くまのもの ー 隈研吾とささやく物質、かたる物質【東京ステーションギャラリー】

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訪問日:2018年4月17日(火)


おおよそ2ヶ月前の話。

出張で久々に上京しました。
最終日は移動のみで飛行機の時間が夕方だったので、
その待ち時間を利用して、久々のアート巡り。
...といっても2スポットのみだけど。

まずは東京ステーションギャラリーで開催中だった建築家・隈研吾の展示。
9年前に開催されたTOTOギャラリー「間」での展示以来二度目。
9年前でもすでにかなり有名だったとは思うのだけれど、
個展の範疇を超えない小規模だったのに対し、
今回は一流のアーティストとして見応えあるボリュームで楽しむことができました。


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今回の展示のテーマは「マテリアル」。
隈さんの建築といえば、
シンプルなユニットが繰り返されることでユニークな全体像が形成されるのが特徴的ですが、
それはまさにマテリアルを編み込んでいく、「建築を編む」という表現がしっくりくる。
本展では各マテリアルごとに様々に建築が編まれていく様子を見ることができました。


【竹 bamboo】

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[香柱]

香り立つ竹の柱...らしいが、香りはしなかったな。


【木 wood】

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[スターバックス太宰府天満宮表参道店]

自分も木工造形の実験をやってみて実感しているのだけど、
斜行グリッドは直行グリッドに比べてはるかに造り難い。
そこまで手間を掛けて斜行グリッドを用いるメリットはどこにあるのか?
その辺がいまいち自分にはまだ見えてこない。
安定性で言えば直行グリッドにはかなわないだろうし、
単なる見た目の装飾性だけならばいずれインパクトも薄れ、弱くなる。
隈さんのこの実施例においても、斜行グリッドにすることで、
細長い敷地にある店内の奥へ奥へと顧客を引き込む「流動性」を生む効果がある、
というのはなるほどな、という納得感がある一方で、
「それだけ?」という物足りなさもある。
隈さん自身もまだまだ斜行グリッドについては実験要素の域を出ていない気がした。


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[サニーヒルズジャパン]

スターバックス太宰府天満宮表参道店のダイアゴナルな立体格子を90度向きを変えて、
3階建ての建物を支える積層型の構造システムへと転換したもの。
スターバックスのときよりも格子接続部分の強度がより求められるため、
より実現が難しかったのでないだろうか。
スターバックス同様見た目のインパクトはスゴイが、
建築としての空間の中途半端さはスターバックス以上に否めない。


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[檮原 木橋ミュージアム]

一本足という不安定要素がありながらも、先のダイアゴナルな立体格子に比べて
やはり直行グリッドは安定感がある。
愛媛との県境にある山間の町、梼原町には隈さんの建築がこのほかにも4つある。


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[TAO]

台湾にある寺院らしいけど、これが全体像なのか、
はたまた屋根部だけ抽出してその断面を見せているのか、
その辺の情報がないのが残念。
造形は美しいのだけど。


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[木霊 / KODAMA]

欠き込みをつけた木の面材を組み合わせて様々な全体像を構築できる、
まさに「積み木の建築」。


KOMOREBI シャトー・ラ・コスト
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二次元の画像(写真)では全体像がなかなか把握しにくい、
三次元にしか表現できない造形。


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[新国立競技場整備事業]

隈さんのこの国立競技場も悪くないと思う。
でもやっぱりザハの国立競技場が見たかった。
言葉では言い表せない魅力、言葉による説明の要らない魅力、
それを受け入れる度量のなさ。
だから日本人は型にはまった建築しか作れない。
型にはまった建築しか受け入れられない。


【紙 paper】

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[ペーパーコクーン]

紙の建築といえば、紙管を使った坂さんの建築が有名だけど、
隈さんもやってたんですね。


【土 earth】

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[虫塚]

養老孟子氏発案により鎌倉の建長寺の境内に立つ虫を供養するためのモニュメント。
ステンレス製のメッシュに左官職人が現地の土を吹き付けた。
時間の経過とともに苔を生じ、大地と同化していく。
「編む」というのとは違うけれど、
「大地との同化」というテーマにおいては亀老山展望台に通ずるものがある気がする。


【石 stone】

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[ちょっ蔵広場]

比較的強度の弱い大谷石をあえて不安定感のあるダイアゴナルな格子で編む。
チャレンジフルな美しさ。


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[ストーン カード キャッスル]

安定の六角形を不安定なトランプのカードキャッスルで表現する面白さ。


【瓦 tile】
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[中国美術学院民芸博物館]

浮遊する瓦。


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[セラミッククラウド]

文字通り「セラミックの雲」。
浮遊するセラミック。


【金属 metal】

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[ポリゴニウム]

「ストーンカードキャッスル」の金属板。


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[北京 前門]

「透明なレンガ」で北京の古い町並みを覆う。
古きを温め、新しきを知る。


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[Le Nuage d'Alminium]

いまだによくわからないテンセグリティ。


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[渋谷駅街区 開発計画]

建築ならではの造形。


【樹脂 resin】

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[浮庵 Floating Tea House]

浮き風船を世界最軽量の布「オーガンザ」で覆うことで生まれる宇宙。


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[織部の茶室]


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[Water Branch House]


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[てっちゃん]

廃材となったLANケーブルで作られたカラフルな雲。


【ガラス glass】

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[Yakisugi Collection]

ガラスに焼杉のテクスチャーを刻み込む。
コピーではなく、世界で唯一つのテクスチャーを。


【膜・繊維  membrane・fiber】

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[カサ・アンブレラ Casa Umbrella]

傘のフラー・ドーム。


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[小松精練ファブリックラボラトリー fa-bo]

耐震補強という保守的で脇役的な存在を、
柔らかいカーテンで建物の周囲を優しく包み込む。
建物の一脇役ではなく、
主役の建物を食ってしまうほどの存在感あるものとして表現しているところが面白い。


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[品川新駅(仮称)]

日本の駅はダサい。
この駅はその恥ずかしい常識を覆してくれるだろうか。