ジャン・ヌーヴェル 奇跡の美学【DVD】

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[フランス・パリ、アラブ世界研究所]


大学の研究室で借りた、デルファイの建築家DVDシリーズ。

今回はジャン・ヌーヴェル。
実はまだ彼の建築をよく知りません。

安藤忠雄やフランク・ゲーリーなどと共に手がけるアブダビの文化施設群や、
バルセロナのトーレ・アグバール、パリのアラブ世界研究所くらい。
それらはどれもモニュメンタルなので気になってました。

そこで彼の建築哲学を知りたくてこのDVDを借りたわけですが...


機能を形にする、というアプローチは
最近の一般的なデザインの志向だと思うのですが、彼は違う。
機能を隠し、映画制作のように建築に物語を持たせ、そこに感動を呼び込む。



[トーレ・アグバール]


[建設中のアブダビの文化施設]

アブダビの文化施設やトーレ・アグバールは新しすぎて、
このDVDにはまだ収録されていませんでした。


ジャンはよく映画的比喩を使います。建物にシークエンスを与え映画の中にいるように様々な感情を湧き起こそうとしている。このような薄板を好みます。ドアはなく、ガラスを通り抜け魔法のように外から中へドアを思わせる物を極力避け機能を忘れさせ感動を作り出すのです。(建築家ブリジット・メトラのコメント)


新たに知った建築物として気に入ったのはDVD冒頭に出てくるルツェルン文化会議センター。


[ルツェルン文化会議センター]

45mの支えなしの片持ち梁屋根が映し出す空に飛び出す鋭角な三角形が独創的。


そしてなんといっても一番好きなのはパリのアラブ世界研究所。


[パリ・アラブ世界研究所]

四角い立方体という平凡な造形をここまで独創的にできる手腕がすばらしい。
建築物に対する感動は造形だけで与えられるものではない、ということを教えてくれます。
ストーリーが重要なんだと。


ガラスを多用するのが彼の特徴ですが、その心はなんなのか。
その答えが以下の台詞にある気がします。

光の問題は建築を見る為の基礎です。いつもフルに使われているわけではありませんが視覚を通して建築を認識する。もちろん触覚を使うこともできるけれどその場合、良さを理解し味わうのは困難です。第一印象は映像から、私たちが目にする全ては光によって変化します。...(中略)...ガラスは光によって見た目を一変できるただ一つの素材だと考えられています。内から、外から、あるいは背面光で照らすことで対象物ははっきりしたりぼやけたり違った感覚を残すのです。私が光に興味を抱くのは光は人生の象徴だからです。それはつかの間をそして変化を意味する。建築の厄介な現実はそのほとんどが変化しない事です。建物はそこに居残り主張を残したがもうそれ以上はないといった印象を与えるでしょうね。瞬間と持続の問題をどう調和させようか?つかの間の時間の感覚を建物がどのように持つことができるのか?この挑戦が私を惹きつけるのです。


触覚は原始的な感覚だけど、
表現という面においては確かに視覚よりは難しいものなのかも。

でもそこにある、という存在の自覚がより感動を増すものになると僕は思うし、
そこが三次元の魅力なのだと思う。


光は触覚への導線なのかもしれませんね。

うーん勉強になるなあ。