馬路村視察−1【エコアス馬路村】

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視察その2その3


地域木材有効活用事業」の取り組みの一環で、高知県馬路村を訪れました。

最初は大分県由布院を訪れる予定だったのですが、
諸事情により年度が終わる3月中に行くことができなくなって、
他の候補地を探していたところ、馬路村を紹介してもらいました。
名前はなんとなく聞いたことはあるけれど、どんなところなのか、
木工でどのように地域づくりをしているのか、予備知識がほとんどありませんでした。
東京のTDWでmonaccaをちょっと見たことがある程度。

本事業は個人ではなく、地域活性化組織「遊子川もりあげ隊」を中心に、
地域ぐるみで取り組むのが基本なので、僕を含めたもりあげ隊のメンバー4人で行ってきました。
僕と、公民館主事さんの行政スタッフと、民間の林業及び農業で働く人が一人ずつ。
この民間からの参加が大きな成果といえます。

地域ぐるみでの取り組みとはいっても、まだまだ行政主導の部分が大きい。
最初のとっかかりはそれでよくても、将来的には地域主導になるのが、
地域づくりの本来の姿であり、地域が成長する、ということだと思う。


今回の主な視察先は、「エコアス馬路村」「馬路村役場」「馬路村農協」の3つ。
まずはメインの目的である「木工による地域づくり」を学ぶべく、エコアス馬路村へ。

地域の95%は森林で、かつては林業で栄え、林業で発展してきた。
そして安い外材の投入で林業は衰退し、それに替わる産業が求められた。
そこでゆずの加工に着目した。
主要国道から地域までは川に沿って細い曲がりくねった県道を登ってゆき、
地域は馬路と魚梁瀬の二地区で構成され、中央の安田川を幹にした渓谷地形。


...ここは実に遊子川によく似ている。

だからこそ、参考になる。
だからこそ、希望が持てる。


エコアス馬路村入り口。

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地域のいたる所で魚梁瀬杉が使われており、
「木工の村」のイメージが定着している馬路村ですが、
ゆずの加工に比べると、木工はまだまだ後発なのだそうです。

まあ、それは翌日訪れた馬路村農協と比較すれば一目瞭然。
それでも平成12年にエコアス馬路村が誕生して12年。
地域のいたる所に木がある風景は、地道な活動が結実している何よりの証拠なのでしょう。

ただ加工するだけでなく、伐採から加工、販売までを一貫して行なう。
木を素通りさせるのではなく、地域内で木を「魅力あるカタチ」にすることで、
木の魅力が地域内に伝わるから、地域ぐるみでバックアップする体制ができあがる。
ここに、僕が目指そうとする「木の文化」が見える。


事務所でひと通りの概要説明を聞いた後、工場見学。

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エコアスの特徴は「木のスキン化」。
木材を薄くスライスして皮状にすることで加工の自由度を上げ、
様々な形状表現を可能にしている。
面をベースにした自由曲面の表現。

一方、僕がやりたいのは線をベースにした曲面表現。
線ベースによるネジレの表現。

いずれにせよ、モノづくりにおいては、なにかしら強い「芯」を持っていることが大事。
木の材質感を出すだけでは、木の良さは伝えきれない。

木を薄くスライスする技術自体はそれほど珍しいものではなく、
機械さえあれば実現可能な汎用的な技術だとか。
木をスキン化する、というその発想が大切。

また、関係者の間では有名な魚梁瀬杉ブランドも、
一般的には現状ではそれほどアピールになるものではないそうです。
魚梁瀬杉の良さを伝えるためには、プラスアルファの魅力を加える必要がある。
そのプラスアルファは、従来は技術だった。

しかし現在は。
技術優位の時代からデザイン優位の時代へ。


主力ラインナップ「monacca」シリーズの最新作。

「ishikoro」
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「maruta」
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「postman」
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最初はトレイとして開発されたものを、バッグへ応用する柔軟な発想。
木質の持つ親近感、癒しといった魅力に「カタチ」の魅力が加わることで、
木の魅力がより引き立つ。
モノづくりとは、材質の良さをより引き立たせることにあると思うのです。
材質を無視したモノづくりに魅力はない。
ハードを無視したソフトに魅力はない。


材料となる魚梁瀬杉の大部分は、奥の魚梁瀬地区にあるわけですが、
工場のそばには御神木の双子杉が立ってます。

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デカイ。
大豊町の日本一の大杉ほどではないにせよ。
魚梁瀬地区にはこの杉よりさらに大きい杉が林立しており、
その様にはひたすら圧倒されるのだとか。
魚梁瀬地区にも行ってみたかったのですが、今回は時間がなく、断念。


魚梁瀬杉はただ大きいだけでなく、独特の葉の形状をしているそうです。

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あまりチクチクしておらず、こんもりしているのが特徴だとか。
素人の自分にはなかなか区別ができないのですが。


大杉のそばのゆず畑。

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有機栽培で、できるだけ自然に近い環境で育てるのだとか。
加工メインのため、実の形状を整えることには執心せず、
大自然のなかで荒々しく育てることで、かえって香りが引き立つのだとか。
現在の過保護栽培では出てこない魅力がここにある。


エコアスは高知市内にショールーム、アンテナショップがあります。
帰り道に立ち寄ってみました。

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木の良さを知ってもらうためのアピール戦略。

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丸太引きを100円でできるコーナーとか、
田舎では当たり前の作業が都会ではサービスになる。
この辺のアイデアも参考になるなあ。

2階構造で、1階はお店とカフェ。

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2階は建材のショールーム。

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家を建てるにあたり、柱や梁を購入する際、
1立法メートルあたりいくら、というより1本いくら、というほうが分かりやすい。
ただ徒に魚梁瀬杉の良さをゴリ押しするのではなく、
木の良さを伝えるためのアピール戦略を徹底して考える。
そこに成功の秘訣がある気がします。


続いて馬路村温泉&馬路村役場編へ。