輝く都市【ル・コルビュジエ】

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ル・コルビュジエの「輝く都市」を読みました。
SD選書。

モデュロール」と同じく内容は難解です。
ル・コルビュジエ自身の理論が難解なのか、邦訳の仕方が難解なのか、
半世紀以上も前の時代背景のギャップが理解を難解にさせているのか。
単に僕の理解力が足らないのか。

いずれもあてはまる気がしますが、
まあとにかくこの本の内容の半分も理解できなかった気がします。

それでも読んで損をしたか、というとそうではなく、
何かしら得るものはあったはずで、
ここでは少ないながらもその得たものを書き出せればと思います。

ちなみにWikipediaによれば、
この本の原題は"Manière de penser l'urbanisme(都市化の思考方法)"で、
これとは別に原題が"La Ville radieuse(輝く都市)"という本が別にあるみたいです。
前者は1946年、後者は1953年発行です。

この本はアスコラルという建築刷新のための建築関係者の集まりにおいて
都市問題を解決するために打ち立てられた理論
(本書ではアスコラル理論と言ってますが)を紹介したものです。


理想の都市とはどういうものだろう?


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[ユニテ・ダビタシオン(マルセイユ)](出典:ル・コルビュジエ財団公式サイト)


東京に出てきてはや16年。
今、自分は都会に失望しつつある。

どんなに科学や技術が発達しても、
都市自体は実はそれほど進化していない気がしてならない。

土から離れ、地面はアスファルト、壁はコンクリートに囲まれて暮らすことが
果たして人間にとって良いことなのだろうか。
自分に対して、他人に対して、地球に対して優しい気持ちになれるだろうか。
最近はそんな疑問ばかりが頭をよぎる。

大学を卒業するとき、自分は40歳。
ちょうど東京に出て20年。
もう東京はいいかな、都会暮らしはいいかな、なんて思いはじめている自分がいる。
二十歳で上京したので、20年スパンで生活スタイルを変更することになる。

次の20年をどこで過ごすか。
充実した大学生活を過ごす反面、そんなことをよく考えていたりします。

この本を読んだのもそんな考えがあってのことかもしれません。
理想の都市ってなんなのか。
人が住む最適の環境とはどういうことなのか。

コルビュジエは言います。

技術は詩の領域をも拡大した。それは、決して、視界を狭くしたり、空間を殺したり、詩人をバスチーユに繋いだりはしなかった。技術は、その測定の道具の正確さによって、われわれの前に幻想的な空間と、従って夢-星の世界だとか、この地上における生命の初まりという眼も眩むほど遠い昔の事などの夢-を開いてくれた。夢と詩とは、この技術の前進に伴って、一分ごとに噴出してくるものなのである。

アーツ・アンド・クラフツでウィリアム・モリスが機械文明を批判し、
従来の伝統工芸による人間性の復活を叫んでから1世紀以上経た現代。
その叫びはいまだ消えていないと僕は思う。

コルビュジエは機械文明の未来を信じ、
機械文明が「生きる喜び」をもたらすものとして輝く都市理論を展開したけど。
機械文明による真の幸せは訪れてはいない。

自分のように思う人間が一人でもいるのだから。
たとえ自分がどんな変人であったとしても人間であることに変りはない。

全ての人が理解してくれるわけじゃない。
富める者全てが賢いわけじゃない。
多くの人を動かす必要のある都市計画は一筋縄ではいかないんだろうな。
そこが僕が建築に対して距離感を感じる理由でもあるんだよね。
人の根本的な可能性を信じれない限り都市計画に携わるのは難しい気がする。


コルビュジエは高層建築が増加する都市人口への対応策と謳っていますが、
内部断熱の策が外部放熱につながり地球温暖化をもたらしている
現代においてはもはやそれだけでは根本的な解決にはならず、
かえって地球にとっては害になったりする。

しかしそれに対してもコルビュジエは「緑の都市」という解決策をすでに示しています。
都市部においても自然は必要なのだと。

さらにコルビュジエは都市計画において核となる基本部分は「住宅」であり、
住宅以外の目的の建造物を「住宅の延長」という言葉で表現します。
工業都市は直線状に、商業都市は同心円の放射状に。
都市の特色と周囲の農村との関係性を考慮して都市の構成と配置がなされる。

生活の大半である仕事をする場所においてもその快適性は追求されるべきであり、
その場所は通勤に苦にならない近距離圏であり、
仕事そのものが苦痛とならない空間であるべきだと。

そして行動速度による明確な区分け。
すなわち歩道と車道とを明確に区分けすることで秩序ある交通世界の形成。

たぶん、コルビュジエの言ってることはある意味ごくシンプルな、
今となってはあたりまえの理論なのかもしれません。
そのあたりまえが徹底されないから都市は荒むのかもしれません。
ストレスが溜り、生き甲斐をなくしてしまい、犯罪が多発する。


そのほかちょっと「なるほど」って思ったところ。

最上のものは、普通にあるものとは、大抵の場合一致しない。なぜならば、最上のものとは、普通のものにさらに進歩が加わったものだからである。規範とは多くの場合、最大の物質性に最小限度の人間性を課したものであると言える。住宅の容積についての規範もこのようなものである。人間の願望は、想像力によってしか制限されない。したがって、願望は、それだけでは規範となることはできない。....


ヨーロッパ5箇所のユニテ・ダビタシオン、インドのチャンディガールなどが
コルビュジエの「輝く都市」理論の成果であるわけです。
それらを直接目にしてはじめてその理論の真髄が理解できるのかな。

行ってみたいなあ...