100回泣くこと 【中村航】

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恋愛小説に期待ができなくなっていると思う一方で。
恋愛小説に期待を持ちたいという思いもある。

こんな矛盾に包まれながら僕は恋愛小説を読む。
恋愛に絶望しないために。


この本も「カフーを待ちわびて」と同じく表紙に惹かれました。
好きな色であるオレンジがバックであることもさながら、
「100回泣くこと」というタイトルに一番惹かれた。


100回泣くってどういうことだろう?
小さい頃は祖母の厳しい躾によく泣かされたけど、
大人になって僕はどれだけ泣いただろう。
...たぶん100回も泣いていない気がする。


だからこのタイトルに惹かれたのかな。


以下ネタばれ的な部分があるので結末を知りたくない人は読まないでください~

内容は簡単に言ってしまえば「セカチュー」のような病気による悲哀ものです。


主人公が学生の頃拾ってきた犬「ブック」が死の淵をさまよっている。
実家からそんな連絡を受けた主人公は愛犬に会いに帰るべく、
4年間乗ってなかったバイクをオーバーホールした。
オーバーホールしながら彼女にプロポーズした。

ブックはなんとか持ち直し元気になった。
けれどその代わり、というか彼女が不治の病にかかってしまった。
辛い闘病の末、彼女は逝ってしまった。
そして彼女を追うようにブックも逝ってしまった。
残された主人公は...


正直なぜタイトルが「100回泣くこと」なのかが分からなかった。
確かに最愛の彼女が発病して、主人公は泣いた。
最愛の彼女が死んで彼は泣いた。
どうしようもない悲運を嘆いて主人公は泣いた。

主人公の悲しみは分かる。
でもなぜ「100回泣くこと」なのか?
100回泣くことで主人公はなにを感じたのか?
100回泣けば悲しいことから立ち直れる、ということが言いたいのか。
その辺がねえ。
答えは読者自身で見つけてくれ、ということなのか。
実際に100回泣くしか答えは見つからなさそうだ。
100回泣けば見えてくるものがあるのだろう。

...泣きつくした後に見えるものがあるのなら、やはりそれを見てみたいと思う。


面白いなと思ったことが2つ。
主人公と彼女の出会いと、結婚の「練習」。
お互いの友人の紹介で出会った二人。
「好きなタイプは?」「藤井君(主人公)みたいな人。」「じゃあ僕と付き合ってください」「はい」
...おいおい恋愛ってこんな簡単に始まるのか。
でもまあ恋愛ってよくよく考えてみればそんなものか。

結婚の「練習」はとどのつまり同棲のことなんだけど、「練習」って言葉が気に入った。
一度結婚に失敗した身としては、やはり結婚の「練習」は必要だと思うわけで。


一緒にいて泣いて、笑って、怒って、また泣いて。
全ての感情を楽にさらけ出せる相手が理想のパートナー、ってことでしょうか。