香川県庁舎に行ってきました。
まずは外観をレポート(内観編はこちら)。
香川県立体育館と同じく丹下健三設計。
香川県立体育館がモダニズムの巨匠にしては異色の有機性の強いものであるのに対し、
こちらはまさに正統派モダニズムの作品。
近代建築の巨匠ル・コルビジェの「近代建築の五原則」を忠実に踏襲したものとなっています。
かつて官公庁という場所は威厳を重視するがゆえに、
いかつくて重厚な面構えで近寄りがたい雰囲気のものでした。
ときの香川県知事・金子正則は「民主主義時代に相応しい庁舎を」と、
香川県丸亀市出身の洋画家・猪熊弦一郎を介して知り合った丹下氏に設計を依頼します。
1958年に東館(旧本館)と議事堂が建てられますが、
それは日本の伝統的な「梁」を表現した外観とする一方で、
センターコア方式を採用し、1階の天井を高くして四周をガラスで張り巡らし、
壁に猪熊弦一郎氏の壁画を置きました。
その空間はとても明るく、重厚な外観でありながら市民に開かれたものになっています。
2000年に新本館が建てられます。
丹下さんの新旧時代の作品を一度に見ることのできる貴重なケースと言えます。
新本館は旧本館の倍以上の高さでありながら、今風の「軽さ」を備えたものであり、
旧本館の圧倒的な存在感は今も色褪せません。
この新旧二つの建物を見比べてみると、同じ設計者でもこうも作風が違ってくるのか、
と興味深いものがあります。
時代背景、社会情勢、経済状況などの変化もあるでしょうが、
そこには設計者の思考の変化も少なからず影響しているのではないでしょうか。
2000年完成の新本館はもはやかつてのモダニズムではない。
旧本館よりも高層でありながら、そこには重厚感はなく、むしろ軽さを感じさせる。
モダニズムが終焉し、ポストモダンすらも霧散してしまい、
様式という様式が存在しない時代。
それは丹下健三という世界的建築家をもってしても個性が際立たなくなる時代なのだろうか。
個性的な建築、というものが許されない時代なのだろうか。
そうだとすれば、なんとつまらない世界か。
入り口を陣取る議事堂。
近代建築の五原則①「ピロティ」のある場所。
ピロティがあることで、そこは空間を遮断せず人々が行き交う場所となる。
建物の内外への繋がりがシームレスとなる。
木肌が映るコンクリート壁。
どことなく温かみを感じます。
中庭。
旧本館(現東館)。
近代建築の五原則②「屋上庭園」③「自由な平面」④「水平連続窓」⑤「自由なファサード」を実現。
ガラスを多用して光を多く取り入れ、明るい場所とする。
県庁というと、一般人にはなにをするところかよく分からず、
近づきがたい、という印象を持ちがちなのだけど、
建物入口をこのようにオープンにすることで「市民に開放した行政」という
イメージをアピールすることができる。
それに比べて新本館(現本館)。
無機質で均一的、もっと言ってしまうと非人間的。
近寄りがたさがにじみ出てるような。
いつから現代社会はこのような建築を求めるようになったのだろう。
建築家の個性が滲み出るような建築は世に出てこないのだろうか。
高松駅の観光案内所で見つけた香川の情報誌「新・さぬき野」で
この香川県庁舎が特集されていました。
東館+旧本館は今後も末永く残っていってほしいなあ。
県庁の斜め前にある中央公園にはイサム・ノグチの遊具が設置してありました。
これもイサムの作品なのか?
高松は街全体としてはとてもセンスのいい町だなと感じました。
都市はそのスケールではなく、センスで構築していくものなのかな。
訪問日:2013年1月3日PM、9月18日午前AM
【information】
アクセス:JR高松駅より徒歩16分