陰翳礼讃【ものづくりのデザイン・最終プレゼン】

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火曜ゼミ「ものづくりのデザイン」の最終プレゼンが無事終了しました。


「魅力」をテーマに学生それぞれが考える魅力を作品として制作する課題。
今回自分は照明器具を製作しました。

あらためて自分は「自然」と「人間」との接点にデザインを使いたい、
という欲求が強いのだと思う。

最終的には照明器具を制作したわけですが、
最初から照明器具を作りたい、と考えていたわけではなく。
正直中盤過ぎまで創るものの機能は固まってなかった。


一番最初に行ったことはコンセプト決め。
自分が着目する「魅力」を整理。

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自分が着目した「魅力」ポイントは「構造」「触感」「光」「成長感」の4点。
重力の作用を感じ、素材の触感を感じ、光の透過を感じ、生物の成長を感じることで
目の前の存在を確固たるものとして捉え、それを「魅力」と感じる。
そういう「魅力」を表現したいと思った。


次にでは、実際どういう構成のものを造るか。
それを中間プレゼンで発表。

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コンセプトの4つの柱をベースに4つの構成要素を導きだしました。


...とここまでは割とスムースに進んだのだけど。

その後のじゃあ実際どんな形でどんな器具を造るんだ?というところから迷走。

格子状の構成、ということで竹ひごをいろいろ組み合わせたり並べたりして
「かたち」をいろいろ検討したのだけどなかなか妙案が出てこない。
最終プレゼンまで一週間、というところで、
これまでの課題の中から、今回のコンセプトに合うものを見つけ、リビルドすることに。

「リビルド」と言えば聞こえはいいけど、ぶっちゃけると「使い回し」。
どうも自分にはこの傾向があるみたいで、それで自己嫌悪に陥ることもあったけれど、
今は、数は少なくても、自分が納得して心から良いものと思えるものを作りたい、
という根底の欲求が強く、それが自分なりのやり方だと思うようにしています。


週一でおよそ4ヶ月、そのうち6割出席すれば良い、
とけっこうゆるゆるの授業であったにも関わらず、
今年は全体のレベルが高かった、との先生の講評。

最近の傾向なのか、
「コンテンツ」の魅力に着目した人が多かったように僕の目には映りました。
そんな中ではかたくなに「ハード」にこだわる自分をより一層強く感じました。

コンテンツももちろん重要だ。
でも、自分がやりたいのはハードだ。
それでいいじゃないか。


ものの機能は最初折りたたみのイスを考えていました。
格子状の骨組みが可変するさまもまた魅力の一つだろう、と。

しかしいまいち「可変機構」というものが自分にはピンとこなかった。
元々の「かたち」に加えて「可変のメカニズム」を考えなくてはならない、という
作業の煩わしさももちろんあるけど、
「動くものを造る」という行為が自分が思う「魅力」とすることに抵抗感があったのが
一番の原因かもしれない。

Webとの出会いがデザインとの出会いだった。
デジハリで静的なHTMLから動的なFlashまで学んだのだけど、
どうしてもFlashには馴染めなかった。
同様に映像制作にも興味を持てなかった。

もちろん、それらのメディアを消費者として楽しむことはするけれど、
それを造ることには興味がなかった。

多分自分は、静的なものから動的なものをイメージさせることに魅力を感じていたのだろう。


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で、結局イスではなく、照明にした。
四苦八苦しながらも一気に完成させ、いざ電球のスイッチを入れてみて、
あらためて思った。


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「これが自分の思う『魅力』だ」、と。

ずっと読もう読もうと思っていた、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を最近やっと読み終えた。
それは単なる偶然じゃなく、この課題のために読むべきだったのだ。


明るすぎる世の中に。
合理主義が理想社会と謳う現代社会に。
複雑であることがユニークであり、価値があるとする社会に。
パワーを浪費することが、人としての力だとする社会に。
順位といった数値で人の価値を決めてしまう社会に。

そんな現代社会に疑問を呈したかったのかもしれない。
大それた方法でなく、ささやかな手段で。


光は影があるから美しい。
光の魅力は陰翳にある。

そんな思いを込めて、この作品のタイトルを「陰翳礼讃」にしました。