叔父夫婦への手紙

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【多摩川からの初日の出】


叔父夫婦から年賀状が届いた。


  「連絡がないのが元気な証拠と思っていますが...;;」


...心が痛んだ。


祖母への手紙は投函したのだけど、
隣に住んでいる叔父夫婦とは疎遠なのだろうか。
祖父の看病に忙しいのだろうか。

こういうときでもなければなかなか連絡しづらいので、
やはり叔父夫婦に手紙を書こうと思います。


叔父夫婦は僕の理想の家族だ。

叔父夫婦は高校の時からのつきあいで、
僕との出会いは二人が大学生になってからだったと思う。

家の中では祖母や叔母が僕と妹の面倒をよくみてくれていたが、
叔父夫婦は二人のデート時などによく僕を外へ連れ出してくれた。
不思議なことに妹と一緒ではなく、なぜか僕だけ。
僕がとくに叔父夫婦になついていたからだろうか。


一番記憶に残っているのはスキー。
叔父が運転する車に乗って雪山にでかけ、
スキーを教わったり、僕を背中におんぶして滑ってくれたりした。


この歳で大学に入って、いまどきの大学生の姿を見ていると、
叔父夫婦が驚くほど面倒見のよい、しっかりした若者だったことが分かる。

二人きりでいちゃつきたい時期にもかかわらず、
僕を邪魔扱いせず、面倒をみてくれた。
子供ながらすごく立派な大人に見えた。

二人が結婚してからも新居によく遊びに行った。

父、父の再婚相手、妹、僕、と僕の家族が軒並み結婚に失敗しているのに対し、
叔父夫婦は両親のそばに寄り添い、3人の子供を立派に育て上げた。


叔父夫婦は理想の家族であり、祖母同様僕に家族を与えてくれた人だった。
だから祖母に次いで恩義を感じている。

そんな恩人にいまだに恩返しができないのが情けない。


前置きが長くなったけど。


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拝啓


新年明けましておめでとうございます。
年賀状ありがとうございました。
長らく連絡もせず、申し訳ありません。。
近況報告がしたく、年賀状ではなく手紙とさせていただきます。

お元気ですか?
亮太と貴宏も社会に出て活躍する頃でしょうか。

折からの不景気でなにかと大変ではありますが、
なんとか元気に学生生活を送っております。
大学では空間デザインを中心に勉強していますが、
若い感性と一緒に肩を並べて学ぶことは多いに刺激になりますし、
また、この歳ならでは気づきも多く、予想以上の成果を得ています。

4月には大学4年生になり、学生生活最後の1年となります。
学業成果の集大成として、卒業制作に取り組むと同時に
卒業後の進路として、就職活動をする予定です。

大学での勉学の結果、建築に興味を持ち、
今後は建築関係の仕事をしていこうと考えています。
ただ、建築は学ぶべきことが多く、今の大学だけでは学びきれません。
働きながら、もしくはさらに専門学校で学ぶか、思案中であります。
どちらにしろ、生活が再び安定するまでにはまだ時間がかかりそうです。

幼い頃から父のような身勝手な人間にはなるまい、と思っていました。
しかし気がつけば恩義ある人たちへ恩返しの一つもできない、情けない自分がいる。
...大変申し訳なく思います。

ただ、祖母やお二人から教わったことを忘れず、
道を踏み外すようなことだけはしない所存でいますので、何卒心配なさらぬよう。

ちゃんとご報告できるときが来ましたら、必ず帰ります。
良い報告ができるように頑張ります。

それではお身体に気をつけて、今年一年、元気にお過ごしください。


敬具

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祖母が僕に与えてくれた「家族」はまさに僕の理想だった。

ただ、その立派さが僕に引け目を感じさせた。
自分との違いを見る度に早くここから出なきゃ、と思った。
そして自分のふがいなさを思う度に、実家から足が遠のいた。

今の自分にできることは自立すること。

そうすることで再び故郷に帰れるのだと思う。
帰りたいと思う。


どんなに遠回りをしても、行きつくところはすべてがはじまった場所なのだから。


...最後に、この記事のURLを記そうか記すまいか、今迷っている。


...とりあえず、妹にも手紙を書いておこう。


...こんなに家族に手紙を書くのははじめてだ。