島根県立美術館に行ってきました。
北九州市立美術館と福岡市美術館の所蔵品を展示する「夢の美術館」展が開催中でしたが、
一番の目的は菊竹清訓さんが晩年に設計した空間を見ることでした。
宍道湖畔に建つその建物は湖畔側、道路側ともに緩やかな弧を描いており、
水面と大地をつなぐ「なぎさ」をイメージしたものだそうです。
一歩その建物の中に入ると、天井にそのなぎさ仰ぎ見ることで、
あたかも水の中を優雅に闊歩しているような錯覚に見舞われる。
島根県立美術館は島根県立博物館の財産を継承する形で1999年に開館しました。
島根県立博物館(現・島根県公文書センター)も1959年にやはり菊竹さんが手がけました。
ほかにも島根県立図書館、島根県立武道館、田部美術館など、
松江には菊竹さん設計の建物がけっこうあるようです。
島根県立美術館では水を主題とした作品の収集に力を入れており、
開館20年に満たない若い美術館ながら日本近世絵画から19世紀フランス絵画や現代彫刻まで
4400点を越える規模にまでに成長しています。
福岡の2つの美術館所蔵品を展示する今回の企画展は予想以上に豪華な顔ぶれでしたが、
島根県立美術館のコレクションもこれに負けない豪華な顔ぶれでした。
しかもコレクション展に関しては撮影OKというオープンスタンスも嬉しい。
菊竹さんの作った素晴らしい空間にふさわしい展示内容で、
企画展と所蔵品展とを合わせてまさに「夢の美術館」でした。
水戸芸術館で開催中の藤森照信展に行ってきました。
2008年の松井龍哉展以来、じつに9年ぶりの水戸芸術館。
磯崎新が手がけたその空間は、相変わらずの存在感でした。
そして本展もそんな存在感溢れる空間に見合う、濃い建築の展示でした。
藤森さんの展示ですが2007年のオペラシティアートギャラリーでの展示以来、
10年ぶり二度目の鑑賞となります。
実際の建築も、ワイルドなその風貌はスマートな都会の街並みに合わないせいか、
地方に多いため、なかなか訪れることが叶わず。
昨年、ようやく神勝寺の中の「松堂」に訪れることができたくらい。
藤森さんの建築は、現在主流になっているモダニズムの延長にあるスマートな弥生式の建築とは
対極にある縄文式建築です。
できるだけ直線から離れ、幾何学から離れ、無機質から離れるオーガニックなものです。
ただ、それはモダニズムを知らないとか、嫌いだとか、批判するといったヘイト要素から
出発するものではなく、元は建築史家という立ち位置から過去の様式を研究し尽くした上で、
現在の延長線上の未来の建築がより良い姿であるように模索したものだと思うのです。
愛媛県新居浜市にある愛媛県総合科学博物館に行ってきました。
松山自動車道いよ西条インターチェンジから5分程度、自動車道そばの山中にあります。
メタボリズムの旗手の一人、故・黒川紀章設計により1994年(平成6年)にオープン。
巨大な幾何学図形のマッスの数々は圧倒的な存在感を感じさせる。
とくにエントランスエリアの巨大なガラスの円錐塔は、
ライトのグッゲンハイム美術館や、イサム・ノグチのモエレ沼のガラスのピラミッドなどとも共通する、
一種独特の哲学的な空間を構成している。
巨大な◯・△・□のマッス。
それは玩具の積み木のようでもある。
無機質で冷たい外観でありながら、
内部が子どもたちの笑顔で溢れているのは、
「つくるしあわせ」がそこにあるからではないだろうか。
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カーサ・ブルータスが選ぶ「いつかは行きたい!世界の名建築100選」。
...建築好きならば間違いなく興味が喚起されるテーマですよね。
数多ある建築群から限られた状況でどれだけ多くの名建築に巡り会えるか。
それは事前に知識として名建築を知っておくことにほかならない。
東京の会社を辞めて美大に行くことを決めたときから、
多くの情報をリサーチし、実際に訪れてもいるけれど、
次から次へと名建築は現れる。
まあ、それは幸せなことなんだろうけども。
自分の場合はどれだけ多くの名建築を訪れることができるか、ではなく、
死ぬまでに自分で思う究極の建築を一つ作るのが最終的なゴールではあるけども、
そのためにはやはりリサーチし続けなければならない。
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BIG SHED 「大きな小屋」
その名の通り大きな建物を集めた作品集。
洋書なので写真を見るのみですが。
大きな建物を、大空間を見るのは気持ちいいのはなぜだろう。
[東京国際フォーラム]
