バウハウス・デッサウ展【東京藝術大学大学美術館】

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会期終了を間際にしてようやく行ってきました、バウハウス展。

前売りチケットはかなり前に買っていたのですが、
なかなか重い腰が上がらず、もっと早い時期に行ってれば
涼しくて楽だったんだろうけど、猛暑の中汗かきかき上野まで。

実は藝大美術館の中に入るのは今回がはじめて。
さらに自分が通う多摩美にも美術館はあるのですが、これもまだ行ったことなし。
だって遠いし、面白い展覧会やらないんだもんなあ。


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[チケット]

1919年ヴァイマールに開校し、デッサウ、ベルリンと場所を移し、
校長もグロピウスからハンネス・マイヤー、ミースへと変わり、
ナチスの台頭と共に1933年にその幕を閉じる。

14年という短いながらもその活動は今なおデザイン界に及ぼす影響は大きい...

...そうですが実際どうなんだ?
...ということで見てきました。


パンフレット
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マルセル・ブロイヤー版モホリ・ナギ版

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日本におけるバウハウスへの関心は高く、これまで多くの展覧会が実施されてきましたが、
本展は1995年のセゾン美術館での展覧会以来実に13年ぶりの展覧会だそうです。
そして1996年に「ヴァイマールとデッサウのバウハウスとその関連遺産群」として
世界文化遺産に登録されました。

つまり本展はバウハウスが世界遺産に登録されてから、
日本でのはじめての展覧会となるわけです。

本展は本国ドイツのバウハウス財団からの貴重なコレクションが展示され、
これほど大規模なものとしては世界初だとか。
出品数およそ260点のうち、241点がバウハウス財団のコレクションだそうです。



[ワルター・グロピウスによるバウハウス・デッサウ校舎]

会場は地下二階と三階の二会場構成。
本展のチケットで地下二階の藝大コレクション展も見ることができます。
藝大とバウハウスの意外な関係性を見ることができる興味深いものでした。

さてバウハウス展に話を戻して。
本展はヴァイマール、デッサウ、ベルリンのうちもっともバウハウスの思想が
展開されたデッサウでの活動を中心に紹介されたものです。

展示は大きく3つのチャプターで構成。
Chapter1はバウハウスの時代背景と
ドイツ工作連盟、デ・スティル、ユーゲントシュティールなどバウハウスを
取り巻いていた周囲についての解説、展示がしてありました。
フランク・ロイド・ライトのイスも展示してあって、
彼のデザインが欧州でも影響力があったことが伺えます。

Chapter2から3階の会場へ。
いよいよバウハウスでのカリキュラムを講師ごとに紹介。
ヨーゼフ・アルバース、モホイ=ナジ、パウル・クレー、ヴァシリー・カンディンスキー、
オスカー・シュレンマー、ヨースト・シュミット...

(モホイ=ナジは「モホリ・ナギ」、ヴァシリー・カンディンスキーは「ワシリー・カンディンスキー」
 と表記するところもあります)

形態、色彩、構成、素材...さまざまな要素から
造形を研究するそのカリキュラムは今見ても斬新。
とても100年近く前の教育カリキュラムとは思えません。

ヨーゼフ・アルバースの紙を使った折りたたみ、折り曲げの演習、
モホイ=ナジの空間研究課題による「浮遊するイメージを持つ立体」、
ヨースト・シュミットの「放物面の立体」
「直線と円(棒と環)から回転から双曲面体、球体へ」...

...などが自分的には面白かったです。

バウハウスではデザインだけでなくアートにも積極的に取り組んでいて、
舞台芸術の映像作品なども上映されていました。
バウハウスダンス、形態ダンス、空間ダンスなどその独特の表現が面白かった。


Chapter3は「バウハウスの建築」。
バウハウスのバウ(bau)は建築の意。
その名が示すとおりバウハウスの究極の理念は建築にあります。
全てのデザインは最終的に建築に通ず。
その思想が自分は好きです。

バウハウスの校舎の建築模型が展示したありました。
あらかじめ「LANDSCAPE OF ARCHITECTURES 1」での解説も
見ていたことでこの建物の機能的、造形的に優れた部分を感じることが
できましたが、模型やCGだけではこの建物の良さは分かりにくいかも。

そのほか面白いなと思ったのがハンネス・マイヤーらによる「ペータースシューレ」。

会場には模型があって、より分かりやすいのだけど。
直方体の建物の横に併設する広場を直方体の天頂部から4本のワイヤーで吊っている。
それで広場の下部には支えが不要になります。
構造的には下から柱で広場を支えた方が直方体への負荷は不要となるので
そちらのほうが安定する気がするのだけど造形的には面白い。

ミースのバルセロナ・パビリオンのCGもありました。
これがなんと母校の建築家の学生が作ったというではないですか。
会社を辞めたことは後悔してないけど、高専に入るときに専攻を建築ではなく、
電気にしたことは今思えば悔やまれる。
あのとき建築を選んでいればこんな遠回りはなかったのかもしれない...と。

...まあ遠回りの道も今となってはけっこう楽しんでるけどね。


最後に図録を買って帰りました。3000円。
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デザインの原点としての貴重な参考書として必ず買う、って決めてたのですが。

小さめでそのぶん分厚い。
閲覧のしやすさ、という点ではあまりいいデザインではないよね...
独創性をねらうのもいいけどさ、機能は追求して欲しいものです。


デザインを学ぶ方法はいろいろあるけれど、
現在の流行を知るより今に残るデザインの原点で知ることの方が
僕には大切な気がする。

バウハウスのデザインの中には今見ても斬新なものも多い反面、
古臭さを感じさせるものも少なくない。
見かけの造形だけを見るだけではそこから学ぶものは少ない。
バウハウスが今に残り続けるものはなんなのか。


それを探すことがデザインの本質を見極める最良の道のような気がする。