鉄とコンクリートの登場で人間社会の建築は一変した。
より正確で効率よい生産方式で建築の生み出す空間はメガスケール化した。
しかしそのスケールは本当に人間に必要なものなのだろうか。
元々そんなに正確でない人間の身体に、正確に計算された空間が必要なのだろうか。
計算されつくした空間は、人間に窮屈さを感じさせる。
木は鉄やコンクリートほどの耐久性はないかもしれないけれど、
人間に近しいその存在は親近感を感じさせ、「やすらぎ」を与えてくれる。
材料そのものは朽ちても、「かたち」は残り続ける。
「よいもの」とはそういうものだ。
愛媛へ移住する直前、実家へ帰省した折に、
山口県岩国市の錦帯橋を訪れました。
木造でだってこんなに立派なものができる。
いや、木造でなら、こんなに人間にとって心地良いものができる。
錦帯橋は現在、入橋料を徴収することにより橋の架け替え、管理の財源を確保しています。
木は朽ちても、新しいものに架け替えることで錦帯橋は未来永劫残ってゆく。
人々がこの橋を「よいもの」と思い続ける限り。
この橋の描くアーチはカテナリー(懸垂線)と呼ばれるカーブを逆さにしたもの。
紐の両端を持って垂らしたときに形成される曲線。
重力によって形成される自然曲線であり、もっともムダのない美しい曲線であり、
部材全体に均等な引張力が働く。
そしてそれを逆さにすると部材に均等な圧縮力が作用するため、
構造的にも安定したものとなる。
意匠的にも、機能的にも理の叶った造形なのだ。
美は人間の独創によって生まれるのではなく、既に自然の中に埋もれており、
人間はただ、それを見つければ良い。
橋の袂にある「巌流ゆかりの柳」。
佐々木小次郎が「ツバメ返し」を編みだした場所だとか。
錦帯橋を渡って岩国城へ向かう途中に、二つの公園があります。
ひとつは吉香公園。
もうひとつの紅葉谷公園の中にある洞泉寺。
臥龍の梅。
日本は森林の国だ。
木と共に生きるべきではないでしょうか。
【information】
アクセス:JR岩国駅よりバスで15〜25分
無料駐車場あり(混雑期は有料、300円)
入橋料:大人300円、小学生150円、小学生以下無料