ミース・ファン・デル・ローエ【DVD】

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昨日は大学の大掃除。そして春休みに入りました。

大学の図書館ではDVDなども観れるわけですが。
1年生もまさに終わってしまったその日にようやくDVD資料を活用。
DVDは館外貸出しはできず、館内の視聴覚設備のみでの鑑賞のみ。
そして春休み中は原則図書館は閉館しちゃうので、
1年生の間に観ることのできたDVDはこの1本のみ。

もっと早くから活用すりゃよかった。

先日コルビュジエの本を読んだから、というわけでもないですが。

20世紀の三大建築家の一人、ミース・ファン・デル・ローエ
フランク・ロイド・ライトのように官能的でもなく。
ル・コルビュジエのように芸術的でもなく。


無のレベルまで余分なものを削ぎ落としたシンプルさ。
そこに彼の建築の醍醐味がある。


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[ナン島のガソリンスタンド(2007年当時)](出典:Wikipedia)


DVDはモントリオールはナン島のガソリンスタンドにはじまり、
このガソリンスタンドで終わります。

このガソリンスタンドは彼の最晩年に設計したもので、
この完成を待つことなく1969年に彼は他界します。
けして奇をてらったものではなく、
ガソリンスタンドとしての最低限の機能を備えたシンプルさと
周辺住民への配慮を凝らした工夫がなされています。

巨大な高層ビル群の設計が目立つミースにしては意外な展開。

同じモントリオールというだけでなぜかフラーの設計した
万博のジオデシック・ドームが出てくるのですがやっぱこのドームはスゴイ。
圧倒的な存在感。


バウハウスの最後の校長であり、ナチスによる弾圧を逃れてアメリカへ亡命。
シカゴのイリノイ工科大学(IIT)に建築科の教官として招かれ、
そこから彼のアメリカでのキャリアがはじまる。
このDVDはおもにそのアメリカでの活動に焦点を当てたものです。

ナン島の高層建築群、レイクショアドライブ・アパートメント、シーグラムビル、
クラウンホール、ベルリンの新国立ギャラリー、リール邸などが紹介されてます。

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[シカゴ: レイクショアドライブ860/880](出典:Wikipedia)

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[NY唯一のミース建築・シーグラムビル](出典:Wikipedia

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[クラウンホール](出典:Wikipedia)



[新国立ギャラリー(ベルリン、1962-1967年)]



[リール邸(ベルリン-ノイバーベルススベルク、1907年)]


彼は生涯に70以上のビルを手がけ、そのうち45がシカゴにあるという。
一方でニューヨークにはシーグラムビル1つしかないそうです。

代表作であるバルセロナ・パビリオンやファンズワース邸の
解説が少なかったのが残念。
あと有名な家具であるバルセロナチェアなどの紹介もほしかったなあ。

しかし日本では彼の建築物がないせいもあって、
これまでいまいちよく分からなかった彼の建築哲学というものが
今回よく理解できた気がします。


最小限の材料で最大限の表現。
"Less is more." (より少ないことは、より豊かなこと)という言葉で語られるように
彼の建築はミニマリズムが魅力のようです。
基準品の部品しか使わないため加工の手間やコストが省ける。
ドイツ人らしい堅実さ、合理主義さが伺えますね。
引き算の建築で余分なもののない美しさ。
彼の建築は建築物の姿ではなく、建築物によって構成される空間によって表現される。

従来ビルは街路のすぐそばに建てられていたものを
シーグラムビルではオープンスペースを設けて快適性を確保した。
やり方は違えど建築は「生きる喜び」を与えるべきというコルビュジエと同じ考えを
この人は持っていたのだな、と思った。

現在の高層ビル化を加速した張本人。
それが彼が20世紀を代表する建築家といわれる所以なのだろう。

シンプル化という点では確かに彼の建築哲学は素晴らしい。
しかし地球温暖化という未曾有の危機を抱えている現在においては、
高層ビルの存在は都市における巨大な放熱板になってしまう。
増える人口への対処としてコルビュジエも建物の高層化を謳っていますが、
もはや闇雲に高くそびえさすのが賢い建築とはいえなくなってきている。

「どんなに高度な文明が発達しても人間は土から離れては生きていけないのよ」

天空の城ラピュタでシータが言っていた台詞が頭をよぎります。


未来の都市はどうあるべきなのか。
僕らが考えていかなければならないことがたくさんある。
自然と建物と文明がバランスよく調和するような都市の姿を探さなければ。