バイト先での昼休み。
「ミース再考」を読んでいたら、
バイト仲間が「こういうの好き?」と親切にも貸してくれた雑誌。
芸術新潮2009年6月号。
フィリップ・ジョンソン特集。
代表作「ガラスの家」くらいしか知らなかったので、とても勉強になりました。
金持ちの御曹司で、若くして莫大な財産を相続。
最初はMoMAのキュレーターとしてスタート、
かの有名な1932年の「モダン・アーキテクチャー」展を手がける。
30代でハーバード大で建築を本格的に学び、建築家としての遅いスタートを切る。
ガラスの家は、自分の広大な敷地に道楽で建てた建築群の1つだったんですね。
性格的には熱しやすく冷めやすい、新しもの好きで飽きっぽい。
モダニズムに傾倒していたかと思いきや、
後にはポストモダニズムの旗手となったり。
それでも彼が巨匠であれたのは、
本質的な「良さ」を本能的に見抜く力に長けていたからだろうか。
ガラスの家の中にはミースのバルセロナ・チェアが置かれているのですが、
その配置はガラスの家建設当時からずっと同じであり、
定規できっちり位置が決められているのだとか。
ものごとには変えるべき所と、変えてはならない所がある。
フィリップ・ジョンソンはその見極めの手腕が絶妙な建築家だった気がする。
ネットで作品画像を拾ってみました。
まずは代表作「ガラスの家」。
ニューケイナンの自邸内にあります。
ミースの「ファンズワース邸」に影響受けての作品かなあ、と思いきや、
こちらの方が先なんですね。(ファンズワース邸は1951年)
ガラスの家の向かいに建つ「レンガの家」。
実際はレンガ造りではなく、木造、というのががっかりなのですが、
ダブルスキン気味の内部空間は美しい。
広大な自邸敷地内には美術館まであったようです。
小ぶりな丘の地中にあり、
巨大な本のページをめくるような見せ方が面白い。
ゲーリーチックなこんな建物も。
東京ドーム4個分に相当する広大な敷地内には上記を含む10の建築群が点在している。
現在は一般公開されているようなので、いつか訪れてみたい。
自邸内の作品以外にも多くの名作があります。
僕のお気に入りは宗教建築群。
(出典:Wikipedia)
巨大なガラスのカテドラル。
宗教施設としてはちょっと光を取り込みすぎのような気がするけど。
続いて聖バジル教会。
モスクのような半球状ドームに貫通する大壁。
もう一枚のめくれる壁。
安藤忠雄の光の教会、サーリネンのMITチャペルに
なんとなく通ずるものを感じるのは僕だけだろうか...
3つ目はサンクスギビングスクエア。
有元利夫の「花降る日」を実現したみたいな外観。
正確には宗教建築ではないみたいですが。
内部のステンドガラスの螺旋が美しい。
似たような形状のビルがニューヨークにも。
MoMAとは縁が深く、その彫刻庭園を手がけています。
MoMAには2007年に一度訪れたのですが、
なぜか庭園の存在にまったく気づかなかった;;
そしてAT&Tビル(現ソニービル)。
[AT&Tビル(現ソニービル)(ニューヨーク、1984年)]
フィリップ・ジョンソン設計とは知らずに訪れていました。
彼の建築群は確かに美しく、素晴らしい。
しかしコルビュジエ、ライト、ミースの三巨匠ほどのカリスマ性、というか
より厳格な本質、というものは見えてこない気がする。
金持ちに良い建築ができるだろうか。
道楽で良い建築ができるのだろうか。
満たされる者に貪欲さはない。
追求者は貧に足りてこそ、その目的を達することができる。
現在の建築は自然から切り離される存在である。
巨大であればあるほど、存在するだけで巨悪である。
そういうものを創るときは、慎重であり、ストイックでなければならない。
富みにまかせて道楽で作って良いものではないのである。
はたしてジョンソンはどういう姿勢で建築に取り組んでいたのか。
本誌中で紹介されていた「フィリップ・ジョンソン著作集」を読めば、
少しはその答えが見えてくるのだろうか。
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