石材を、木材を、セメントを工事にうつし家屋や宮殿をつくる。これは建設である。知性の働きだ。しかし突然、私の心をとらえ、私によいことをしてくれ、私は幸福となり、これは美しいといったとしたら、これは建築である。芸術はここにある。(ル・コルビジェ『建築をめざして』)
自分が究極だと信じる建築を最低1つは創る。
これが僕の人生の目標である。
生きているうちに心から建てたい、と思う建築が1つでも建てられればいいのだけど、
仮に自由にいくつでも建てられるとしたら...という妄想は常にしている。
これは決して無駄な行為ではなく、
究極の建築を1つでも実現させるためにはとても重要なことだと思っている。
まずはイメージだ。
それを少しずつ段階を踏んで形にしていく。
...というわけで僕がつくりたいと思っている10ジャンルをピックアップしてみる。
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大学の助手さんの薦めで読みました。
タイトルのごとく現代建築に関する16のキーワードについて語るもの。
著者は東大・東大大学院卒の工学博士というエリート建築批評家。
別にエリートとか批評家というものを毛嫌いするわけではないのですが、
自分的にはあまり好きになれる内容ではなかったかな。
とは言っても建築家自身の言葉ばかりじゃ主観的な意見しか出てこない。
たまにはこういう建築家の周囲の声を客観的に聞くことも重要なのかもね。
キーワードごとに建築を語ることで、
自分の建築に対する考えを整理することもできるし。
建築とは多要素の集合体だ。
好きな側面もあれば嫌いな側面もある。
THE ARCHITECTS' JOURNAL: Victory in Vilnius for Hadid
(残念ながら現在はリンク切れ)
どうやらアブダビに続いてリトアニアにもグッゲンハイム美術館ができるみたいですね。
そのコンペにザハ・ハディドが優勝したとか。
世界各地に分館があるグッゲンハイム美術館は
フランク・ロイド・ライト設計のNY、
フランク・ゲーリー設計のビルバオ、アブダビとなど
美術館自体がアートであることで有名です。
このほかにもベネチアやラスベガス、ベルリンにもあるみたいですが、
こちらはどうやらオーソドックスなものらしい。
いつか全部の分館を制覇したいものです。
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研究室で借りたDVD。
世界で一番有名な建築家、フランク・ロイド・ライト。
コルビュジエ、ミースと共に近代建築の三大巨匠と称される。
彼は紛れもない天才芸術家であり、
その建築は見る者を魅了する。
しかしこのDVDはライトという人となりを好きにさせる作りにはなっていない。
「彼が作った建築は確かに素晴らしい。
でも人格はちょっとね...友達にはしたくないタイプだね」
このDVDを見た人はたぶんこう思うんじゃないだろうか。
女ったらしで家庭を省みず、
自らの天才ぶりを豪語して常に注目されていなければ気がすまない。
たとえ才能があろうとも、誰がそんな人を好きになるだろう。
しかしそれでも僕はライトとその建築を好きでいたいと思う。
建築は建築家の思想を表現するものだから。
彼の建築はやはり素晴らしいと感じるから。
グッゲンハイムや落水荘、マリン郡庁舎は本当に美しい。
フランク・ロイド・ライトという人を表現するものは
彼の生き方や人生ではなく、建築そのものなのでしょう。
だからこそ彼は巨匠なのであり、今なお建築界に絶大な影響を与え続ける。
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ミースに関する本をもう一冊読みました。
ここまできたらもう少し彼の建築を知りたい。
こちらはミースの下で働いた、ミースの日本人の弟子である高山 正實氏によるもの。
フランツ・シュルツによる評伝と比べるとボリュームは少ないものの、
その分簡潔にまとめられており、日本人が書いているということもあって
分かりやすかった。またシュルツの評伝では全ての作品写真が白黒だったのに対し、
こちらはカラーもあり、写真画質も良くて建物の様子が把握しやすいです。
シュルツの本と本書をあわせて読むとかなりミースカラーを
理解するためのと助けになる思います。
ミースは本を一冊も書きませんでした。
午前中は絵画、午後は彫刻、夜は建築、とマルチな才能を発揮した
コルビュジエとは対照的です。
建築を通してでしか真理を追究しようとしなかった。
その頑固で一途な姿勢が建築にも表れているような気がします。
雑誌や講話などにおけるミースの言葉と弟子や研究者たちによる評伝。
現在ではそれがミースを知るための唯一の手段。
彼は建築を通して真理を表現しようとした。
彼の天才性よりもその姿勢に惹かれるものがある。