あなたになら言える秘密のこと

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観たのは去年でした。
でも今の今までレビューが書けなかった。

時間がなかったわけじゃない。
すごく心に響いたとか、逆に死ぬほどつまらなかったとか、
そういうんでもない。

でもなぜかHDDから削除できずにいた。

たぶん心のどこかになにかが引っかかっていたんだと思う。

...だからレビューしてみたいと思います。

過酷な戦争を体験してきたヒロイン、ハンナが今をひっそりと生きる。

過去の傷を遠ざけるがごとく、
工場での作業を、毎日同じことをただひたすら繰り返し、
機械のごとく、真面目に働いていた。
しかしその顔に人間らしい感情はない。

ハンナのその生真面目さが雇い主にはなぜか不都合だったらしく、
ある日ハンナは長期休暇を無理矢理与えられる。

旅先でひょんなことから海底油田基地で
火災により火傷を負ったジョセフの看護をすることになる。

ジョセフを中心に基地の住人たちとの交流を通してハンナは人間らしさを取り戻していく。


...ストーリーとしてはこんな感じです。


戦争を経験したことはないけれど、
人間誰しも長く生きてれば、辛い傷の一つや二つはある。

そういう傷から立ち直るにはただ忘れるしかない。
元々人間には自己防衛本能から辛い記憶は消去する機能があるけれど、
一方で同じ過ちを繰り返さないように学習しようとする機能もある。

消すべき忌まわしい傷ではあるけれど、
学習するために完全に消しきるわけにもいかない。

その本能の葛藤が「傷跡」という形で残っていくのだろう。
傷跡そのものは身体に悪影響は与えはしなくなるけれど、
学習するためのメッセージとして残る。

傷跡が外側から見えやすい形で残るなら、まだあきらめもつく。

しかし心の奥に残る傷跡は、見えないからいっそ遠くへやってしまおう、
そんな力が強く働いて、本来持つべき豊かな感情までも
一緒に記憶の彼方へと押しやろうとしてしまう。

物語前半のハンナはまさにそんな状態だった。
...それでは本当の幸せは戻ってこない。


ハンナを再び幸せへと導いたのは、ジョセフの愛だった。

同じ傷を共有していなくても、
乗り越えられそうにないエゴをお互い持っていても、
人間はお互いの世界を感じることができる。

...それが「愛」というものではないだろうか。


エゴを乗り越えて外の世界に出て行くのを決めるのはやはり自分自身だ。
でもその行動への決断を助けてくれるものはエゴの外にある。

エゴの外のものの正体をはっきり分かる人間なんていない。
それでもそれらを信じるしか自らを助ける道はない。

それが愛であり、人としての強さではないだろうか。