佐藤卓展「日常のデザイン」【水戸芸術館】

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水戸芸術館で開催中の佐藤卓展「日常のデザイン」へ行ってきました。

来年1月までやってるのでもっと後でもいいかなと思ったのですが、
TOKYO DESIGNER'S WEEK 2006でのモチベーションのまま受験に
臨むのもなんだかなあ、ということで急遽行くことに。


個人のデザイナーの展示としてはかなり大規模なものじゃないでしょうか。
佐藤卓さんはデザパラでちらほらその名前を聞いたことがある程度の見識
だったのですが、あらためてけっこうスゴイ人なんだなあと。

ロッテのガムや使い捨てカメラ「写ルンです」、リカちゃん人形などあらゆる
ジャンルのデザインをされていますが、ざっと見た感じパッケージデザイン
が多いようです。(「グラフィックデザイナー」なんだからそれが当然か...)


展覧会概要では彼のデザインを以下のように表現しています。

彼のデザインは、派手さや奇抜さで人目をひくことではなく、日常生活のなかにあたりまえにあることを大切にしています。自己主張しすぎないにもかかわらず、個性的なデザインである...

イイ。
日常の中に当たり前のようにあるものはふだんあまり意識しないもの。
その中で個性的であるためにはそれなりの工夫が必要だと思う。


会場内はA~Jの10の部屋で構成。

前半でこれまでの作品紹介・解説がメイン、
後半がやや「デザインとは」を問う、概論的なものになっています。

各展示品の解説文がこんなに多い展示会をかつて見たことがない。
それほどこの展示会では各展示に詳細で丁寧な説明がされています。
佐藤さんのデザインに対する思い入れ、気迫が窺えました。
そしてその想いを多くの人に伝えたい、という気持ちも。
真面目な人なんだなあって感じました。

デザインされたものをみて、デザイナーの伝えたい想いを直感的に
多くの人が分かるようにデザインすることはとても重要です。
しかしそれは同時にとても難しいことでもある。

それを言葉で補完することはけしてデザインを手抜きすることじゃない。
悪いデザインを言葉で補完する、ということでもない。

デザインはコミュニケーション、という観点で考えればそれは
よりハイレベルなコミュニケーションの形態なんだと思う。
それはデザインの間口を初心者から上級者まで広げてくれる。
僕みたいなデザイン初心者にはなにより助かります。


だけど全部の解説を丁寧に読んでいては、1日じゃ時間が足らないし、
なにより疲れきってしまうので、興味あるものだけに的を絞ることにしました。


B, C, E, Fの部屋ではデザインの解剖室と銘打って、
チューインガム、使い捨てカメラ、牛乳パック、リカちゃん人形を
解剖(分解)して、各パーツの詳細説明がしてありました。
ここまでくるともはやエンジニアリングの領域にまで入ってきており、
いい形でデザインとエンジニアリングが融合しているのかな、と思えた。
デザインとエンジニアリングの共有こそデザインが次に迎えるべき
形態なんじゃないのかな、と。


Hの「言語博物室」という部屋では佐藤さん自身が惹かれたコレクションが
展示してあって、そのコレクションのどこに惹かれたか、キーワードごとに
15個にグルーピング、いいデザインをしていくための試みがしてあり、
その姿勢に興味深いものがありました。

「キレイ」「気持ち悪い」など相反するものであっても人の興味は
惹くものであり、結局のところ奇抜でさえあれば人の目は惹くものである。
じゃあ奇抜でさえあればいいのか、というとそれは安易なわけで。

伝えたいこと、たとえば商品の機能であったり、性質であったり。
そういうものをいかに分かりやすく誤解のないように伝えるか。
そのための人の興味をどのように喚起すればいいのか。

デザインはただ形を作るだけでなく、
人を知り、情報を知り、目に見えないものを、分かりにくいものを
分かりやすいものに変換する、そういうものじゃないでしょうか。
形はあくまで結果として見えてくるものだと思うのです。


...とまあえらそうに言っても僕自身まだデザインに関してははじまったばかり。
まだまだ暗中模索ではあるけれど多くのヒントを与えてくれた展示会でした。


結局見終えるのに2時間以上かかりました。
かなり端折ったつもりでしたがやはりいつもより目がすごく疲れた~

最後にショップで読みきれなかった解説を補完したくパンフと、
「おみやげプロジェクト」の「チョコ★いも」を購入。
sato_taku_imo.gif.jpg

「チョコ★いも」は茨城名産の干し芋をホワイトチョコでコーティングしたもの。
けっこうおいしいです。
他にも「チョコ納豆」もあったのですが納豆嫌いなのでパスしました。
興味ある方はぜひチャレンジしてみてください...


12/2に佐藤卓さんと脳科学者、茂木健一郎さんの対談があります。
すごく興味深い。
だからもう一度水戸芸術館へは足を運ぶことになるでしょう...