オルセー美術館展2010・ポスト印象派【国立新美術館】

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[ゴッホ『星降る夜』(1888年)](画像は大塚国際美術館の陶板画)


国立新美術館で開催されている、オルセー美術館展に行ってきました。


実は3年前に東京都美術館で開催されたオルセー美術館展にも行きました。
その時は美大に入る直前で、絵に関する知識も感覚も
今に比べるとまったくない状態だった。

今回はその時よりも10倍も絵画鑑賞を楽しめた気がする。
あらためて3年の月日の中で自分が学んだもの、を感じることができた。

別に絵を鑑賞するのに特別な知識なんて必要ない。
だけど、画家がどんな思いでその絵を描いたのか、
どういう時代背景でその絵を描いたのかを知れば、
よりその絵に対する思い入れが強くなる。

そして絵画で何を表現しようとしたのか、自分なりに考えることができるようになる。
感じて、考える。
「より良く」生きるために。

ただ、ボリュームとしては前回の方が大きかったかな。
けっこう混雑した中でもじっくり鑑賞したつもりだったけど、
鑑賞時間はトータルで2時間かからなかった。


いい絵はデジタルデータでもその良さが伝わるものだけど、
いい絵の本物はもっと良い。

絵は基本的に二次元の媒体だけど、
「本物の絵」は微かに三次元であり、その微かな部分に魅力が詰まっている。


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[図録 2300円]


今回のテーマは「ポスト印象派」。
印象派の次に来た新しい波に焦点が当たっているわけだけど。

当初はモネをはじめとした印象派の絵が圧倒的に好きだった。
でも大学で印象派に至る絵画史の流れを学んできて、
自分の興味は印象派以外にも広がった。

だけどやっぱり今でも印象派は好きだし、
自分の絵画感覚の基礎とでもいうべき位置づけは今も変わらない。

その意味で今回の展示は自分の視点にばっちし合ってたような気がする。


今回の展示作品の中で、とくにお気に入りのものを展示順にピックアップ。


まずはモネ。

大学入学直後にやはり新美術館で開催されていたモネ展を見にいった。
そこでモネが好きになった。

『日傘の女性』(1886年)
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(展示では右向きバージョンが展示、画像は大塚国際美術館の陶板画)

この絵の近くにベナールやサージェントの緻密な女性像が展示されていた。
だけど僕はこの絵が断然目を惹いた。
前者はどんなに緻密でも「止まっている」。
一方モネの日傘の女性も止まってはいるものの、
その周囲に気持ちの良い風が凪いでいた。

一見周囲がぼやけているような幻想さの一方で、
眼を細めればあたかもその風景が目の前に存在しているようなリアルさが
同時存在している、印象派独特の雰囲気が好きだ。


『睡蓮の池、緑のハーモニー』(1899年)
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(画像は大塚国際美術館の陶板画)


『ロンドン国会議事堂、霧の中に差す陽光』(1904年)
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(画像は大塚国際美術館の陶板画)


何気ない風景が楽園に見える。
幸せはすぐそばにある、という暗示。


トゥルーズ=ロートレック。

[赤毛の女(1889年)]
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(画像は大塚国際美術館の陶板画)

なぜかドガの「湯浴みする女」と混同してしまう...


続いてゴッホとゴーギャンの対比。
個人的にはゴッホが好きだけど、今回の鑑賞でより好きになった。

今回のベストワンを選ぶとすれば、迷わず冒頭の「星降る夜」を挙げる。

執拗に塗り重ねられた絵の具に彼の絵に対する執念を感じた。
絵の具の厚さのぶんだけ表現の厚み、というものを感じた。


ゴッホとゴーギャンの自画像の比較も面白い。


[ゴッホ自画像(1887年)]


[ゴーギャン自画像(1890-91年)]

ゴーギャンの絵も比較的濃いインパクトのある絵だけど、
ゴッホの絵の前では薄っぺらく見えてしまう。


続いてポン=タヴェン派のエミール・ベルナール。

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[エミール・ベルナール『日傘を持つブルターニュの女たち』(1892年)]※画像はWikimediaより

同じ「日傘を持つ女」でも、モネの絵とはずいぶん雰囲気が異なる。
明るい原色を多用し、明確な輪郭線を用いながらも、
モネの絵よりも「静けさ」を感じさせる不思議さ。


ナビ派のモーリス・ドニ。

『ミューズたち』(1893年)
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(画像は大塚国際美術館の陶板画)

アール・ヌーヴォー的なオシャレさ漂う一枚。


そしてモロー。

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[ギュスターヴ・モロー『オルフェウス』(1865年)](出典:Wikimedia)

今回ゴッホの「星降る夜」の次に良かったのがこの作品。
とにかく画面の美しさに釘付けだった。

授業のスライドでは見えなかった、細部のきめ細かさがより鮮明に感じられた。
前回のオルセー展で「ガラテア」が展示されていたときもその美しさに
魅入ってしまったものだけど、今回はさらに強烈だった。
細部へのこだわりが半端じゃない。
やはりこれも表現に対する「執念」か。
...執念のある絵に惹かれる。

サロメ(とくに「入れ墨のサロメ」)がますます見たくなったな。


今回ノーマークだったピュヴィ・ド・シャヴァンヌ。

『貧しき漁夫』(1881年)
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(画像は大塚国際美術館の陶板画)

ありふれた光景なのだけど、なぜか神聖さが漂う。
目を閉じて頭を垂れる漁夫の顔はイエスの顔のようにも見える。
オーラを感じた一枚。


そして金曜の授業で取り上げられたオディロン・ルドン

『目を閉じて』(1890)
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(画像は大塚国際美術館の陶板画)

実物は意外と小さかった。
実物のインパクト、というものは正直それほどでもなかったけど、
やっぱりいい絵だった。


こちらは2年生か3年生の時、やはり中村先生の授業で知ったエドゥアール・ヴュイヤール
やはり前から見たかった絵の一つ。

『ベッドにて』(1891年)
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(画像は大塚国際美術館の陶板画)

こちらもやはり実物のインパクト、というのはそれほどではなかったけど、
やっぱりいい絵だった。


最後は本展の目玉、アンリ・ルソー。

『蛇使いの女』(1907年)
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(画像は大塚国際美術館の陶板画)

ルソー自身は南国へは一度も行ったことがないという。
それでもこの見事な表現。

人間のイマジネーションの豊かさを感じさせる一枚。


[西洋美術史Ⅱ]後期授業のいい予習になったな。


今秋のゴッホ展もますます行きたくなった~!