建築家 坂倉準三展に行ってきました。
たぶんコルビュジエ展に合わせて開催なんでしょう。
本展は二部構成となっています。
神奈川県立近代美術館鎌倉
「モダニズムを生きる 人間、都市、空間」
パナソニック電工汐留ミュージアム(現・パナソニック汐留ミュージアム)
「モダニズムを住む 住宅、家具、デザイン」
鎌倉では比較的スケールの大きいものの展示、
汐留では比較的スケールの小さいものの展示という区分け。
師のコルビュジエ同様、家具から都市計画まで実に幅広く活動されていたようです。
鎌倉での展示がこの週末で終わってしまう、ということで
あわてて行ってきました。
汐留のほうは9/27までですがついでに行ってきました。
会場は離れてますが、横須賀線1本で移動できるので
意外とアクセスは楽です。
ル・コルビュジエの3人の日本人の弟子の一人。
その建築は有機的な曲線を多用したものだった。
まずは鎌倉。
会場である神奈川県立美術館(鎌倉)自体が氏の設計によるものですが、
しかしまあコルビュジエの国立西洋美術館によく似ている。
ピロティにより宙に浮いているような正方形の箱。
中央の中庭を取りまくように配置されたギャラリー。
コルビュジエの無限成長美術館の思想を忠実に受け継いでいます。
もっとも、国立西洋美術館が建ったのは1959年、
一方この美術館は日本で最初の公立近代美術館として1951年に建てられました。
つまりこの美術館のほうが先だったわけで。
コルビュジエが逆にこの美術館を参考にしたかもしれませんね。
実際コルビュジエがこの美術館を訪れている写真が展示されてました。
<追記>
神奈川県近代美術館鎌倉館は、鶴岡八幡宮からの土地の賃貸契約満了に伴い、
2016年3月末をもって閉館となりました。
当初は解体して更地にする予定でしたが、建物の文化的価値が認められ、
耐震補強工事を施した上で保存されることになりました。
良い話ですね。
ファサード。
中央の上り階段より2階のギャラリーに入ります。
ギャラリーは中央のレストエリアで分断されて2会場構成になってます。
美術館中央のコート。
2Fギャラリーが企画展の会場、
1Fが常設の彫刻作品の展示されています。
2Fギャラリーは撮影禁止ですがそれ以外はOK。
1Fに降りて。
透明な構造模型。
向かって右側ピロティが鶴岡八幡宮の池にせり出して
ちょっとした休憩スペースになっています。
ピロティからの池への眺望。
亀や鯉がいます。
ジャコメッティの彫刻みたい。
この会場では氏が手がけた公共建築、都市計画が紹介されています。
公共建築は曲線を多用した有機的な造形が見事でした。
佐賀県の体育館や出光興産のさまざまな給油所がとくに気に入った。
佐賀県の体育館なんかは丹下氏の代々木体育館に匹敵するくらい美しいと思った。
[佐賀県の体育館(現・市村記念体育館)]
渋谷や新宿西口などの都市計画は氏の仕事だったんですね。
当時とはだいぶ様子も違ってはいますが、
それでも核となる部分はその面影を残しています。
続いて汐留へ。
こちらは住宅や家具を中心とした展示。
コルビュジエの協力者であったシャルロット・ペリアンとも
深く交流があったとか。
グッドデザイン制度創設時の初代委員長だったんですね。
「民芸」という言葉を生みだした柳宗悦やその息子の柳宗理とも
交流を持ち、建築という枠に留まらず広くデザイン活動を行った。
多才肌だったんだなあ。
コルビュジエの日本での作品は国立西洋美術館のみだけど、
弟子たちによりコルビュジエの建築は浸透していたんだな。
個人的にはやはりスケールの大きい鎌倉での展示のほうが面白かったかな。
スケールが小さなものは時間の流れが速く、流行の影響を受けてしまう。
だからどうしても「古臭さ」を感じてしまう。
スケールの大きなものはゆっくりと時が流れる。
本質の良さが出やすく、長持ちする気がする。
鎌倉での展示のほうが古臭さを感じなかったのはそういうことではないだろうか。
2つの会場それぞれで図録が販売されていて、
面白かった鎌倉の展示の図録を買いたかったのだけどすでに売り切れ。
10月に第2刷が一般書店で販売されるとのこと。
これを待つこととしよう。
tadaoh
公式HPによれば、
残念ながら神奈川県立近代美術館鎌倉は2016年1月31日をもって一般公開を終了とのことです。
この建物はどうなってしまうのでしょうか。
モダニズム建築を代表するこの建築が取り壊されることなく維持されてゆくことを願ってやみません。