ニューヨーク、サンタモニカ、そして東京はお台場へやってきた移動美術館、
"ノマディック(遊牧する)"美術館に行ってきました。
六本木で同氏の作品展「animal totems」をみてきたばかりですが、
同じように映像も写真もセピア調の色彩で表現されており、
写真は焼付けの生地のせいか、まるで精緻な絵のように見えます。
それがまた幻想的な度合いを高めている。
映像の中のすべてのものはゆっくりと時間が流れている。
その時間の流れるスピードが自分の時間とシンクロしているのか、
とても惹きつけられるものがありました。
CG全盛のこの時代にこれだけの作品がデジタル処理なしに
表現されているのが驚きです。
水中でジュゴンと舞う。
古代遺跡の中で鷹と舞う。
古代遺跡の中で象と佇む。
砂漠の中でチーターと佇む。
本来、人間はもっとゆっくり生きるべきではないだろうか。
先を争って新しいものを創造し、非効率なものを排除していくことは
進化、という点では確かに劇的な効果をもたらした。
しかしその一方で、大切なものも見えなくなってしまった。
その大切なものを犠牲にしてまで進化することに意味があるのか。
常識に囚われたままではグレゴリー・コルベールの世界に入ることはできない。
常識を捨て、邪念を捨て、疑念を捨てる。
...そうすることで人は忘れかけていた"共有の喜び"を思い出すことができるだろう。
坂茂氏設計のこの移動美術館はかなり異彩を放っています。
三角屋根の棟を2つ並べ、この2つの棟の通路の両脇に巨大な写真作品が
ずらりと展示され、通路の一番奥に短編映像作品『俳句』が上映されてます。
六本木で上映されていたものと似たようなものもありますが基本的に別ものです。
そして2つの棟をつなぐ中央部分では巨大スクリーンにて、
1時間に及ぶ映像作品が上映されていました。
外壁は152個の貨物コンテナを市松模様を描くように四段で10メートルの高さに積み上げられ、
コンテナ間の開放部分は膜で塞がれていて、外光を遮光しています。
風が吹くと、この膜がばたばた鳴ってけっこうウルサイです。
建物を支える中央の柱はなんと直径30cmの紙管!
触ってみるとおよそ紙とは思えないほど硬質な感触。
まあこれほど巨大な建物を支えるのですから当然なんでしょうけど。
建物内は暖房とか一切ないので長い映像作品をじっと座って観ているとかなり寒い。
そのくせトイレは建物外にしかないためトイレを我慢するのがツラかった~
3月、4月に見に行く人はしっかり防寒対策をしておくことをオススメします。
二時間ほどで観終えてミュージアムショップへ。
...どれも高い!
カタログなんて16,800円もするよ。
カタログ買えばDVDが特典としてつくのですがそれでも高い。
写真もよかったけれど、映像作品のほうが作品の魅力が現れていると思った。
映像作品を知ってはじめて写真の真の魅力が見える。
そしてカタログとして小さくまとまってしまってもその魅力は薄れてしまう。
というわけでDVDだけ買いました。
それでも6,800円もしたけど。
本展で上映されていた1時間の映像作品が収納されています。
ちなみにパッケージはネパールの現地人による手作りとか。
微妙に汚れているところなどがその片鱗をうかがえます。
日本語ナレーションは渡辺謙。
外にでると日が暮れて、ライトアップがはじまってました。
これもまたなかなか良い。
いやー、期待以上のものを与えてくれました。
忙殺の日々をすごす人々にぜひとも観てもらいたい展示です。