挨拶回り

地域活動を活性化していくには、まずその地域を知らなければならない。
地域を知るには、そこに住む人たちを知らなければならない。
地域が活性化する、ということは、その地域で暮らす人々が豊かで幸福な生活を営む、ということなのだから。


...というわけで本日は遊子川地区住民の方々への挨拶回り。

地理も分からず、住宅事情も分からない今の自分にはいくら地図があっても、
一人ではなかなか難しいものがあります。
さらに信用、という問題もあります。
いきなり新参者が一人訪ねて回っても、あやしい奴、と思う人も中にはいるでしょう。

...というわけで公民館の主事さんから紹介していただく、という形で
一軒一軒回らせていただきました。
地域住民でもある主事さんから紹介していただけると話も早い。
こちらはまだ、「これからお世話になります」としか言えないのもありますが。


遊子川は大きく分けて「遊子谷」と「野井川」の集落で構成されます。
この二つの集落はさらに11の地区に分かれます。
人口としては400人程度。世帯数が160程度。
都会に比べていくら規模が小さいとはいえ、160世帯を一軒一軒回るのはけっこうな労力です。
加えて遊子川は峡谷地形のため、坂道をてくてく登っていかなければなりません。

GW中の休暇というのに加えて、田植え前の忙しい時期ということもあって、
およそ半数の家は留守でしたが、およそ1日半かけて回り、けっこうくたびれました。


都会は「機能」でコミュニティを生成し、
田舎は「地域」でコミュニティを生成する。

そこに都会と田舎のコミュニケーションの差があるような気がします。


田舎の家は大きい。
一軒で母屋と離れがあったり、さらに納屋があったり。
同じ家族でも本家と分家があったり。
広くて家屋が分散していたりするから、入り口がどこか分からなかったり。

さらには峡谷の合間という土地柄、急峻な斜面に家が建っていたり。
市から貸与された普通の軽自動車では狭くて険しい山道を上がっていけないところに家があったり。
4WDの軽トラに変えてほしいところ。

しかしそういう変化に富む地形にさまざまな工夫を凝らして建っている家々を眺めるのは楽しい。
同じ集落でもいろんな家があって、いろんな人が住んで、いろんなライフスタイルを持っています。


都会では戸数が多すぎてそのスケールが人間がとれるコミュニケーション能力の限界を超えるため、
「地域」でコミュニティを作る、というよりは「機能」でコミュニティを構成する。
それは必要に応じてコミュニティを生成する、という効率を重視したものになるため、
隣人は他人、という考え方が当たり前になる。

戸数でいえば都会とは比べものにならないほど少なくても、
田舎は必要最低限で人間が把握できる規模のスケールでコミュニティを作るから、
さまざまな個性をコミュニティ内で意識できる。

都会では盛んにコミュニケーション、コミュニケーションと騒いでいるけれど、
そのメガスケールの中で本当にコミュニケーションが機能しているのだろうか。
効率を重視するコミュニティで本当にコミュニケーション能力が磨かれるのだろうか。


都会のコミュニティは一時的であるのに対し、田舎のコミュニティは持続的である。
よくいう「田舎のしがらみ」を煩わしく思う都会人もいるけれど、
裏を返せばそれは「田舎の温かみ」でもあります。

その「田舎の温かみ」を魅力として分かりやすい形で引き出すのが、
町おこしへのヒントになるのではないでしょうか。

ま、「言うは易し、行なうは難し」なんでしょうが。