「ガウディ」と一致するもの

構造デザイン講義【内藤廣】

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内藤廣さんが東京大学で3年間行った構造デザインの講義をまとめた一冊。

構造デザインの入門書のバイブルと言っても過言でないくらい秀逸。
工学系の建築科、土木科の学生に向けての講義なので、
美大学生には多少分かりにくいところもなきにしもあらずですが、
少なくともこれまで読んだ構造デザインの本の中では一番分かりやすく、
構造デザインの意義、使命などを明確に伝えてくれるものだった。

マリオ・サルバドリの「建築構造のはなし」もすごく良いのですが、
現在活躍中の建築家による生の声は同じ時間軸であるだけに分かりやすい。


いわゆるアカデミズムによる知識のための知識ではなく、
建築家自身の経験による「生きた知識」なので、より説得力がある。
講義ではあえて「・・・という感じ」という主観的な表現を使い、
その後に「あなたにとってはどういう感じなの?」と学生に考えさせる。
デザインにとって必要なのは知識を詰め込むことではなく、
自ら「考える」ことによって感性を磨いていくことなのだ。


デザインこそは、土木であろうと建築であろうと、また他の工学分野にしても、すべてのエンジニアが持つべき能力だ。デザインマインドなくして社会は語れない。工学が社会と向き合うこと止めない限り、エンジニアにとって、デザインは必須の教養であり、必要不可欠の武器なのだと思う。デザインこそは、技術の周辺にあるのではなく、コアにあるべきものだと考えている。講義にはそういう信念を持って臨んだ。だから「構造デザイン」なのだ。若者達の頭のどこかにこのことを植えつけておけば、いずれそれは彼らが実社会の中で各々のやり方で活かしてくれるはずだ。そういうことを勝手に想像しながら講義をした。


本を読むだけでも、構造デザインの価値をこれだけ感じるのだから、
実際の講義はさらに有意義なものだったと思います。

受けてみたかったなあ...


古本屋

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昔は古本なんて見向きもしなかった。

誰かが手に触れた本などに価値はなく、新しいものにこそ価値があると思ってた。

...今思うとなんとも愚かしい幻想を抱いていたな。


時を経るごとに価値を失わない、いやそれどころか価値が増していくものこそ
後世に残っていくべきものなのだ。


自由が丘の古本屋で掘り出しものを見つけました。

a+uのガウディ特集本。
昭和52年発行ですでに絶版。
定価3,800円が1,500円。

すでにラッピングされていて中を確認できず、
さんざん悩んだのだけど、結局購入。


白黒写真が多いのが少し残念だけど、
カサ・ミラやカサ・バトリョ、サグラダファミリアなどの名建築の平面図まで載っていて
やっぱり買って大正解。

[ダイティンゲンのサービスエリア](出典:Google マップストリートビュー、撮影日2014年)


先日読んだ佐々木睦朗氏の本で知りました。

ハインツ・イスラー。
1926年スイス、チューリッヒ生まれの建築構造家。

トロハの影響を受け、ガウディの逆さ吊り理論を用いて1400ものシェルを作ったといわれる。

Wikipediaも英語版ドイツ語版くらいしかなくて情報が少ないのだけど。


代表作であるダイティンゲンのサービスエリアの写真はやはり僕を惹きつける。


...これこそ本質的な構造美だと。


FLUX STRUCTURE【佐々木睦朗】

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この本もなんとか夏休み終了前に読み終えました~

構造の大家、佐々木睦朗氏の著書。

お名前は前からちょくちょく耳にしていたのですが、
今回はじめて著書を読みました。

建築家独特の文章の難しさ、というよりは科学者、理論家独特の文章の難しさ。
それでもまあ建築家の文章よりはすっきりしてて比較的読みやすかったかな。

八王子での「構造力学」の先生が佐々木氏の下で仕事をしていたこともあって、
その仕事、作品についてもいくつか予備知識はありました。

せんだいメディアテーク金沢21世紀美術館、フィレンツェ新駅など。


建築マップ その2

建築マップその2(その1はこちら)。


今回は、

  ・オスカー・ニーマイヤー(14)
  ・ピーター・ライス(12)
  ・フランク・ゲーリー(11)
  ・エーロ・サーリネン(10)
  ・I.M.ペイ(8)
  ・アントニ・ガウディ(6)

...の6人。


...ほんの思いつきがここまでガシガシ作るとは思わなかった。


しかしGoogleマップはめちゃくちゃメモリを喰う。
メモリに余裕がない方はご注意ください。

建築マップ その1

やばい。

夏休みも終わりに近づいているのに、引きこもり癖、ぐうたら癖が抜けない。
この週末はコルビュジエ展や坂倉準三展、柳宗理展を見にいくか、
レポート課題をやろうと思っていたのにどこにも出かけず、何も手つかず。

まったく何もしていない、というのでは自己嫌悪で凹むので、
せめて家にいながらでも妄想で飛び回る作業をすることにしました。

ちょうどバイトでGoogleマップのマイマップ機能を使っているので、
それを使って、自分がこれから見てみたい建築を建築家ごとに
まとめてみることにしました。


これまで興味のある建築及び建築家をピックアップすることはあっても、
しょせん海外にあるから、ということでロケーションはとくに気に留めてなかった。
でも、よく考えたら建築ってロケーションに大きく左右されるもののはず。
また他のデザインと違って一つ一つの作品ごとに現地に行かなければ
「本物」を感じることはできない。


やはり現場に行かなければ。
どんなに遠くてもいつか行かなくては。


しかしGoogleマップはめちゃくちゃメモリを喰う。
メモリに余裕がない方はご注意を~

螺旋階段はなぜにかくも美しい?


