失敗作を集めたレシピノート

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ニュージーランド地震を遙か遠い彼方の出来事として傍観していたら。

やってきたよ、日本にも。
それも三発。
しかも国内観測史上最大級。

こんなにも大きく、こんなにも長い揺れを体験するのははじめて。

日本のほぼ全域の海岸線に津波警報。
交通網は麻痺し、ライフラインも一部一時断絶。


しかし悪運強し。

地震発生時は自宅にいて、僕が住む地域はほとんど被害なし。
ライフラインもほとんど影響を受けず。

偶然の幸運を見つけ出すのがセレンディピティなら、
これも一種のセレンディピティなのだろう。


どんなときも、希望を失わずにいよう。
苦しいときこそ、抗い難い苦難に出会ったときこそ、
小さな「花」を見つけ出す努力をしよう。


それが人間らしく生きる、ってことじゃないだろうか。

震災に遭われた方へ、心よりお見舞い申し上げます。
震災により尊い命を奪われた方へ、心からご冥福をお祈りいたします。


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テレビの画面から、上空から津波が街を襲う映像が何度もリピート放映される。

戦慄すべき映像なのだけど、
実際は巨大なエネルギーによって街が壊されているのだけど、
画面を通して伝えられるイメージは、
波の動きは緩慢で家々もとても小さく映るため、
まるで波が小さな模型やおもちゃをさらっているかのような
スケールに錯覚してしまう。


自分の身が安全だと分かったとたん、
今回の災害を、たいしたことなかったように、
そして他人事であるかのように思いこもうとしている自分がいる。

それは一種の自己防衛、自己逃避の結果とは分かっていても、
そんな自分に気づくとき、どうしようもなく自己嫌悪に襲われる。


どのチャンネルも災害のニュースばかり。
何もできない自分の無力さへのプレッシャーから逃げるように、
災害前に録画されていた番組の再生ボタンを押す...


とあるドラマ。
内容はレストランのシェフとその弟子の厨房内恋愛、という
軽いタッチのラブコメディなのだけど。

シェフは自分のレシピノートを弟子にプレゼントする。
ただし、それは失敗作ばかりが記されたものだった。

成功したレシピでは、そこから離れられなくなり、
成長の余地がなくなる。
人は失敗から学び、成長する。
失敗作を集めたそのレシピノートにはシェフの愛が詰まっていた...


デザイナーとして、また作家としてポートフォリオを作るとき、
当たり前だけど、自分の中で一番成功した作品を載せる。
ポートフォリオは自分をアピールするものだから。

自分をアピールするのと同時に、
自分の中の「核」をしっかり認識する。
その点において、ポートフォリオは大切なものである。


しかしポートフォリオそのものは自分を成長させてくれるものではない。
人は失敗から多くを学ぶのだとしたら、
やはり自分にも「失敗作を集めたレシピノート」が必要なのだ。


災害もちょうどこのようなものなのかもしれない。
人間自身の失敗なのではなく、神様の失敗。

誰の失敗にせよ、失敗から人は多くを学ぶ。


なにもできないなら、せめて学べ。