EMILIO AMBASZ【エミリオ・アンバース】

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第4セッションの課題にて。

今回の自分のテーマを前の課題から展開して、
等々力渓谷南部の橋を含めた導線計画を先生に提案したら、
参考にするように、と貸してくれた本。


エミリオ・アンバース、1943年アルゼンチン生まれの建築家。
本書は1993年に開催されたエミリオ・アンバース展の図録で、
1973-1993年の20年間にわたる活動の軌跡を紹介。

氏の名前は今回はじめて知ったのですが、
実はあの「アクロス福岡」の基本設計をした人なんですね。
(アクロス福岡は1995年に竣工したのでこの図録には載ってません)

アクロス福岡に代表されるように、
建物と自然との融合を意識した建築を創る人らしい。


自然と融合する建築。
先生がこの建築家を紹介してくれた理由が一目で理解できました。
そして僕が建築に求めるものもこの中にある。




アクロス福岡


本書では巻頭に一線で活躍する建築家たちによる解説があるだけで、
作品には文字解説はなく、
建築作品はほとんどが模型かパーススケッチのみなので、
最初は当時はほとんど実現不可能だったのかな、と思ったけど、
ネットで調べると、単なる展示方針でほとんどが実際に建っているようです。

実際、ネットで見つけてきた写真を見るよりも模型を眺めている方が、
抽象化されることで余計な成分が排除されて、
アンバースの建築がしっかり見えてくるような気がしました。

リアルなようでリアルでない模型になぜか惹きつけられる。
現在の最先端のスーパーリアルを追求した模型ではなく、
模型の持つスケール感を残したままなんだけれど、
作者が伝えようとする空間哲学はきちんと伝わってくる。
水なんかも本物の水を使わず色紙で表現しているのだけど、
ちゃんと水の物質感が伝わってくる。

本当に良い模型、というのはこういうものなのかな、と思った。


一番のお気に入りは、兵庫県三田市にあるマイカルの研修施設。

Lの字状の建物で、外側はモダンなガラス張り。

[MYCAL CULTURAL CENTER-表側]

波打つガラスがすごい!

中から見るとその波打つガラスの様子がよく見えます。

緑の丘が建物にめり込んでいる裏側もスゴイ!


[MYCAL CULTURAL CENTER-裏側]

日本語では「マイカル三田・ポロロッカ」または「マイカルボーレ三田」という名称らしい。
が、現在は所有者が社会福祉法人「山西福祉記念会館」に変わっているようです。

アンバースはマイカルのロゴデザインも手がけており、
マイカルとは縁が深かったみたいですね。


これも写真よりも模型のほうが、
建物と自然が融合する様子が見えやすい気がしました。

実際の建築のスケールでは、その建築哲学を表現するのが難しいのだろうか。


ボルチモアの施設。

[WORLDBRIDGE TRADE AND INVESTMENT CENTER]

これは模型の画像しか見つからなかった。
実現しなかったのかな。

アメーバが層を重ねたようなその造形はまさに有機的。
模型も良いけどパースはもっと素晴らしい。

自然から切りはなす建築ではなく、自然に溶けこむ建築。
まさに未来の建築はこうあるべきだと思う。


ベニスの病院。

モダンさ溢れるファサード。

でもその内側には自然が溢れてる。


サンアントニオ植物園(Luille Halsell Conservatory)

[模型]


[実際の建物]

ガラスのプリズムが大地を破って「生えて」くる様子はやはり模型のほうが分かりやすい。


コルドバの家。

不完全な箱にどこか哲学的なメッセージを感じさせる。


人工と自然との関係。
エミリオ・アンバースはそのあり方を徹底的に追求したい建築家なんだと思う。

安藤忠雄氏の言によれば彼の建築は「環境建築」。
「環境彫刻」を創るダニ・カラヴァンとどこか共通するところがあるように思えます。
カラヴァンが焦点がよりオリジン(自然)であるのに対して、
アンバースは人に近いところに焦点がある気がする。
そこがアートとデザインの差のようにも思える。


どんなに頭が良くても、人間が自然の一部であることには変わりない。
それを無視した営みは本質的ではない。

だからやはり彼らのような建築や彫刻が必要なんだと思う。


エミリオ・アンバースは建築のみならず、
プロダクトデザイン、グラフィックデザインと幅広く活躍した人で、
本書にも彼がデザインしたイスや照明器具、ロゴなどが掲載されているけど、
やはり惹かれるのは彼の「環境建築」かな。


良い刺激を受けました。
課題に生かしたいと思います。


※画像は全てネットで拾ってきたもので、本図録のものではありません。