東京タワー 【リリー・フランキー】

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リリー・フランキー「東京タワー」を読みました。
いまや100万部を越すベストセラーです。
友人知人の多くが「いいよ」「泣けるよ」と薦めました。

確かにいい本だと思う。
時折感情がこみ上げる場面がいくつもあった。
素直に「いい本」だと思った。

でも。
何かが違う。
心のどこかで「違う」と叫ぶ声がする...

この本の評価云々を言いたいんじゃない。
問題は本のほうじゃなく、僕自身のほうにある。
この本は僕自身が「家族」に対して思っている以上に
頑な壁をもっていることを、再自覚させられました。

「家族」に対して考えたい人には必読の一冊です。

この物語は家族の物語。
著者であるリリー・フランキー自身の家族の物語。
メディアでは普段毒舌吐いたりエロトークばかりしている彼が
こんな素晴らしい家族愛について書けるのか...
そのギャップが受けたのだと思う。実際僕もそう思った。

誰しもこの本を読めば自分の家族のことを考えるはずだ。
そして「ああ、もっと家族を大事にしなければ」と思うはずだ。

僕にも大事にしたい「家族」がいる。
けど僕にとってその「家族」はフェイクだ。
かわいそうな子供にお情けで与えられた「家族」だ。

人の優しさにランク付けなどしてはいけないのに。
人の優しさに種類などないのに。
親が子供にかける愛情と、里親が養子にかける愛情に
違いなどないと分かっているのに。

この本を読んでリリーさんを心の底からうらやましいと思った。
自分の名前の由来を知っているリリーさんがうらやましい。
自分のへその緒を持っているリリーさんがうらやましい。

「生みの親より育ての親というけんねえ。」

僕はまさにそれを地でいく家庭でした。
育ての親は僕を、妹を我が子同様に育ててくれた。
一方で僕を捨てた人がいる。
それが実の父と母である、ということを知ったとき、
その人間は「家族」に対してどんな希望が持てるというのだろう。

「我が子の幸せを願わない親なんていないって?
 いるさ、ここに」

「平気で子供を捨てる人間の子供がいっちょ前に
 家庭なんか築けるもんか、結婚が失敗するのも無理はないさ」

心の中の悪魔がささやく。
心の中の「歪み」が僕を悩ませる。

人を信じたいのに。
新しい家族を築きたいのに。