瀬戸芸夏会期2日目は朝から大島へ。
今回初上陸の大島は会場となる全12島のなかでも異色の存在です。
1909年に国の施策により、
四国・中国地方のハンセン病患者を収容するための施設が大島につくられました。
以降国がその施策の変更が転換するまでの約100年間、
島内では2000人以上の人々が亡くなりました。
今でこそ、ハンセン病はそれほど伝染性のあるものではなく、
早い段階で処置を行えば完治する病気として認識されていますが、
当時は「得体の知れない難病」として患者は社会から隔離されて遠ざけられました。
島内の患者は自由を奪われただけでなく、偏見と差別にさらされたのです。
その負の記憶をアートで伝えるべく、2010年から大島は瀬戸芸の会場となっています。
そういういわくつきの会場だったこともあり、
なかなか足が向かず、今回ようやく意を決して今回訪れたわけですが...
やっぱり行ってよかった。
高松港から船に乗ること30分ほどで大島に到着。
ちなみに乗船料は無料です。
島は逆L字状の形をしており、
北西方向に男木島、西に女木島、南東に庵治町を臨みます。
白いラインは歩道と車道を区別するものではなく、
目の不自由な患者のためのガイドです。
また島内にはエリアごとに二種類のメロディが流れており、
やはり目の不自由な人のためのガイドとなっています。
大島では瀬戸芸のボランティアサポーター「こえび隊」による
30分ほどのガイドツアーが開催されており、
ハンセン病や国立療養所「大島青松園」の歴史について学ぶことができます。
はじめて大島に訪れる際には参加されることをオススメします。
かつて患者が暮らしていた建物の中に作品が展示されています。
島で亡くなった患者たちが眠る納骨堂。
患者たちは身内に迷惑をかけないがために存命中は実名を隠して仮名を使い、
死んでもその骨を家族に引き取ってもらうこともできませんでした。
浮かばれない魂が島内に彷徨っているのでしょうか。
教会。
島内にはキリスト教の他にも仏教、神道、金光教などさまざまな宗教施設がありました。
さて、ガイドを受けていよいよ作品鑑賞へ。
os01.田島征三「青空水族館」
悲しげな人魚は閉じ込められた患者たちの象徴か。
刀を振り上げる海賊は、患者を閉じ込めた不条理な社会の象徴か。
os02.田島征三「森の小径」
解剖台
os03.田島征三「Nさんの人生・大島七十年 −木製便器の部屋-」
結婚してやんがて子どもができたがよ。
本当は嬉しいことやのに、つらいかなしいことばかりやった。
タタミの上で寝ゆうに、全身予防服で身をかため土足で上がってくる。
ピンセントでクスリを渡すし、こちらからわたしたものは消毒液にひたして...
os04.やさしい美術プロジェクト「稀有の触手」
青一色に塗られた部屋。
壁の上方には太陽が上り...
引き出しを開けると白い月が現れる。
隣は入ることのできない白い部屋。
外の世界に出ることができなかった患者たちの夢の世界。
os05.やさしい美術プロジェクト「つながりの家 Gallery15 海のこだま」
外の世界に出てゆくことのできる船は自由の象徴だった。
os07.山川冬樹「海峡の歌/Strait Songs」
対岸の庵治町まで泳いで脱走する人も少なくなかったとか。
島の模型の上方のモニターには泳いで庵治町に向かう映像が流れ、
スピーカーからは患者たちが作った詩を対岸の庵治町の子どもたちが朗読する声が流れる。
os08.鴻池朋子「リングワンデルング」
青松園青年団が見よう見まねで作った岬の散策路を巡る。
「風の舞」という名の火葬場。
大島の中心にある大島会館。
単なる休憩所にしておくのはもったいない。
ここにも作品を展示してほしいなあ。
午前中いっぱいかけて作品を見て回り、最後は社会交流館のなかにあるカフェで一休憩。
ウメサワーが疲れた身体に染み渡る〜
アートでできることはなんだろう。
その問いに対するヒントがここにはある。
訪問日:2019年7月28日(日)午前