印刷博物館【東京都文京区】

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

printingmuseum_entrance.jpg


大学の「視覚伝達論」のレポートで、飯田橋の印刷博物館を見学。

飯田橋の駅から目白方面へ10分ちょっとで見えてくるTOPPANビル。

toppanbuilding.jpg

そして入口。
toppanbuilding_entrance.jpg

ここのB1Fが印刷博物館です。


地下の自動券売機でチケットを購入。
printingmuseum_chicket.jpg

学生は200円とリーズナブル。


最初のゾーンはプロローグ展示ゾーン。
ここが会場の全てかな、と思うくらい広いロビー。

壁一面に印刷の起源の壁画から現在の最新の印刷物までが時代を追って展示。
印刷、という言葉を聞くとどうしても紙に印刷されたものをイメージするけれど、
そのはじまりを考えると、
絵や言葉をなにかに「記録する」という行為が原点にあるといえます。

そして最新の科学が発達した現代においては
印刷されるものは絵や文字だけではなく、
CDなどのディスクメディアや電子回路などのプリント基板など
多くの印刷物が社会に存在します。
このことからも「印刷」が文明社会の発展に与えた影響の大きさが伺えます。

次のゾーンがメインの会場。
プロローグゾーンよりもさらに広い。
これで料金200円は安い。
こんな広いエリアなのに平日昼間、ということもあって会場はがら空き。
おかげでゆっくり鑑賞できたけど。

各ブースにはタッチパネル式の解説ビデオが用意されているのですが、
タッチパネルはただビデオをスタートさせるためだけにあり、
しかも感度が悪く、何回かタッチを繰り返さないとビデオがはじまらない。
しかもどうやらWindowsがバックエンドで動いてるらしく、
時々あの特有のエラーメッセージが出ます。
人の入りを考えるとこういうところにあまりお金かけないほうがいいと思うけどなあ。
普通に機械式のボタンでビデオスタートすりゃいいじゃん...

...と思いつつ。

印刷が登場する以前。
本はとても貴重な存在で限られた人々しか閲覧することが出来なかった。
その貴重さゆえに図書館の本は鎖で繋がれていたという。
宗教の原典とでいうべき聖書も例外でなく、
一部の教会関係者しか読むことが出来ず、それが教会の権利を独占し、
教会の権威を維持するものとなっていた。

グーテンベルクの活発印刷技術の発明以後、
マルチン・ルターがこの活版印刷を利用して聖書を大量に複製して
誰もが聖書を読めるようにした。

それまで聖書を読んだ教会関係者から語られる言葉を聞くことでしか
知ることが出来なかった聖書の内容を多くの人が直接聖書を読むことで
正しく聖書の内容を理解できるようになった。

...この歴史のくだりを聞いていると、
知識の開放により多くのパワーユーザを生み出した、という点において
なんかインターネットの登場が社会にもたらした恩恵と似ている気がします。
マスメディアの登場というのはかくもこのようなものなのでしょうか。

技術もただあるだけでは社会に広く普及するものではなく、
その技術をうまく活用する人がいなければならない。
印刷技術もグーテンベルクというエンジニアとマルチン・ルターというディレクターの
二人の天才がいたからこそ、社会に広く浸透することとなったのです。

その後登場したデジタル技術と融合して印刷技術はさらなる進化へ。
「複製」という印刷の持つ特性がデジタルのもつ「複製しやすさ」とマッチして
文字から絵へ、モノクロからカラーへ。
より多く、より速く、より高画質へ。
そしてより多くの対象へ。

広く普及する、ということは良くも悪くも社会に与える影響力が大きくなる、ということ。
どんなものでも最初は良い面がもたらすものを期待して登場するけれど、
一度悪い側面が出てくると人々はその悪い側面が新しく登場したものの特性だと
思い込むようになる。

つまらぬゴシップ新聞、雑誌、海賊本などや新しく登場したデジタルメディアにより
最近では印刷の魅力は忘れがち。
でも遠い昔に思い描かれた未来のように印刷物は新しいデジタルメディアに
駆逐されてはいないし、今後駆逐される様子もない。
それはとりもないさず印刷の原点が多くの人の幸せのため、という
性善説に基づくものである、ということを示唆している気がします。

潜在的に「良いもの」はなくならない。
誰だってわざわざ誰もが忌み嫌う「悪」に関わりたいとは思わない。
本来あるべき真実を見失うことが「悪」だと思う。

博物館とか美術館というものはそういう真実を見つけるためにあるのではないか。
過去を見つめることで多くの人が辿ってきた「真実」を知る。


15時から活版印刷体験コースがあったので参加してきました。
16文字程度の自分で考えた文字列が印刷された本のしおりを作るというもの。
自分で印刷するといっても

  1.活字を文選して(活字を拾って)、
  2.活字を植字して(活字を並べて)、
  3.印刷機のハンドルを回して印刷する。

これだけ。
難しい作業は係りの人がしてくれます。

これだけ、といっても16文字程度ではまだ簡単かもしれないけど
大量の文字を手早くこなすにはかなりの熟練が必要な作業。

自分が考えた文字列は、「花鳥風月 十人十色」+自分の名前。
こういうときに限って気の利いた文句が思い浮かばない。

体験コースでは3色6種類のしおりを刷らせてくれました。
printingmuseum_print3.jpg


毎ブースで説明ビデオを見ていたのと、この体験コースに参加していたのもあって
気づけば2時間半も会場にいました。
200円でこんなに楽しめるなんて。
スバラシイ。