かもめ食堂のシナモンロール

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いつか自分の工房を持ちたい。

それが僕の最近のもっぱらの夢である。
そしてのんびり自分の創りたいものを創りつづける。

ヒット商品とか、流行品とか、そういうものにはとんと興味がない。

そういった類のものは、だいたい自分以外の巨大な力の影響を受けて、
自分の力の及ばないものになってしまう気がする。

別にそういったものすべてが悪だとは言わないけれど、
僕はそういうものづくりはしたくない。


かもめ食堂」開店当初の1ヶ月間、一人も客が来なかった。
宣伝活動をして客を呼ぼう、というミドリにサチエは言う。

「"レストラン"じゃなくて"食堂"です。

 もっと身近な感じっていうか...

 店の前を通りがかった人がふらっと気軽に入ってきてくれるような。

 毎日真面目にやってれば、そのうちお客さんも来るようになりますよ。」

大切なのは客の数じゃない。
どれだけ自分の店を、作品を愛してくれるか。
そしてどれだけその人たちの愛に応えることができるのか。
  
なまじ欲をかいてもっとたくさんの人に、なんて思ってしまうと、
自分の愛は自分から離れていってしまう。
自分から離れた愛は、もはや自分ではない。
愛には限りがあるのだ。

無限の愛を持つのはただ一人、神のみである。

人は手のひらいっぱいの愛を慈しむだけで幸せになれるのだ。
自分の手のとどく範囲で頑張ればいいのだ。


...前置きが長くなってしまったど。


木での基本ユニットが完成した。


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当たり前だけど、模型はスケールが小さくなるほど、「ごまかし」が大きくなってしまう。
今回スケールを大幅にアップしたものを作ってみてはじめて、
小さい模型レベルでの「ごまかし」がクローズアップされた。

そして自分が創ろうとしている「かたち」の本当の姿が見えてきた。

正直なところ、現時点でこの木の基本ユニットは失敗作である。
中間審査まで一週間の時点で改善の余地大ありである。

しかし現実の世界に触れることのできる「かたち」を生み出すのはやっぱり楽しい。


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なんのためにこの「かたち」を作るのか。
最終的にこの「かたち」をどこに導くのか。

自分でもそれが分からないまま、作っている部分がある。
自分でもよく分からないのにどうして他人にその「かたち」の本質が伝わろうか。


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ここ3日は重労働だった。

創るもののスケールがアップすると、作業量も当然アップする。

木をヤスリでやすり、ウェスで磨き、ニスで保護する。
そして再度ヤスリでやすり、ウェスで磨く。

ひたすら単純作業だが、この単調さが心地良かったりする。

ものづくりの楽しさとはこういうものなのだろうか。
その楽しさと苦しさとは表裏一体なのだろうか。


毎日真面目にやってれば、そのうちきっと見つかる。
かもめ食堂のシナモンロールが。
そしてすべての席が埋まる。