等々力の森自然美術館【最終プレゼン】

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課題の最終プレゼンが無事終わりました。

2年生の見学、授業風景の取材、といつになく見学者が多い、ということもあって
いつもは遅刻してくる学生が多いのに、今回はほぼ定刻に8割方そろう。


正直この歳になってもプレゼンは苦手。
高専にいた頃はほとんどプレゼンなんてしたことなかった。
社会に出て、それなりにプレゼンをする機会はあったけど、
課題の最後に毎回プレゼンをする、という美大のスタイルに触れることで、
ようやくプレゼンの本質が見えてきたような気がする。


短い時間の中で自分の伝えたいことを的確に伝える。
手が技術に追いつかず、想いが言葉に追いつかない。
毎回それを痛感します。


スピーディーにプレゼンして、スピーディーに相手に想いを届かせる。
それが効率化社会における現代のプレゼンの本質なのだと思います。

しかし。
どんなに文明が進めど、本質そのものはゆっくり浸透する。

それを信じて自分の想いをじっくり整理する。
それがこのブログなのです。


以下プレゼン内容覚え書き。

まずはコンセプト。
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東京23区内唯一の渓谷。
そこには自然が溢れ、今でも十分な魅力に触れています。

しかし画像のように渓谷で水遊びをする子供たちの姿はない。
現代都市における過保護な親の姿勢もあるのかもしれないけど、
なにをおいても渓谷を流れる谷沢川の水がそれほどキレイじゃない。

「23区内だからこんなもの」
今回の提案はこの意識の脱却を目指します。


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渓谷内に展望台を内包した美術館を設置します。
展望台は等々力渓谷の存在感を強めるシンボルになると同時に、
展望台から緑の大河を客観的に俯瞰することによって、
自然美を再認識する。

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一方展望台の根元にある美術館では、
自然から得られた素晴らしいインスピレーションによる絵画作品を展示することで、
自然美を内から再認識する。

展望台では葉から日光を吸収するように自然美を外から吸収し、
美術館では根から水分を吸収するように自然美を内から吸収する。
このように自然のシンボルである大樹をモチーフにします。


ファーストスケッチ。
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すべてはここからはじまった。
最初はゴルフ橋のように渓谷南部を横断する高架橋も提案していたのですが、
要素が多すぎると焦点がぶれてくるので、
今回は美術館と塔(展望台)の関係に的を絞りました。


美術館外観のスタディ。
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樹をモチーフにして、構造として「ねじれ」を取り入れようと試みる。
直線をねじることで生まれる曲線の面白さ、
ねじれの持つ本質的な構造の強さを表現しようとしたのですが、
どうしても硬質的なものとなってしまい、
今回は自然の柔らかさを表現すべく非線形な曲線を用いることにしました。


...というわけで具体的なプラン。

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[屋根伏図]

大樹の麓に広がる根のように。
あるいは枝にとりつく葉のように。

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[平面図]

曲線を多用してオーガニックを表現。

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[長軸方向断面図]

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[短軸方向断面図]


模型。

底部の美術館。
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上部の展望台。
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現地に持っていってイメージを合わせこもうとしたのですが、
やはりスケールが上手く合わない。
スケール感の不整合についてはエスキース当初から指摘されていたことだけど、
なかなかスケール感を掴むのが難しかった。

周囲すぐそばには本物の大樹が林立しており、
美術館全体を俯瞰することはできないので、
外観全体のバランスはそれほど重要視していません。

底部では根となる美術館を、
上部は環八からの展望台の見栄えを、
という具合に上部と底部で分けて考えました。


地階のギャラリー。
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楕円形の部屋の中央にバックヤードを置き、
それを周回するような導線。

内部は村野藤吾のようにラウンドを多用することで
やはりオーガニック感を表現しようとしました。

最初はShadeで全部やろうかと思ったのだけど、
まだなんか上手く使いこなせなくて、
結局Fireworksで仕上げました。


先生からの講評は、

  1.ストーリーが足りない
    渓谷に来て、美術館に向かい、中に入り、ギャラリー、展望台へ
    向かう経路の中で訪れる人がどのような経験をするのか、
    という説明が不足していた。

  2.スケール感に欠ける。

  3.100年後の未来なら良かったのに。

  4.まだ自分のやりたいことが整理しきれてないのでは?
    今回の作品は本当にやりたかったことなのか?

...といったところ。

1.はまあ自分の苦手とする部分ではある。
映像分野を苦手としている自分の根源的な部分。
確かにこの点は今後もっと注意する必要があるのかもしれない。

2.はまあ学生としては仕方のない部分ではある。
スケール感なんてアカデミックの場で磨かれるものじゃないし。
今後現場で経験を積むことで磨いていくものなので、
それほど心配はしてません。

3.についてもまあ、それほど気にしてないかな。
学生でしかできないこと、をやりたいという気持ちが強いし。

なにも今すぐこういう仕事ができるなんて思っていないし、
奇をてらいたいわけでもない。
ただ、自分の根源的な本質を見極めてみたい、という衝動に従っているだけ。
それを社会に認めてもらいたい、という欲求はもちろんあるけれど、
まずは自分で納得できる「形」にまとめていきたい。

自分で理解していないうちに他人に認められてしまうと、
他人に引っ張られていってしまい、やがては自分を見失ってしまう気がするから。

4.もまあ3.と関連して当然といえば当然の指摘なのかな。
むしろ健全な模索の 姿勢なのだと思う。


プレゼン後、久々に打ち上げに行ったのですが、
疲れと反省からか、イマイチ盛り上がらず。
まあ、こういうときもある。


次のセッションはこのセッションを展開していくような形。
自分としてはやはり当初の構想のように橋を架けてみたいかな。
あるいは今回は外部を重点的にやったので、次は内部を詰めるか。


まあとにかく無事山場を越えました。
次も頑張ろう。