MASTERキートン (5)

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MASTERキートン第5巻。

Amazonではオリジナル版はおろか新装版さえも
買えなくなってますね。

今なお人気のコミックということでしょうか。
全巻オリジナルをもっているとけっこうなプレミアになるのかな...

いまのところ売る気はさらさらないけどね。
なんたって僕にとっては人生の書ですから。


さて、今回のピックアップストーリーは。

Chapter3「無関心な死体」

今回は2つのポイントをピックアップ。
まず最初のポイントは人生訓というよりは、
今の僕の状況にスゴク共感した部分。


ロンドンの人通りの往来で、倒れている青年。
しかし彼にさしのべる手はなく、雑踏の中にいながらして、
誰にも気づかれず息を引き取る...

青年の母親に依頼で青年の死因を調査するキートンと、
事件を取材する女性キャスター、アリスとのやりとり。

まずキートンと出会った直後のアリスの台詞。

「私、大都会は嫌い・・・ 都会は人間を、ダメにすると思うのです。たとえば・・・ ここ(英ヨークシャー地方)にはロンドンやニューヨークのような、麻薬患者や不良たちはいないわ。教会を中心にした温かい交わりが生きていて、お互いに気を配り合っているから・・・ 私も故郷に帰りたい・・・ 〜(中略)〜 おかしいとお思いでしょ?大都会が嫌いと言っていて、ロンドンの真ん中に住みこんな仕事をしてるなんて・・・ 私、ちょっと意地になってるのよ。 〜(中略)〜 でも、いつかきっと故郷に帰るの。」

その後事件が解決に向かい、
二人で並んで歩いてるときのキートンの台詞。

子供の頃、両親が離婚して、東京からこっち(ロンドン)へ越してきたんです。隅から隅まで石でできた街・・・ 空はなく、友達はいなくて、毎日毎日、東京へ帰りたいと思っていました。・・・ところがちょうど今頃の季節・・・・ ミゾレでも落ちて来そうだった空が突然晴れて・・・ 急に空が高くなり、建物の石壁が、みるみる暖かみを増したのです・・・・ まるで、私を抱きかかえるように・・・・

晴れ上がる空。
london_sky.jpg
[ネットで拾ってきたロンドンの空]
二人が見た空もこんな感じだったのでしょうか...

そしてキートンのひとこと。

「ロンドンも、捨てたもんじゃないでしょ?」


都会は魅力がいっぱい。でも危険もいっぱい。
だから無関心の鎧で身を固める。
それは人間の「逃避本能」。
でも時にその本能の鎧が人を傷つける。
そして鎧が厚くなればなるほど自分自身が身動きできなくなる。
その鎧の重さに耐えきれなくなって倒れたとき、
助けてくれる人がいるのだろうか。
そう考えるとコワクなる。

でも毎日が晴れ空なら晴れ空のありがたみは感じないだろう。
たまの晴れ空だから感動がある。

結局のところ、自分の居場所は環境で決まるもんじゃない。
自分の「芯」が居場所を決める。

アリスの「でも、いつかきっと故郷に帰るの。」という
気持ちも分かる気はする。それはきっと人間の「帰巣本能」。
田舎に生まれた僕は田舎に帰るべきなのか。


2つ目のポイント。
青年の過去を知る神父の言葉。

「"僕は悪い子です。お母様より、犬の方が好きな時がある"と告解を求めたのです。理由は"犬はため息をつかないからだ"・・・って言うんです」

アリスの台詞。

「私もよく娘たちに言われるの。何か注意する時、ため息をつかないでって・・・ ため息は知らず知らずのうちに人の心を傷つける・・・・」

人を傷つけまい、と思っていても時に人を傷つけてしまう。
知らず知らずのうちに傷つけることもあるのならば、
僕らはいったいどれだけ他人を傷つけているのだろう...
そう考えるとなおさらコワクなる。


生きるって難しい。
でも生きることにけして失望してるわけではありません。
その難しさが、「楽しさ」だと思える。
それは生きることに「希望」を持っている、ということではないでしょうか...