遊子川は基本的に川を挟んだ峡谷の集落です。
その峡谷にもうすぐ端午の節句で鯉のぼりをかける、ということで
その設置のお手伝いに行ってきました。
昨年よりはじめた行事だそうです。
峡谷の両端で固定して張られた1本のワイヤー上に35匹の鯉を吊るす、
仕掛けとしては単純なものですが、
およそ100mはあろうかという距離に巨大な鯉を35匹も上げるということは、
それはもう大変な作業なわけです。
何事もスケールが大きくなると、それに費やされるエネルギーは莫大なものになるわけで、
この日も地区の男衆が10人ほど集まっての一大行事。
3時間ほどかけて上った35匹の鯉が風になびく様はそりゃもう壮観。
この日は天気も良くて、風も適度に吹いていて、まさに鯉のぼり日和。
ああ、絶景かな、絶景かな。
[春なのに真っ赤な紅葉]
自分は初めての参加なので、要領を把握してない部分もありますが、
作業手順としては概ね下記のようになります。
1.鯉の準備
昨年使ったものををそのまま使用しますが、去年は1ヶ月の間上げていて、
厳しい風雨下にさらされた鯉はぼろぼろになってしまうものもあります。
その中からまだ使えそうなものを選別して、ビニールロープを取り付けます。
2.ワイヤー張り
基本的にワイヤーはすべての鯉の自重を支えるためのメインロープと、
鯉を固定して所定位置へ流していくサブワイヤーの2本構成です。
メインワイヤーは頑丈な金属ワイヤー、サブワイヤーはナイロンロープです。
両ワイヤーの片端を大木に固定し、もう一方の片端を引っ張ってワイヤーを張ります。
長い距離を重たいロープを張るのは両端の作業者の呼吸合わせが大変です。
3.鯉のぼり取り付け
サブロープにリングを固定し、そのリングに鯉を取り付け、順次流していきます。
ロープを張る、と一言で言っても、一連の作業の中にはノウハウが詰まってます。
太い拠り線をほどいて細線同士を器用に結び合わせたりするのは、
都会暮らしに慣れきっている人間にはまず無理、というか初めて目にした。
都会では「生きていく」ための基本的な技術を失っているのだなとあらためて感じました。
必ずしも、都会が最先端で田舎が立ち遅れている、というわけではない。
都会には都会の、田舎には田舎の技術がある。
都会の技術は、だいたい電気ありきで電気というインフラが壊れると、
途端に成立しなくなる。
それに対して田舎の技術は原始的なものではあるけれど、
人間の根幹に根ざすものである。
それは時代云々ではなく、いつの時代にも必要な本質的なものではないだろうか。
鯉のぼり一つとっても、学ぶことは大いにある。
田舎は大きな野外学校だ。
コメント