デザインサーカス【梶本博司】

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現在のセッションを担当をしている梶本先生の著書です。
この本自体は最初のセッション担当の先生からの紹介で知ってたのですが
そのときはいつか読みたいなあ...と思いつつ放置してしまったのですが、
今回あらためて梶本先生と出会って、読みたくなりまして。

貧乏がゆえに近くの図書館で借りてきて読んだのですが、
先生の人柄がよく出ていて、とても良い本でした。


今回のセッションの僕の作品、
実はこの梶本先生がとても大きなヒントを与えてくれました。
ヒントなんてもんじゃないな。一緒に案出しした、みたいな。
そして実作業のほうはもう一人別の先生に頼りっぱなし。
ある意味今回の作品は二人の先生と僕との三人による作品。
そこには大いに学ぶものがあるのだけど、
多すぎて、あせるばかりで、空回りで、...落ち込みます。

...まあとにかく頑張るしかないのだけど。


形が機能を作るんじゃない。
機能が形を作るんだ。

形から入るとアイデアはどうしても行き詰まってしまう。
必要な機能を、実現したいことを整理してリストアップすることで
あるべき姿形は見えてくる。


そんな先生のデザインに対するスタンスが、
セッションでのアドバイスでも、この本の中にも表れています。


この本を読むと、たぶんデザインに対するイメージが変ると思う。

「洗練されてて、カッコよいもの」
たぶんそんなイメージがデザインにはあると思う。
実際僕もデザインを学び始めるまではそういうイメージを持っていた。

でもそれは偽りの姿、とは言わないけど、
デザインの一部の姿でしかない。
デザインは日常からかけ離れたものだけじゃなく、
むしろ日常の中に存在するもののほうが圧倒的に多いのだと思う。

この本はそのことを強く感じさせてくれます。


最初は子供の頃の記憶から始まり、
大学時代、メーカーでのインハウス時代、奥さんの病気、
家族の不幸、愛犬の死のエピソードなど、
物語の前半は先生の人生の軌跡が描かれています。

デザインには「経験」が必要だと思う。
それは「デザインの経験」ではなく、「人生の経験」という意味で。
だから俳優では天才子役がいても、
天才子供デザイナーというのはいない(...と思う)。

ぷっと吹き出しそうな面白いエピソードにも、
涙が出そうな悲しいエピソードにも、
デザインの"構成原理"が詰まっていた。


後半はデザインに対する"想い"や実際の作品などが
語られているわけですが、妙にカッコつけてるわけでもないのだけど、
要所要所でずしんと響く言葉がある。

ただ。
読み終わってふとデザインって一体なんなのだろう?という
正解のない問いがまたまたむくむくと膨らんだ。

「発明」がデザイナーの仕事なのだろうか?
「アイデア」出しはデザインの領分なのか?


やり遂げた感もないままにエンジニアを14年やってきて。
自分よりも一回り以上も年下の若者とデザインを学び始めてみて。

エンジニアは本当に自分には向かない仕事だったのか。
デザイナーと呼ばれる職種に自分のやりたい仕事があるのか。


悩みはつきない。
だから悩み続けるしかないんだな、きっと。

あ、でも。
どんなスタイルにしろ、ものづくりは楽しいです。
目や耳で見たり聞いたりするだけじゃなく、
五感を使って「みんなで経験してゆくもの」を創ってゆきたい。


なお、本書中には巻末の本人写真以外に一切写真がなく、
先生の作品も全部手書きのイラストしかありません。
これはこれで面白いのですが、やはり実際の作品の写真が見てみたい!
...という人は先生のWebサイトをご覧ください。

僕は本書中の「逆開きの傘」が好きだな。