Living Identity

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Kontrapunkt


毎週水曜日はデザイン講義の授業。


まず3限目は「環境生活デザイン」。
「これからの社会でデザインの果たす役割について自由に論ぜよ」、
というお題で自習レポート。


先週の授業で鶴見俊輔の「限界芸術論」を習ったので、
デザインに相当する「大衆芸術」というキーワードをさりげなく入れて。


デザインとは、「関係性」を表現する大衆芸術だと思う。
人と人の関係。人と物との関係。人と社会の関係。人と自然との関係。
様々な関係を様々な手段で表現する。
大衆芸術とは一握りの玄人が、大衆に向けて発信するものであるから、
社会を良い方向に導くものでなければならない。
だから良い関係を築くことがデザイナーの役割だと言える。
その点でデザイナーは社会を導くリーダー的役割があるだろう。
そもそも関係そのものは目に見えないものであるから、
分かりやすく伝えるために、様々な素材を加工して「イメージ」を作りあげる。
その工程が進化してデジタル化が進むことで、
イメージは次第に物質に囚われずに無限に広がりを持つようになった。
そしてデザイナーは素材を軽視するようになった。
どんなに広がりを持っていても人間は物質界にいるのだから、
最終的にイメージが物質界に還元してこなければ、
真に良い関係というものは生まれてこないはずだ。

...というようなことをA41枚の表裏につらつら書き上げる。


そして4限目の「アイデンティティ・デザイン」の授業へ。

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[Kontrapunktフォント]


今週のアイデンティティ・デザインの授業は、
デンマークに本社をおくデザイン会社、
コントラプンクト東京オフィスのメンバー、片野勉氏を招いてのゲスト講義。

貴重なお話を聞くことができました。


コントラプンクトはCID(コーポレート・アイデンティティ・デザイン)を主に手がけるデザイン会社。
独自のタイポグラフィを創ることを得意とし、ブランディング、シグネチャー、環境デザインと
幅広い分野で活躍する。

実績の詳細についてはオフィシャルサイトで見ることができます。
空港、美術館、路面電車、薬局、銀行、家具メーカー、ビール会社...
と実に幅広い。

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[薬局の看板: 薄い藍がかかった白地のバックに、美しいフォントが際立つ]

日本では大日本印刷(DNP)のブランディングを手がけてたんですね。


これまでのアイデンティティ・デザインは対象を静止物として捉えて行う
スタティック・アイデンティティ・デザインであった。
しかし本来、アイデンティティ・デザインの対象は人間に行き着くものだ。
人間は絶えず成長し、変化しているのだから、
スタティックに捉えていては恒常的に効果的なブランディングは難しい。
これからのアイデンティティ・デザインはアイデンティティを生きたものとして捉える
Living Identity Designに向かうだろうと片野氏は言う。

確かに。
アイデンティティは生ものだ。


オフィシャルサイトよりKontrapunktのナイスなフォントがダウンロードできます。
Windows/Macの両方用意されてます。


質疑応答での良い参考書を紹介してほしい、という問いに対し、
「デザイン書はなるべく読まないほうがよい」という答えもなかなか面白かった。
「良いもの」をたくさん見ることで感性を磨くことのほうが重要だということか。
デザインは知識を蓄えるものではなく、感性を蓄えるものなのかもしれない。

もっとも言葉の中にも「良いもの」はあるわけだから、
やはり本は読むべきだと、僕は思うけど。
もちろん、読むだけではだめだけど。


学びて思わざれば、則ち罔(くら)し。
思いて学ばざれば、則ち殆(あや)うし。

感性と知性両方備えてデザインは完成される。


...今日も勉強になりました。