"神が曲げたものを誰が直し得よう?" - 伝道の書


ガタカ」という映画が好きで何度も見ているのだけど、
エリートたちの集まる宇宙センター「ガタカ」が、
ライトが1963年に建てたマリン郡庁舎であることに最近気づく。

半世紀以上も前に建てられた建築が近未来の建築として通用する。
これぞ真の建築、というものではないだろうか。


即効性の派手な外見は時と共に流されてゆく。
真に価値あるものはゆっくりと時間をかけて目覚めてゆき、
一度目覚めればその価値は永遠に続く。

自分がガタカを好きなのは表面上の美しさではなく、
奥深くに潜む本質の美しさがにじみ出ているからだと思う。


建築の詩人、カルロ・スカルパ

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自分が今、建築的に一番興味がある国はスペイン。

ガウディトロハキャンデラ、...そしてカラトラバ

スペインには魅力的な建築家が多い。


しかし。

ブルネレスキ、ネルヴィ、ピアノ、...そしてスカルパ。

イタリアもなかなか。


今回はスカルパに注目。
最近知ったばかりでまだ彼の建築をよく知らないけど。

今回はキャンデラの作品集も手がけた齋藤裕氏によるTOTO出版の作品集と、
a+uの1985年10月臨時増刊号として刊行された作品集の2冊を借りた。


「建築の詩人」とはどういうことなのだろう...


Felix Candela―フェリックス・キャンデラの世界

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フェリックス・キャンデラ。

1910年スペイン生まれの構造家。
スペインで建築の基礎を学んだ後、ドイツ留学を目の前にしてスペイン内戦勃発。
フランコの敵対政権についたため、敗戦後メキシコへ亡命。
そしてこの亡命先で花開くわけです。


世界の現代建築の潮流を大雑把に分けると、
バウハウスに端を発するゲルマン系と、ガウディに端を発するラテン系に
大きく分けられると思うのです。
ちゃんとした根拠ではなく、あくまで僕の主観的な感じ方ですけど。

ゲルマン系はドイツの国民性に代表されるかのごとく、
スマートな直線で構成された白系統の建築で、
モダニズムの主流をいくもの。
中央ヨーロッパ、北欧、アメリカ、日本など「北方」がメイン。

一方ラテン系は、
ユニークな曲線でカラフルな建築で独創的。
スペイン、メキシコ、南米など「南方」がメイン。

北のスマートな建築も大好きだけど、
自分が本質的に好きなのは南の建築だと思う。

ガウディ、カラトラバ、ニーマイヤー、バラガン...
南の建築を代表する建築家はどれもどこかプリミティブなところがある気がするから。
しかし彼らは天才肌でもあるからなかなか真似しようとしても真似できないのだけど。

キャンデラも例に漏れず偉大な天才だったようです。

スペインで建築を学んでいた当時、すでに同じ国内で活躍していた
エドゥアルド・トロハに惹かれるも冷たくあしらわれ、
ドイツ留学が決まっていながらも内戦勃発でおじゃんになるという
不遇に遭いながらもそれを好機とするポジティブさ。
たぶんトロハに師事し、ドイツに留学していたら
その後の彼の名声はなかったのかもしれない。

彼自身新しい技術や素材を開発したわけではないけれど、
すでにあるものを活用して独創的でありながら汎用性のある建築を生み出した。
また当時発展途上だったメキシコでは設計だけの仕事はなく、
設計から施工までこなせなくてはならなかった状況が
彼をトータル的なオールラウンダーにした。

HPシェルにこだわり、
極限までその厚さを薄くしながらも強度を保ち、
全体の意匠としては曲線なのに基本要素は直線で構成できるので
独創的な形を生みながらも経済的である。
複雑な計算のみに頼らず、シンプルな数式から答えを見出そうとする一方で、
エンジニアにありがちな論理的思考最優先という考えではなく、
自身の「感覚」を大切にしようとするそのスタイル。


...まさにHPシェルの大家という称号がふさわしい。


HP面とEP面

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【HP面(Hyperbolic Paraboloid: 双曲放物線面)】

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【EP面(Elliptic Paraboloid: 楕円放物線面)】


モノの形をデザインしていく過程において、
伝統工芸などをのぞけばその多くは「量産性」を前提に考えねばならない。

直線はもちろん、曲線も幾何学的に計算で求められるものがのぞましい。
計算で求められるものは複製や改良が容易となるからです。
アートでは自由曲線ですむものが、
デザインでは曲線は幾何学的要素が求められる。
そこがデザインにおける造形の難しさであり、面白さでもある。
...と思うのです。

今回、課題に取り組むにあたり造形を参考書で検討していて、
自分が惹かれる造形要素にふと目が止まりました。


それがHP面とEP面。