1998年にセゾン美術館で開催された、
「柳宗理のデザイン-戦後デザインのパイオニア」の図録。
大学の助手さんが貸してくれました。
それまで柳宗理といえばバタフライスツールくらいしか知りませんでした。
ポスターや雑誌の表紙、サインなどのグラフィックデザインから
家具や文房具、キッチン用品などのプロダクトデザイン、
果ては自動車、橋梁、道路の防音壁に至るまで
実にさまざまな分野でその手腕を振るっていたんですね。
しかし一番僕を惹きつけたのは、デザインに対する考え方。
冒頭に「デザイン考」と題して氏のデザインに対する考え方が
5ページにわたって掲載されています。
深沢直人氏の「デザインの輪郭」や原研哉氏の「デザインのデザイン」にも
勝るとも劣らない「デザインとは?」というデザインを志すすべての人たちが持つ
永遠のテーマへの明確な回答がここにある気がします。
なにより1983年の時点でこのようなビジョンを持っていたことがすばらしい。
氏と同じくあらゆるものをデザインし、
「口紅から機関車まで」という名著を残したレイモンド・ローウィに
通ずるものを感じますが、時代的に大量生産、大量消費を手放しで歓迎していた
ローウィに対して、自然や地球環境問題を意識した柳宗理のデザイン観は
その視野の広さを継承しつつ、さらに進化したものだった。