ル・コルビュジエ展 建築とアート、その創造の軌跡【森美術館】

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ル・コルビュジエ。
ミース・ファン・デル・ローエ、フランク・ロイド・ライトと共に近代建築の三大巨匠と評されるスイス出身、主にフランスで活躍した建築家。

森美術館で開催中のコルビュジエ展に行ってきました。
ちょうど大学でもちょこちょこ出てくるキーワードだったのでタイムリー。

チケットは通常学生料金1,000円のところ、
モネ展の半券で100円引きの900円でした~
ちなみにフランク・ゲーリーの映画の半券でも100円引きです。


グレゴリー・コルベール展以来の久々の森美術館。
国立美術館クラスに比べるとそんなに規模は大きくないはずなのに、
10時過ぎに入館し、全部観終わってでてきたら14時過ぎ。
実に4時間も観てたわけで。


それくらい面白かった~!


会場は10のセクションで構成。

  • section 01 アートを生きる
  • section 02 住むための機械
  • section 03 共同体の夢
  • section 04 アートの実験
  • section 05 集まって住む
  • section 06 輝ける都市
  • section 07 開いた手
  • section 08 空間の奇蹟
  • section 09 多様な世界へ
  • section 10 海への回帰

会場内は撮影禁止なので、画像はWikipediaとル・コルビュジエ財団公式サイトから拝借しました。

section 01 アートを生きる
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[赤いバイオリンのある静物(1920年)](出典:ル・コルビュジエ財団公式サイト)

画家としてのコルビュジエの絵の展示。
建築家として有名な彼ですが、生涯を通じて
1日のうちの午前中は絵画に費やしたほどの画家でもありました。
ピカソに代表されるキュビズムを批判し、ピュリスムという絵画様式を唱える。
ピカソの絵の一つ一つの細かい要素を幾何学模様化し、
規則正しく整列させたような絵。
好みの問題もあるのでしょうが正直僕は好きになれない。
この絵がどのようにしてあの建築群に繋がるのか想像もできません。


section 02 住むための機械
Charles-Édouard_Jeanneret_(Le_Corbusier),_1914-15,_Maison_Dom-Ino.jpg
[メゾン・ドミノ](出典:Wikipedia)

建築家としてのスタート期の作品などが展示。
ル・コルビュジエというのは実はレスプリ・ヌーヴォーといった雑誌などで
建築論を語るときに使ったペンネームだったんですね。
本名はシャルル・エドゥアール・ジャンヌレというそうです。
ペンネームを持つ建築家も珍しい。

彼の建築家としてのスタート期であるだけに
その建築の原点のエッセンスとでいうべきものが詰まってます。
まずは新しい建築のための5つの要点。


 「ピロティ(柱)」
 「屋上庭園」
 「自由な平面(フリー・プラン)」
 「水平に連続する窓」
 「自由な立面(フリー・ファサード」


これらの要素が見事に取り入れられているのがパリ郊外のサヴォア邸。

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(出典:Wikipedia)

サヴォワ邸は外見上は地味な建物なのですが、中はすごくユニークな造り。
CGを駆使した内部解説も見事。
実物がすごく見たくなりました。

ル・コルビュジエは建物のみならず、椅子や机などの家具のほか、
なんと車までも設計していました。
最小限の車体で最大限の利用価値を得られるという最小限自動車で
「マキシマム」と名づけられたこの車はあまりにも斬新過ぎて実現せず、
会場には設計図を元に作られた1/2模型が展示されていました。
今見てもけっこう斬新なデザインした。
家具のほうは現在でもLCシリーズと呼ばれるソファがカッシーナ社で
ライセンス製造されていて、会場にもサンプルが置いてあったので
座ってみたのですが長椅子はすごく座り心地がいい。
しかし値段は数十万単位とめちゃくちゃ高い。


section 03 共同体の夢
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[ソヴィエト・パレス](出典:ル・コルビュジエ財団公式サイト)

section 03では公共建築物の紹介。
建築対象が小さな住宅からより大規模な公共建築物へ。
ただ当時はあまりにもそのデザインが斬新的過ぎて実現しなかった。

とくにソヴィエト・パレスは圧巻。
模型展示とCG画像が上映されていたのですが、
現在の建築と比較してもなんら遜色ない見事なものでした。
政治的な理由で建設が却下されたのは残念。
ここまでCGで再現できるのならどこかに立てればいいのになあ...


