梼原に新しくできた図書館を見に行ってきました。
愛媛県との県境近くにある高知の山奥の町・梼原町には隈建築が6つもあります。
6,7年前の地域おこし協力隊時代に何度か訪れましたが、
その頃は隈建築は町役場、まちの駅、雲の上レストラン(ホテル)、雲の上ギャラリーの4つでしたが、
2018年に新しく図書館と福祉施設ができ、かねてより見に行きたいと思っていました。
とくに図書館は、太宰府天満宮参道のスターバックスや、サニーヒルズなどのように、
木材を斜めに組み合わせて配し、あたかも大きな樹の下で本を読んでいるような、
有機的な空間を実現しています。
まずは外観から。
木をふんだんに使っていますが、構造的には鉄骨造(一部木造)であり、
木は装飾として使われている感が強かったのが意外でした。
本音を言えばちょっとがっかり。
意匠として十二分に木のイメージは出ているのですが、
木は建物を根幹的に支えているわけではなく、あくまでサブ的な立場になっている気がしたから。
いよいよ中に入って。
まず目につくのはやはり斜めの筋交いによる樹木群。
圧倒的な「樹」の存在感。
それは確かにスゴイ。
あたかも森のなかの樹々の下で読書してるようなリラックスした雰囲気を醸し出しています。
ただ、よくよく見ると全体の空間に対して樹々の数は少なく、
一部構造を担っているにしてもその感じはあまり出ておらず、
装飾に留まっているのが少々物足りませんでした。
日本には美しい伝統木造建築が数多く存在しますが、
そのほとんどは直交の筋交いによるものです。
「直交」は効率的な工法には必要不可欠なものであり、
斜めに組むことはより高度な技術が必要とされます。
それでも隈さんがこの図書館や太宰府のスタバやサニーヒルズなどで
継続的に斜め筋交いに継続的に取り組んでいるのは、
より人間らしさを求める新しい木造建築の姿を模索しているからではないでしょうか。
直交だけじゃなくていいんだ。建築はもっと自由でいいんだ、
というメッセージを自分は感じました。
小さいですがボルダリングウォールもありました。
隣の体育館(隈建築ではありません)。
新施設は周辺との調和を意識しているのが伺えました。
まちの駅。
外壁の色合いが明らかに色褪せていました。
この建物は果たして悠久の時を乗り越えられるでしょうか。
町役場。
休庁日につき中には入れず。
お隣のゆすはら座(隈建築ではありません)。
雲の上レストラン。
よくよく近づいてみると木造であり、
木の朽ち具合が時の流れを感じさせますが、
意匠として古臭さは感じさせず、本質的な造形美を備えているのを感じます。
雲の上ギャラリー。
こちらも木が朽ちてかつての「目新しさ」はなくなっているもの、
本質的な造形美は相変わらずで、惹きつけられるものがあります。
新しくできた二つの隈建築は果たして永い時を超えられるか。
永い目で見守ってゆきたいと思います。
訪問日:2019年8月17日(土)午後
【Information】オフィシャルサイト
【開館時間】10:00〜21:00
【休館日】毎週火曜日ほか資料整理日、蔵書点検日