静寂 〜 一瞬のダイナミズム 〜【カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ】

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[希望号の難破(1824)](画像は大塚国際美術館の陶板画)


早いもので今週末は共通教育科目の前期末テスト。


西洋美術史Ⅱはルネサンス直後のマニエリスムにはじまり、
バロック、ロココ、新古典主義を経て、
フランス、ドイツ、イギリスの
3つの国のロマン主義を学んだところで終了。

ロココの軽薄さへの反動から登場した、
重厚でどっしりとした安定感のある新古典主義。

その新古典主義を継承しながらも、
心の奥底の感情表現が萌芽しはじめるのがロマン主義。

それはやがてバルビゾン派の登場に影響を与え、
クールベの写実主義を経て、印象派へと至る。


ロマン主義の代表的画家として
フランスではジェリコ、ドラクロワ、
ドイツではフリードリヒ、ルンゲ、
イギリスではコンスタブル、ターナーを学んだわけだけど、
自分のお気に入りはドイツのカスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(Caspar David Friedrich)。


自然の絶対的な静寂の中に神秘が宿る。
静寂でありながら光と影を明示的に使うことで
自然の厳しさ、躍動感を感じさせる。

真のダイナミズムとは、静寂の中の一瞬にあるのではないだろうか。



[Large Enclosure(1832)]


フリードリヒの絵の特徴は、近景は暗く、遠景は明るい。

それは「今は辛くとも、その先には明るい未来があるよ」という浪花節とも、
目の前は暗くとも、遠くに視線をやれば明るい世界もあるよ、という
「井の中の蛙、大海を知らず」的な教訓ともとれる。


まあ、いずれの解釈にせよ、彼の絵は静かで美しい。

どこまでも具象を描きながらも神秘的な雰囲気が漂う。



[樫の森の僧院(1809-10)]



[月の出を見守る男女(1830-35)]



[孤独な樹(1822)]



[雪の中の修道院の墓地(1817-19)]



[リューゲン島の白亜岩(1818)]



[山上の十字架(1807−08)]



[霧の海を眺めるさすらい人(1818)]