木工先進地視察で北海道置戸町に行ってきました。
地域おこし協力隊の任期中、木工で地域づくりに取り組むに当たり、
先進事例に学ぶべく、さまざまな木工による地域づくり先進地を訪れました。
その中でも一番最初に知り、最も行きたかった場所。
それが北海道の置戸町で展開しているオケクラフトでした。
しかし、遠方であることからなかなか行くことがかなわず、
最後の最後になってようやく行くことができました。
今から30年前、公民館活動の一環としてオケクラフトはスタートしました。
木工の文化がほとんどなかったので、まずは木に関する本を集めることからはじめ、
その中に、工業デザイナーの秋岡芳夫氏に関するものが多かったことから、
秋岡氏に依頼して置戸に講演にきてもらい、地元の青年木工グループと交流を深めました。
その後秋岡氏の紹介により木工デザイナーである時松辰夫氏が地域に入り、
技術面での指南を受けながら置戸町での木工活動がスタートしました。
「オケクラフト」という名前も秋岡氏による命名です。
特筆すべきなのは、オケクラフトの推進が「生産教育」という概念を元に、
教育委員会主導で行われていること。木工職人を育てるための環境を用意し、
内外より人材を招き入れ、モノづくりに関する教育を施し、
自立していくまでのサポートを行っています。
さらにオケクラフトの活動を継続的なものとするための経済活動を民に委ね、
官の部分でできること(教育)、民の部分でできること(経済活動)を把握し、
官民の連携がきっちりと取れていることが素晴らしい。
[余市の海]
[羊蹄山]
その昔。
北海道はスキーでしか来たことがなかった。
パウダースノーを堪能できる、GWまで滑れる、という魅力以外、
とくに北海道の文化というものについて考えたことがなかった。
北海道に限らず、その頃は地域性というものを意識したことがなかった。
出発地点から到着地点に向かうその途中課程は、
とにかく最短で済ませたい時間だった。
瞬間移動が可能ならば、なくても良い時間だと考えていた。
今思うと、なんと人生をもったいなく消費していたのだろうと思う。
今回の北海道訪問はあくまで仕事の面接が目的だけれど、
そのための移動であっても、移動は移動。
移動は変化だ。
人間は変化を楽しむ動物である。
人生の楽しみとは、ゼロから作り出したり、
遠くにあるものを見つけに行くことだけではなく、
自分の身近にあるものの中から、いかにたくさんの楽しみを見出すか、
ということがまず根底にありきだと思う。
身近にある楽しみを見出すために、人は遠くへ旅する。
「青い鳥」を見つけるために。
車でモエレ沼公園、聖ミカエル教会をまわり、
時間も夕方になってきたので、ユースホステルへチェックイン。
日が落ちるまでもう少し時間がありそうだったので、
札幌市内を散策しよう、と思ったのですが。
自動車というものは散策には本当に向かない。
目的地に最短で向かうには最適な乗り物なのだけど、
そのスピードスケールは、人間の創造的思考を奪ってしまう。
自動車をホテルの駐車場に置いたまま、
地下鉄で札幌駅へ。
日は照ってるのだけど雪がぱらつき、
昼間は暖かった気温も、急激に下がってきた。
そんな奇妙な天気の中、日が落ちるまでの2時間ほどを
札幌駅からすすきのあたりまでを散策しました。
札幌にきたときに見ておきたかった建築が、
イサム・ノグチのモエレ沼公園のほかにもう一つ。
それがアントニン・レーモンドの札幌聖ミカエル教会。
1960年に完成、北海道に現存する唯一のレーモンド建築。
東京の聖オルバン教会を気に入った教会がレーモンドに依頼、
レーモンドは無償でこの教会を設計したという。
竹中工務店のギャラリー「A4」での展示でこの教会の見事な模型を見て以来、
いつかは訪れたいと思っていたのだけど、こんなにも早く訪れる機会がくるなんて。
...神に感謝。
モエレ沼から車のナビの誘導だったので、
正直地理はよく把握していないけれど。
聖オルバン教会のX字の斜め梁、
聖アンセルモ教会の祭壇に集光する折板状の壁。
ミカエル教会はこの二つの見事な教会の良いところが融合した、
とても素晴らしい建物だった。
≪遊園地を、単純な、不思議な感情を喚起する、形態と機能の入門書として、したがって教育的なものと考えたい。子供の世界は新鮮で明るく澄んだ、はじまりの世界であろう≫(ドウス昌代「イサム・ノグチ 宿命の越境者(下)」より)
※ガラスのピラミッド外観はこちら。
冬のモエレ沼公園で唯一内部空間を堪能できる場所。
それがガラスのピラミッド。
マスタープランを設計したイサム自身は完成を見ることなく他界。
今、目の前にある公園の姿はイサムがイメージしたとおりなのだろうか。
実設計、設計管理は川村純一氏をはじめとするアーキテクトファイブ。
アーキテクトファイブ自身についてはほとんど知りませんが、
川村氏は妻の川村京子とともにドウス昌代著のイサム評伝にも登場。
モエレ沼についてはあまり予備知識なしで行ったのですが、
今、記事を書くにあたってWikipediaなどを見て、「ふ~ん」などと思っていたりします。
まずこの公園はモエレ沼という沼に囲まれた公園だということ。
外周の先に見える水路は川ではなく、沼だった。
そしてここは札幌市街美化のためにごみを埋め立てられて作った公園だということ。
これにはちょっとがっかりかなあ。
人間のエゴを美化しているような気がして。
ここにきて、最初に見かけた山も、モエレ山、という人口の山なのだとか。
広島の平和記念公園同様、建築的魅力、というよりは、
ランドスケープ的魅力が目立つ空間のように感じました。
こうしてみると、建築ってやはり独特の表現手段のように感じる。
≪私にとって遊園地は、ひとつの世界を作りだすことを意味する。いわば理想の国を、縮小した形で建設することなのだ。それは、子供の背丈で、駆け回れる国である≫(ドウス昌代「イサム・ノグチ 宿命の越境者(下)」より
仕事の面接で北海道はニセコに行ってきました。
約束の時間に当日出発で到着することができないため、
札幌で前泊することに。
これはもう前日は観光するっきゃない、ということで、
朝早く東京を出て、10時ごろ千歳空港に到着。
最初はいつもどおり電車を使って移動しようかと思ってたのだけど、
さすが北海道はでっかいどう、接続が悪い割に金額もかかってしまう。
ちょっと調べると、楽天トラベルで、
往復の空港チケット+ホテル代+レンタカーつきでお得なパックがあったので
それを利用することにしました。
雪道はおろか運転そのものが久しぶりだったので、
ちょっと不安だったのだけど、
今後はなにかと車を運転する機会が増えることだし、
運転練習だと気を引き締めて、空港を出発。
一路札幌市内へ。
ナビ付だったので、慣れない土地でも不安なく目的地へ行けるのは便利だけど、
一方で、こうして人間本来の方向感覚は退化していくんだなあ、
...という一抹の不安も。
札幌で一番いきたかったのはイサム・ノグチの遺作、モエレ沼公園。
四国は香川県牟礼にある庭園美術館にも行ったし、
ニューヨークのノグチ・ミュージアムにも行った。
次はモエレ沼、と行ける日を待ち望んでいた。
ようやく念願叶って、行くことができたのだけど。
...そこはあたり一面の銀世界だった。
冬に行くところじゃないね。
それでも、イサムの目指した桃源郷が垣間見えた気がする。