今回の上京は、先日の地域力創造セミナー参加で出張が認められましたが、
せっかく上京してきたので、美的センスを磨くために美術館巡りをば、と。
田舎には大自然、という大きな美術館がありますが、
あたりまえだけど、どうしても原始的な作品しか存在しない。
大自然から人間という領域に昇華させた作品の宝庫はやはり都会にあるわけで。
大学生時代、多くの美術館を訪れて、最終的に行きついた先は自然だった。
大自然から隔離して生きるようになった人間は、
自然の美を感じる能力を失ってしまったのだろうか。
そんな不安から、田舎での生活を思い立ったのだけど。
その疑問に対する回答はこれから自らの創作で見出していくしかない。
今回訪れた美術館は三つ。
まずは外苑のワタリウム美術館で開催されている作庭家・重森三玲の展示。
庭は最も分かりやすい「自然を加工した小宇宙」。
田舎の魅力をアピールするときに、
「都会はダメな場所だけど、田舎はイイところだよねえ」
という比較よりも、
「都会はイイところだけど、田舎にはまた別の良さがあるよね」
という、アピールをしたい。
前者の比較は都会と田舎の間の隔絶を広げるだけでしかないけど、
後者の比較は都会と田舎の交流を育み、新しいコラボレーションを生む。
ワタリウム美術館へは在京時代、なんども訪れているわけですが。
正直なところ、だいたいいつも失望しています。
しかし取り上げるテーマが良くて、そのテーマにつられてまた行ってしまいます。
失望する要因としては、まず入場料が高い。
だいたい1,000円ですが、展示ボリュームからすれば500円〜700円が妥当だと思う。
そして内部は原則撮影禁止。
大して展示の量がない上に高い入場料、せめて内部撮影くらいは許可してくれればいいのに、
...と思ってしまう。
今回もまさにそのパターン。
この美術館は空間系の展示が多くて、原寸大での空間再現が魅力的なのですが、
今回はその唯一の魅力で失望させられた。
美玲の代表作・東福寺の北斗七星の庭(八相の庭)を再現していたのですが、
方丈模様の周囲に石が配されているわけですが、
その石を写真プリントで壁に貼り付けていました。
...これにはがっかり。
その他は現物少々とパネル・映像による資料紹介。
空間表現なのだから、せめて模型展示をするなどしてほしかった。
加えてこの美術館で不満に思うのは図録がないこと。
会場内には美玲の魅力的な名言が数多く展示されており、
美玲の作品写真とこれらの名言を載せるだけでも面白い図録ができると思うのに。
...うーん都会の魅力を紹介する、と言いつつ愚痴ばかりになってしまいましたが、
重森三玲の作品を知る良いきっかけにはなりました。
空間作品はやはり現地を訪れるのが一番...というわけで二年後に現地に行くことができました。
京都や岡山に多くあるみたいなので、折を見て訪れてみたいと思います。
遊子川にも美玲の庭のような魅力的な庭が作れると面白いだろうなあ。