり記述するために、要点を整理。
せっかくなのでブログに記録しておこうと。
まずはイギリスのマニエリスムの詩人、ジョン・ダン。
奇想(Concetto:コンチェット)の達人。
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セシル・バルモンドの本をAmazonで検索したら、
「この商品を買った人はこんな商品も買っています」で出てきた本。
Amazonってホント商売上手い。
しかし貧乏な僕はまずは図書館だけど。
図書館ってホント便利。
八王子キャンパスの図書館にありました。
セシル・バルモンドと同じく、Arup出身の構造エンジニア。
時代的にはライスが先輩にあたります。
セシル・バルモンドがコールハースやリベスキンドと組んだのに対し、
ピーター・ライスはレンゾ・ピアノやリチャード・ロジャースと組んで
多くの名建築、名構造を世に残しています。
・ポンピドゥー・センター(ピアノ&ロジャース)
・ロイズ(ロジャース)
・IBMパヴィリオン(ピアノ)
・メニル・コレクション美術館(ピアノ)
・ジェノヴァ港湾再開発の大桟橋(通称「ビゴ」、ピアノ)
・関西国際空港ターミナル(ピアノ)
とくにピアノとは「ピアノ&ライス・アソシエイツ」というユニットを一時期
組んでいたほど深い関係だったみたいです。
ピアノ&ロジャースのみならず多くの名建築家とも仕事しています。
・シドニー・オペラハウス(ヨーン・ウッツォン)
・CNITのファサード(ジャン・プルーヴェ)
・TGV/PERシャルル・ド・ゴール空港駅(ポール・アンドリュー)
・グランダルシュの「雲」(スプレッケルセン/ポール・アンドリュー)
・ルーヴルの逆ピラミッド(I.M.ペイ)
・ジャパン・ブリッジ(黒川紀章)
・ラ・ヴィレット(アドリアン・ファンシベール)
ヨーン・ウッツォンのシドニー・オペラハウスでデビューし、
ポンピドゥー・センターで一躍有名になった。
彼の携わってきた建築をざっと俯瞰するだけでも彼の残した偉大な功績が伺えます。
ピエール・ルイジ・ネルビ、オーヴ・アラップ、フェリックス・キャンデラなどと列せられる
偉大な構造家の一人なのでしょう。
そしてセシル・バルモンド、サンチャゴ・カラトラバなどの現代の大家ががこれに続く。
まだまだ未熟故にピーター・ライスの構造エンジニアとしての個性が理解できた、
というより建築家と構造エンジニアの関係が明確になった...
というのが正直な感想。
建築家だけでは大規模でユニークな建築は建たない。
構造エンジニアの存在意義をこの本は教えてくれる気がします。
[ダ・ヴィンチ 手稿に基づく鳥人間の模型]※出典:ダ・ヴィンチ展図録
大学の共通教育の授業。
中村先生の特講Ⅲでは例のマシンガントークが冴え渡り、
2ヶ月前にしてすでに予定の授業内容が終わってしまい、
付録的な講義が突発的に行われております。
それはそれで面白いのだけど。
今回はレオナルド・ダ・ヴィンチがテーマでした。
ラファエロ、ミケランジェロと共にルネサンスの三大画家と称された芸術家。
同時に幾何学や人体、自然科学、飛行機などあらゆる分野に興味を示し、
膨大な手稿を残した優れた科学者である。
人類史上最も優れた人間の一人とも賞される天才の素顔とは?
...なかなか面白いテーマでしょ。
(出典:Wikipedia)
ル・トロネ修道院"ロマネスク" (磯崎新の建築談議)
磯崎新の建築談議第5巻。
第6巻がゴシックということで、第5巻はその前のロマネスク。
ル・トロネは世界で最も著名で代表的なロマネスク建築、というわけではなく、
磯崎氏の個人的な好みでピックアップされてるようです。
といっても、ロマネスクはゴシックのように強い共通性、というものはまだなく、
地域によって様式が微妙に異なるものらしい。
ゴシックが都市的で薄い壁で大面積のステンドガラスで覆われ、
大規模で天にも届かんとする高さを求めるものであったのに対し、
ロマネスクは主に田舎的で重厚な石壁で覆われ、
小さな窓から入ってくるわずかな光により内部が照らし出される
小規模で閉じたものであった。
分かりやすくいえば、
ゴシックは大聖堂、ロマネスクは修道院といったところでしょうか。
ちなみに「ロマネスク」とは直訳すると「ローマ風の」という意味らしいです。
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インタビュアー:五十嵐太郎、撮影:篠山紀信とのトリオで構成される
磯崎新の建築談義シリーズ全12巻。
篠山紀信ってこういう真面目な建築写真も撮ってたんですね...
難解な磯崎氏の文章を1巻から順に...と思っただけで
気が遠くなりそうだったので気に入ったテーマの巻から読むことに。
まずトップバッターは第6巻、ゴシック様式の代表格、シャルトル大聖堂。
バラ窓、シャルトル・ブルーのステンドグラスが有名ですよね。
ゴシック・ホラー、ゴシック・ロリータなど、
古典の一様式としてゴシックという言葉は一般常識程度に知ってたけど、
じゃあ実際どんな様式でどんな特徴があるのか、と言われると
明確には答えられない。
...ってなわけで読みました。