ゲド戦記Ⅴ アースシーの風 【ル=グウィン】

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ゲド戦記第五巻
もう一冊「ゲド戦記外伝」というのがありますが、
これはアースシー世界のサイド・ストーリーみたいなものなので
物語としてはこの巻で本当の本当に完結です。

最終巻とあってテーマもこれまでの集大成的な感じです。
読む人読む人によってそれぞれ得られる答えがあると思います。

僕が感じたこの巻のテーマは「人間が選択したもの」です。
印象に残った部分を引用しながら説明したいと思います。

「選ぶんだ。わたしと来て、もうひとつの風に乗り、世界のはるかかなたを飛ぶか。それともこちらに残って、善と悪のくびきにつながれつづけるか。それとももの言わぬけものへと落ちぶれていくか。」

竜の最長老カレシンが他の竜たちに言った言葉です。
さらにこの前にカレシンはこうも言っています。

「その昔、我々は選んだ。我々は自由を選び、人間はくびきを選んだ。我々は火と風を選び、人間は水と大地を選んだ。我々は西を選び、人間は東を選んだ。」...「だが、我々のなかにはつねに人間たちの持つ富への羨望があり、人間のなかにはつねに我々の持つ自由への羨望があった。それゆえ邪なるものはこれまでも我々のなかにたびたび入り込んできた。我々がふたたび、永遠に自由になることを選ばなければ、それはこれからもまた我々のなかに入りこんでくるだろう。...」

竜とはなにか。
ありたいていの答え方をすれば「想像上の架空の動物」。
つまり言い換えれば、現存することのないもの。
それは現存している人間の持っていないものの「象徴」、ということ。

この物語では「昔、竜と人間はひとつだった。」と語り継がれています。
人間は水と大地を、そして欲と富を選び、
竜は火と空を、そして自由と風を選んだ。

だから人間は本来自由を持っていない。空も飛べない。
人は自分の持っていないものにあこがれるもの。
だから人は自由にあこがれ、空にあこがれる。

ないものを探してもいつまでたっても見つからない。
それが分からない限り人は幸せにはなれない。
欲に駆られて本来人間が持つべきものを手に入れても
それで人は幸せにはなれない。
自由と引きかえに、風と引きかえに人間が手に入れたもの。
その大切さを理解して人ははじめて幸せになれると思う。

さあ次は外伝。
この世界のサイド・ストーリー集でよりアースシー・ワールドへの
理解を深めよう。