section 04 アートの実験
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[イコン(1953年)](出典:ル・コルビュジエ財団公式サイト)

section 04は再びアートの紹介。
初期のピュリスムから脱却し、シュルレアリスムに接近。
以前の幾何学的な要素がなくなり、曲線が多くなりますが、
やはり個人的には好きになれない。ピカソに比べると面白みがない。
ここではパリのアトリエが実物大で再現されていました。


section 05 集まって住む
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[ユニテ・ダビタシオン(マルセイユ)](出典:ル・コルビュジエ財団公式サイト)

section 05はユニテ・ダビタシオンに代表される集合住宅の紹介。
モデュロールという単位系が面白かった。
メートル法は万物の大きさを測る共通の尺度で便利ではあるけれど、
人間の快適性までは測れない。コルビュジエは人体の各部の寸法を基本単位にした
単位系、「モデュロール」を提案し、このマンション設計に取り入れています。
黄金比までも取り入れたこの設計法は人間工学を研究しつくした上での
究極のデザインといえるかもしれませんね。
ピロティや屋上庭園などここでも「新しい建築のための5つの要点」が
取り入れられています。

ユニテ・ダビタシオンの1戸分の原寸大再現セットが展示してあり、
その快適性が体験できます。やはり現在のマンションと比較してもなんら遜色ない、見事なものです。


section 06 輝ける都市
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[アルジェの都市計画](出典:ル・コルビュジエ財団公式サイト)

section 06はかの有名な著書「輝ける都市」がそのままタイトルとなってます。
建築対象の巨大化はとどまるところを知らず、ついには都市そのものまでも
デザインしちゃいます。その多くはやはり斬新的過ぎて実現しなかったものが
多いですが、アルジェの都市計画での住宅(マンション)の上を高速道路が走る、
という構想は今聞いてもとても斬新で、土地の有効活用に繋がる気がする。


section 07 開いた手
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「開かれた手の碑」(出典:Wikipedia)

section 07は唯一実現した都市計画、インドのチャンディガールの都市建設の様子が
模型と映像で紹介されていました。
高層ビル群までは実現しなかったものの、一つの都市を創ってしまう、という
そのスケールの大きさに脱帽です。


section 08はル・コルビュジエが建設した3つの宗教建築の紹介。

まずは最も有名な作品の一つである「ロンシャンの礼拝堂」。
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(出典:ル・コルビュジエ財団公式サイト)

建物があたかも歪んでいるか、傾いているような感のする
不思議な曲線を多用した建物。見ていて飽きません。


2つ目は「ラ・トゥーレット修道院」。
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(出典:ル・コルビュジエ財団公式サイト)

こちらはうって変わって厳格な幾何学的構成。
ロンシャンの礼拝堂を見た後ではちょっと地味で味気ないですね。


3つ目がフィルミニのサン・ピエール教会。
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(出典:Wikipedia)

この教会はコルビュジエの没後、その助手の仕切りにより
2006年にようやく完成したもの。
とんがり帽子のような屋根が特徴的。


section 09 多様な世界へ
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国立西洋美術館

section 09は海外のコルビュジエの作品群。
日本での唯一のコルビュジエ建築である国立西洋美術館、
ハーバード大のカーペンター視覚芸術センター、
チューリッヒのル・コルビュジエセンター、
フィルミニの文化の家などが紹介されています。

上野の国立西洋美術館って彼の設計だったんですね...


section 10 海への回帰
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[小さな休暇小屋(カップ・マルタン)](出典:Wikipedia)

section 10は晩年のコルビュジエ。
住宅から果ては都市まで極限まで巨大化していったコルビュジエの建築も、
晩年に到達したのは「カップ・マルタンの小屋」と呼ばれる
妻イヴォンヌへの誕生日プレゼントとして建てた小さな小屋。

実物大のセットが置いてあったのですがそこはまさに
都内の一人暮らしの若者が住むような部屋。
この小さな部屋にも"モデュロール"が取り入れられています。
そこに彼はなにを見出したのでしょうか。
よくは分からないけどなんとなく幸せな気分になれた。
それがきっと彼が生涯をかけて追求してきたものなのだろう...

コルビュジエは1957年にイヴォンヌが死んだ後もバカンスやクリスマスの度にこの小屋を訪れ、
1965年にカップ・マルタンの海で海水浴中に心臓発作を起こし、帰らぬ人となりました。

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[カップ・マルタンの海を臨むコルビュジエの墓](出典:ル・コルビュジエ財団公式サイト)


最後に図録購入。
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3,990円とちょっと高めだったけどとてもいい展覧会だったので。
とても満足したので。
コルビュジエがますます好きになったので。


ああ、でも。
ますます本物を見たくなったなあ。
フランス行きて~。