八木一夫と清水九兵衛 陶芸と彫刻のあいだで【菊池寛実記念 智美術館】

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半年ぶりの東京2日目。

六本木の国立新美術館で安藤忠雄展を見た後、
日本橋の三井記念美術館で開催中の超絶技巧展を見に行こうと地下鉄での移動中、
人身事故かなんだかで、電車がまさかのストップ。
当面動きそうもなく、このままだと飛行機の時間に間に合わなくなる。

そこでプランB。
上京前に日曜美術館を見て少し気になっていたものの、
時間の都合上あきらめていた菊池寛実記念智美術館へ行くことに。
折しも電車が止まったのが最寄り駅の神谷町。

これはもうこちらの美術館に行きなさい、という神のお導き。
神谷町駅からゆるやかな坂道を上がった先のホテルオークラの向かいに建つ一風変わった建物。
西久保ビルというそうですが、中世に西久保城というお城があったことに由来するそうです。
美術館はこの建物の地下にあるわけですが、
地上に奇抜なビル、地下に美術館というスタイルは山種美術館に似てますね。


しかしこの美術館はスバラシイ。
近年まれに見る大当たりの美術館でした。


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[西久保ビル]

この美術館は現代陶芸コレクター・菊池智が長年にわたり蒐集してきたコレクションの展示、
及び現代陶芸の普及および陶芸作家や研究者の育成を行う美術館として、
2003年に東京・虎ノ門に開館しました。
美術館の入る西久保ビルの設計は坂倉建築研究所。


とにかくこの美術館はセンスがイイ。
陶芸については素人でよくわからないんだけど、
ずっとここに居たい、何度でも通いたい、と思わせてくれる素晴らしい空間でした。


敷地内には智の父であり、
この地を拠点に活動した実業家・菊池寛実のための持仏堂と和風の蔵があります。

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大正時代に建てられ、国の登録文化財にもなっている西洋館。

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普段は非公開ですが1〜2ヶ月に1回、建築家のガイド付きで限定公開しているそうです。


入口。

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通路。

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ロビー。

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一番感動したのがこの階段。

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ガラスの手すりはガラス作家・横山尚人によるもの、
壁には書家・篠田桃紅によるコラージュ作品がほどこされてます。
「菊池智のアイデアがもっとも生きている空間」だそうです。
じつに素晴らしい空間です。


さて、企画展ですが、今回は戦後の復興期に活躍した二人の陶芸家の作品の展示。

八木一夫と清水九兵衛。
陶芸については素人で二人ともはじめて聞く名前だったけれど、
例によってこの展示空間も抜群にセンスが良くて、
陶芸がよく分からなくても、「陶芸っていいなあ」と思わせてくれる空間。
本展ほど会場内を撮影できないことを残念に思ったことはありません。

分からないなりに感じたのは、
二人がつくる陶芸作品は実用的な陶器ではなく、オブジェのような美術品であり、
本来つけ足してゆくことで形を成形していく陶芸で、
削っていくことで形を成形する彫刻のような作品をつくるのが特徴といえば特徴なのでしょうか。


会場内は撮影禁止なので例によってお気に入りの作品をpinterestからピックアップ。


<八木一夫>


[ザムザ氏の散歩(1954年)]


[黒陶 偶像(1961年)]


<清水九兵衞>

こちらは会場内の作品が見つからなかったのですが、
過去に訪れたスポットで知らず知らずのうちに作品と出会ってました。


島根県立美術館「語り合い」

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神奈川県立近代美術館鎌倉館「BELT」

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DIC川村記念美術館「朱甲面」

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あまりに展示が良かったので図録も買っちゃいました。

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悪くないんだけど、図録なのでやっぱり作品単体での写真がメインになってしまい、
展示風景の絵はないんだよなあ...

この展覧会に先立って、
9月にブロガーイベントで展示風景を撮影できる内覧会があったみたいですが、
(しかも観覧料無料!)
めっちゃ行きたかった!
(遠方なので行けない可能性大なんだけど;;)

...まあ、それだけ今回の展示が素晴らしかった、ということで。


陶芸好きもそうでない方もぜひこのセンスの良い空間をご堪能ください!
オススメです。


【Information】オフィシャルサイト