磯崎新の建築談義 #06【シャルトル大聖堂[ゴシック]】

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インタビュアー:五十嵐太郎、撮影:篠山紀信とのトリオで構成される
磯崎新の建築談義シリーズ全12巻。
篠山紀信ってこういう真面目な建築写真も撮ってたんですね...


難解な磯崎氏の文章を1巻から順に...と思っただけで
気が遠くなりそうだったので気に入ったテーマの巻から読むことに。

まずトップバッターは第6巻、ゴシック様式の代表格、シャルトル大聖堂。
バラ窓、シャルトル・ブルーのステンドグラスが有名ですよね。


ゴシック・ホラー、ゴシック・ロリータなど、
古典の一様式としてゴシックという言葉は一般常識程度に知ってたけど、
じゃあ実際どんな様式でどんな特徴があるのか、と言われると
明確には答えられない。


...ってなわけで読みました。


Chartres_1.jpg
(出典:Wikipedia)


ページを開いてみれば半分くらいがカラー写真と図面で意外と読みやすい。

正確にはゴシックとは中世ヨーロッパの美術様式。
時代的にはまず11-12世紀にロマネスク様式が誕生し、
次いで13-14世紀にゴシック様式が誕生、
そして15-16世紀のルネサンス様式へと流れていきます。

フランス、ドイツで発生し、イギリスに渡ってさらに展開していった。
ルネサンスの発祥地であるイタリアでは、
やはりゴシックに対しては反発感があるらしい。
ただ世界最大級のゴシック建築はミラノ大聖堂らしいけど。


簡素でシンメトリーだったロマネスク様式に対して
ゴシックはまさに「暴走」といった感じです。
適度な要素の反復はシンプルな美しさがあるものですが、
それが暴走して過剰になると「装飾」となり、豪奢になる。

ゴシックとはそういう暴走を侮蔑する意味合いをこめて
つけられた名称なのだとか。...これは意外だった。

また、より光をたくさん取り入れようとして壁を薄くし、
大面積のステンドグラスを採用する。
そのため壁の強度弱くなり、
その補強としてフライング・バットレス(飛び梁)を多用する。

屋根のヴォールトとこのフライングバットレスの過剰な繰り返しが
ゴシック建築の特徴のようです。

都市の庶民を全て受け入れ、彼らに神の世界を解放しようとするから
ゴシック建築は規模が大きく、長い年月をかけて
垂直性の強い高い建物が都市の真ん中に建てられた。

ロマネスクが修道僧の住居として小規模なものが
田舎に建てられたのと比べると対照的です。

過剰な暴走が度を超えたところで原点のロマネスクへ戻ろう、
という動きがルネサンス(再生)なんですね。


シャルトル大聖堂は聖母マリアを祭ったノートルダム大聖堂の1つ。
ノートルダム大聖堂で他に有名なものとしてはパリ、ランス、アミアン、
ストラスブール、そしてモネが描いたルーアンなどがあります。


...とまあ解説的なところはなんとなく分かるのですが、
磯崎氏や五十嵐氏のゴシックやシャルトル大聖堂への思い入れ、
考え方の記述となると難解になってくる。

まあ磯崎氏自体はゴシックはそれほど好みではないみたいです。


自分はゴシックはすごく好きです。
...といってもロマネスクやルネサンスの建築を
それほど知ってるわけではないのですが。

ゴシックを見たあとにモダニズムの建築を見るとなんか物足りなく感じてしまいます。
ミニマリズムももちろん好きなんですけど。

ゴシックは確かに豪奢だ。
でも派手とか、人の奢りとかそういうものは僕は感じない。
ロマネスクの暴走、といってもそこにはちゃんと秩序は存在し、荘厳さが存在する。

まあゴシック末期は確かに装飾が過剰だなあという気はしますが、
初期から中期のゴシックは低度なモニュメンタリズムがあると思う。


難解な磯崎氏の解説ですが、心に残る名言が1つ。

「建築の起源は(人間の)オーラである」

建築は人間を内包するプロダクトである。
建築という殻の中の「空間」というオーラに包まれて僕らは生きている。

母の胎内にいるように。