石山修展に続いてダニ・カラヴァン展を見に世田谷美術館へ行ってきました。
またもや建築系の展示ということでワクワクです。
この展示会はGA Galleryに置いてあったチラシで知りました。
もちろんダニ・カラヴァンなんて初耳。
「環境彫刻家」という肩書きのイスラエル人だとか。
オフィシャルサイトを見る限りでは建築に近い作品を作る人みたいです。
ゲーリーやリベスキンドなど、ユダヤ系には意外と著名な建築家がいますよね。
本展では二次元と三次元での表現の違いをまざまざと感じました。
二次元と三次元の両方を極めることはできない。
二次元を極める人は三次元に進む必要はないし、
三次元を極める人は二次元では満足できない。
さらに造形の意味というか、魅力というか、
そういうものについても考えさせられました。
幾何学図形はなぜゆえに存在するのだろう。
どうして僕らは幾何学図形に惹かれるのだろう。
...僕が惹かれるものの原点について考えるヒントを与えてくれる気がした。
[『水滴』。 会場内は撮影禁止だけど会場外からならいいでしょ...ということで。]
会場の前半は美術館を一つの環境として、
カラヴァンの彫刻作品が展示してあります。
環境彫刻、とあるだけにその彫刻が展示している空間では
空間そのものがすごく意識させられる。
なぜか美術館の屋根や壁はどうなっているんだろうと
周囲をきょろきょろしてしまいました。
周囲を意識させる。
これが環境彫刻の力なのでしょうか。
上記の画像は「水滴」と呼ばれる作品で円形の展示室の一角に
砂を配した「庭」に4つの石が積まれた山が置かれています。
山の一つに鹿威しが置いてある。
他の3つの山は頂上が尖っているのだけど、
鹿威しが置かれている山だけ頂上がくぼんでいる。
実際には鹿威しには水は流れていないのだけど、
頂上がくぼんでいることで水の流れを表現されていることが分かる。
龍安寺石庭のイスラエル版、といったところでしょうか。
後半はこれまでの作品展示。
カラヴァンは最初絵画を学び、
その後舞台美術をやるようになった。
舞台が終わると姿を消してしまうことに満足しなくなり、
イスラエルの野外に作ったネゲヴの記念碑で本格的に環境彫刻に挑むようになる。
正直絵画作品のほうにはあまり魅力を感じませんでした。
コルビジェの絵に魅力を感じないのと同じように。
この人はやっぱり根っからの三次元表現者なのだと思います。
環境彫刻作品は模型と動画で紹介されています。
会場内は撮影禁止なので、ネットから作品画像を探してきました。
ネゲヴ記念碑(1963−68年 べエル・シェヴァ、イスラエル)。
(出典:danikaravan.com)
立体的に配置された多数の幾何学図形が人々の目を惹きつける。
幾何学図形というと、どこか無機質で非人間的な印象をイメージするけれど、
よくよく考えれば全ての生物の構成をミクロ的に見れば
幾何学的で規則正しい原子の配列で構成されているわけで、
我々を構成する基本構成単位なわけです。
言うなれば人間だって幾何学配列の集合体なわけで。
幾何学図形への興味や魅力はとどのつまり、
自分自身の原点への回帰願望ではないのでしょうか。
ネゲヴ記念碑の内部。
(出典:danikaravan.com)
カラヴァンの一連の作品にはこのような「光の格子」が特徴としてよく現れます。
「パサージュ、ヴァルター・ベンヤミンへのオマージュ」(1990−94年 ボル・ボウ、スペイン)
日本にもたくさんの作品があって、ブロック1つで日本での作品が紹介されていました。
「隠された庭への道」(1992−99年 札幌芸術の森野外美術館)
モエレ沼のイサム・ノグチへのオマージュとして作られたもの。
なるほど、イサム・ノグチの後継、進化形と見えなくもない。
室生山上公園 芸術の森(1998−2006年 奈良県宇陀市)
このほか霧島アートの森、宮城県美術館など、
実に多くの作品が日本の美術館に設置されています。
すっかりカラヴァンの虜になって当然のごとく図録を購入。
豪華なカバーつき。
カバーをとるとこんな感じ。
付録として世田谷美術館でのオリジナル作品を収録した小冊子がつきます。
いやー、カラヴァン素晴らしい。
展覧会は今月21日までやってますので興味のある方はぜひ。
(※展覧会はすでに終了しております)