グリーン・デスティニー 【レビューその2】

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1年ほど前にレビューしていますが、
今その記事を読み直してみると自らの心情をよく映しだしているとは思うのだけど、
映画自体に関してはまともにレビューしてないな...

...という気がしたので再レビューです。
ちょうどBook1stでアカデミー賞キャンペーンで1,480円で売ってたので
思わず買っちゃいました。

いやー何度観てもいい映画です。

第73回アカデミー賞4部門(外国語映画賞、撮影賞、作曲賞、美術賞)受賞。
アクション監督にマトリクスのユエン・ウーピン、チェロ演奏にヨーヨー・マ、
主演リー・ムーバイ役に男たちの挽歌のチョウ・ユンファ、
ユー・シューリン役に007ボンド・ガールのミシェル・ヨー、
イェン役にLOVERSのチャン・ツィー。

ミシェル・ヨーって中国人じゃなかったのですね。
いや中国人かもしれないけど生まれはマレーシアで中国語も基本的には
話せないそうです。いわゆる華僑ってことなのかな。
特典のインタビューにもはきはき明快に答えていて、
オリエンタルというよりは西洋の合理主義を彷彿とさせます。
そんな彼女が作中でオリエンタルな女性像を見事に演じきっている。
見事な演技力です。


物語は碧銘剣(グリーン・ディスティニー)という秘剣に翻弄される男女の物語。
ミシェル・ヨー、チャン・ツィーのアクションが鮮やか。
本格的なカンフースターでないチョウ・ユンファも演技力でカバー。

「英雄」「LOVERS」同様、武術のもつ芸術性を高め、
さらに東洋思想の奥深さを描いたところがスバラシイ。


邦題は剣の名を冠していますが、英名タイトルは
"Crouching Tiger Hidden Dragon"。

一見派手なアクションに目が行きがちですが、
その真髄はその英名タイトルが示すとおり身を潜めた虎に龍が隠れているが如く、
『物事の影に潜む真実に目を向けよ』。
...そういうことではないでしょうか。


真実は常に影に潜んでいる。

無駄のない動きは美しい。
しかし無駄のない動き自体に真実があるのではない。
無駄のない動きを目指すのはなぜなのか。
そのためになにを積み重ね、その結果見えたものはなんなのか。

無駄をそぎ落とすために無駄な動きを延々と繰り返す。
無駄を知ることで削ぎ落とすべきものの姿を知る。

対極の知。
まったく異質のものが同じ身体の中に同時に存在する。
それを人は矛盾と呼ぶ。
対極を知り、矛盾を受け入れる。

それが東洋思想でいう究極の”悟り”であり、
仏陀が到達した涅槃の世界ではないでしょうか。
でも人は誰もそこにたどりつけない。人は神ではないのだから。
それでも人はそこに到達しようともがく。


しかしそれが人の「幸せ」というものなのかもしれません。