翻訳じゃなく、オリジナルの村上作品初読み。
友達からは暗いかも、と言われてたけどこの作品はそうでもなかった。
タイトルは暗いけどね^^;
物語はタイトルどおり暗くなった後の深夜に生きる人々の物語。
日付が変わる午前零時から1日が始まる朝の7時くらいまでの
それぞれの様子を客観的に眺める「わたしたち」の視点で語られていく。
お互い面識にないような人々が微妙な接点でつながっている。
なんのためにこのような人のつながりを描いているのか、
最初はよく分からないまま、いや、最後まで分からないままだけど
読み終わってみるとなんか作者がいいたかったことが分かるような、
そんな気がする不思議な物語。
美人の姉を持つ妹。
その姉妹に一度会ったか会わないかのバンドマンが妹と再会。
一方で姉は眠り続ける。
一方で姉はどこだか分からない場所にさらわれる(さらわれているのか?)
中国人の売春婦を殴るエリートサラリーマン。
そのホテルで働く女子プロ上がりの女マネージャと
過去から逃げ続けなければならない店員たち。
...小説としては奇妙なほど矛盾を感じるそれぞれの人生。
でも現実世界をそっくりそのまま描写している、と考えればそれほど
不思議でもない。
物語の流れよりはそれぞれの逸話の中に隠されているメッセージを
探ることにこの小説の面白さがあるのではないでしょうか。
僕の好きなくだり。
僕の青春時代は無味無臭だった。
刺激のない、なんとも味気ないものだった。
それでもよく考えれば記憶は残っている。
どんなに月日が経って大方のことは忘れていくにしても、
ふと思い出す事柄はある。
人はそうやって生きていることを実感する生き物なんだと。
記憶は必要だけど燃料だからいつか燃え尽きて消えていく。
だからそのことに僕たちは切なさを感じずにはいられない。
でもだからこそ新しい出会いの喜びがある。
燃料に固執しても仕方がない。
燃えていくものは元には戻せない。
ただ、燃え尽きたと思っていても実はそうではなくて、
また燃え始めることもある。
人生ってそうやって燃えていくものなんだね。
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